【2024年度版】厚労省発表の年金額を実際に算出してみました

南アルプス百閒平より赤石岳 年金額年度改定
南アルプス百閒平より赤石岳

令和6年1月19日に令和6年度の年金額が厚労省より公表されました。

65歳から支給される年金を新規裁定年金、68歳になる年度から支給される年金を既裁定年金といいます。

新規裁定年金

  • 2.7%の引き上げ
  • 老齢基礎年金(月額):68,000円
  • 老齢厚生年金(月額):230,483円

既裁定年金

  • 2.7%の引き上げ
  • 老齢基礎年金(月額):67,808円
  • 老齢厚生年金(月額):未発表

この年金額を改定率から実際に算出して確かめてみます。

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基礎年金額を算出します

基礎年金額(満額)は、平成16年に定められた年金額780,900円に「当年度基礎年金改定率」を乗じて算出します。

  • 基礎年金額
    =780,900×当年度基礎年金改定率

「当年度基礎年金改定率」は、「前年度基礎年金改定率」に毎年決定する「年金改定率」を乗じて算出します。

  • 当年度基礎年金改定率
    =前年度基礎年金改定率×年金改定率

令和6年度 基礎年金額

新…新規裁定年金 既…既裁定年金

  • 令和5年度基礎年金改定率
    新:+1.8%(1.018)
    既:+1.5%(1.015)
  • 令和6年度年金改定率
    新:+2.7%(1.027)
    既:+2.7%(1.027)
  • 令和6年度基礎年金改定率
    新      :1.018×1.027=1.045
    既(68歳) :1.018×1.027=1.045
    既(69歳~):1.015×1.027=1.042
    ※今年度68歳になる人は昨年度の改定率を受けて改定されています
  • 令和6年度基礎年金額(年額)
    新     :780,900円×1.045=816,000円
    既(68歳) :780,900円×1.045=816,000円
    既(69歳~):780,900円×1.042=813,700円
    (100円未満四捨五入)
  • 令和6年度基礎年金額(月額)
    新     :816,000÷12=68,000円
    既(68歳) :816,000÷12=68,000円
    既(69歳~):813,700÷12=67,808円
    (1円未満切り捨て)

厚労省から発表された令和6年度基礎年金額が算出されました。

基礎年金額改定の推移(令和3年度~)

年度(前基改)前年度基礎年金改定率
(当年改)当年度年金改定率
(当基改)当年度基礎年金改定率
(年額)基礎年金年額
(月額)基礎年金月額
R03
(2021)
両裁定
(前基改)1.001(当年改)0.999
(当基改)1.001×0.999=1.000
(年額)780,900×1.000=780,900円
(月額)65,075円
R04
(2022)
両裁定
(前基改)1.000(当年改)0.996
(当基改)1.000×0.996=0.996
(年額)780,900×0.996=777,800円
(月額)64,816円
R05
(2023)
新規裁定
(前基改)0.996(当年改)1.022
(当基改)0.996×1.022=1.018
(年額)780,900×1.018=795,000円
(月額)66,250円
R05
(2023)
既裁定
(前基改)0.996(当年改)1.019
(当基改)0.996×1.019=1.015
(年額)780,900×1.015=792,600円
(月額)66,050円
R06
(2024)
新規裁定
(前基改)1.018(当年改)1.027
(当基改)1.018×1.027=1.045
(年額)780,900×1.045=816,000円
(月額)68,000円
R06
(2024)
既裁定
(前基改)1.015(当年改)1.027
(当基改)1.015×1.027=1.042
(年額)780,900×1.042=813,700円
(月額)67,808円

厚生年金230,483円(新規裁定)を算出します

この金額はいわゆる「モデル年金」の金額です。

夫が平均的な収入(賞与を含む月額平均43.9万円)で40年間就業し、その間妻は専業主婦という想定の、夫婦2人分の年金額です。

  • モデル年金
    =夫婦二人分の基礎年金
     +夫の厚生年金報酬比例額

夫の厚生年金報酬比例額の算出式

「モデル年金230,483円」に含まれる夫の厚生年金報酬比例額は、下図(1)本来水準の総報酬制導入後の式(赤枠)で算出されています。

標準報酬額と再評価率

モデル年金の厚生年金報酬比例額を算出する際の標準報酬額と再評価率は、令和元年の財政検証で再計算されリセットされました。

財政検証は5年ごとに実施され、最新の人口や経済の状況を反映した、長期にわたる年金財政収支の見通しを作成しています。

  • 令和元年度発表
    平均標準報酬額:438,860円
    令和元年度再評価率:0.938

夫の報酬比例年金額は、以下の式で算出されています。

  • 報酬比例金額
    =438,860×再評価率×5.481/1000×480

この「再評価率」は年金改定率によって、年度ごとに改定されます。

年金改定率には、新規裁定年金の場合、賃金変動率とマクロ経済スライド調整率が織り込まれています。

  • 当年度再評価率
    =前年度再評価率×年金改定率

厚生年金(月額)230,483円を算出します

  • 令和5年度再評価率:0.956
  • 令和6年度年金改定率:+2.7%(1.027)
  • 令和6年度再評価率
    0.956×1.027=0.982
  • 報酬比例額(年額)
    =438,860×0.982×5.481/1000×480
    =1,133,805円
  • 報酬比例額(月額)
    =1,133,805÷12
    =94,483円
    (1円未満切り捨て)
  • 夫婦二人分の年金額(月額)
     ※基礎年金含む
    =68,000×2+94,483
    =230,483円

厚労省発表の厚生年金額230,483円が算出されました。

報酬比例額の推移

年度(前年再)前年再評価率
(当年改)当年改定率
(当年再)当年再評価率
(年)報酬比例額年額
(月)報酬比例額月額
R03
2021
(前年再)0.940(当年改)0.999
(当年再)0.940×0.999=0.939
(年額)438,860×0.939×5.481/1000×480
 =1,084,158円 
(月) 90,346円
R04
2022
(前年再) 0.939(当年改)0.996
(当年再)0.939×0.996=0.935
(年額)438,860×0.935×5.481/1000×480
 =1,079,540円 
(月額) 89,961円
R05
2023
(前年再) 0.935(当年改)1.022
(当年再)0.935×1.022=0.956
(年額)438,860×0.956×5.481/1000×480
 =1,103,786円 
(月額) 91,982円
R06
2024
(前年再) 0.956(当年改)1.027
(当年再)0.956×1.027=0.982
(年額)438,860×0.982×5.481/1000×480
 =1,133,805円 
(月額) 94,483円

夫婦二人モデル年金額の推移

モデル年金額
基礎年金額×2+夫の厚年報酬比例額

年度モデル年金額
R03(2021)65,075×2+90,346=220,496
R04(2022)64,816×2+89,961=219,593
R05(2023)66,250×2+91,982=224,482
R06(2024)68,000×2+94,483=230,483

まとめ

厚生労働省発表の公表資料には、厚生年金の年金額について以下の注釈があります。

平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)43.9 万円)で 40 年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準です。

しかしながら、この43.9万円がそのまま使われるのではなく、実際には再評価率を乗じた金額になっています。

再評価率とは、本来、過去の標準報酬を現在の賃金水準に読み替えるためのものです。

しかし実際は、賃金変動率に加え、年度によってはマクロ経済スライド調整率が織り込まれるので、結果的に、現在の賃金水準を下回る平均標準報酬額で計算されることになります。

例えば、-0.2%のマクロ経済スライド調整が3年続けば、0.998×0.998×0.998=0.994となり、本来の賃金水準より0.6%低い平均標準報酬額で年金額が計算されることになります。