遺族年金について…万一私が亡くなったら妻の遺族年金はどうなる?

南アルプス北岳肩ノ小屋より甲斐駒遠望 遺族年金

私は、平成27年(2015年)9月から特別支給の老齢厚生年金を受給してきましたが、令和元年(2019年)8月で満65歳になり、9月から老齢基礎年金と老齢厚生年金の支給が始まりました。

遺族年金の仕組みはどうなっているのか、私が65歳に達した時点で万一私が亡くなったら、 妻にどのくらいの遺族年金が出るのか、調べてみました。

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遺族基礎年金

遺族基礎年金は、国民年金加入者が死亡した場合に、その死亡した人によって生計を維持されていた「子のある配偶者」、または「子」に支給される年金です。

「子」とは「18歳到達年度の末日までの間にある子」、または「20歳未満であって障害等級1級または2級に該当する障害の状態にある子」です。

つまり、遺族基礎年金は子供が成長するまでもらえる遺族年金です。子供のいない人、すでに子供が成長している人は遺族基礎年金をもらえません。

また、子がいて支給される場合も、子が成長すれば打ち切られます。

私ども夫婦には二人の娘がいますがすでに成人しています。

私の愛する妻は当然この遺族基礎年金をもらうことはできません。

寡婦年金

「寡婦年金」という遺族年金があります。

国民年金第1号被保険者(自営業者・自由業者・失業者・学生など)だけの独自給付です。

第1号被保険者・任意加入被保険者として保険料を納めた期間と免除期間をあわせて10年以上ある夫が、老齢基礎年金または障害基礎年金のいずれも受給せずに亡くなったとき、その夫により生計を維持されていた子のない妻(婚姻期間が10年以上)に、60歳から65歳になるまで支給されます。

年金額は夫の第1号被保険者としての保険料納付期間(任意加入期間を含む)について計算した老齢基礎年金額の4分の3になります。

私は、第1号と任意加入の期間が合計122ヵ月あり、加入期間の条件は満たしていることになりますが、すでに老齢基礎年金の受給しているので、私が現時点で死亡しても、妻には寡婦年金の受給資格はありません。

遺族厚生年金の短期要件と長期要件

遺族厚生年金は、厚生年金保険の被保険者または被保険者であった人が死亡した場合に、遺族に支給される年金です。

死亡した人の要件には「短期要件」と「長期要件」があります。

短期要件は、在職者、障害厚生年金受給者がなくなった場合を想定しています。

長期要件は、60歳以上の退職者、老齢厚生年金受給者がなくなった場合を想定しています。

私の場合は長期要件に該当することになりますが、短期要件から確認したいと思います。

遺族厚生年金 短期要件

短期要件は、在職者、障害厚生年金受給者がなくなった場合を想定しています。

短期要件の死亡した人の範囲

  1. 厚生年金保険の被保険者が死亡したとき
  2. 厚生年金保険の被保険者期間中に初診日のある傷病がもとで初診の日から5年以内に死亡したとき
  3. 障害等級1級または2級の障害厚生年金の受給権者が死亡したとき

上記1,2の場合は、さらに以下の保険料納付要件を満たす必要があります。

短期要件の保険料納付要件(いずれか)

  • 死亡日の前日において、国民年金の全被保険者期間のうち、保険料納付期間と保険料免除期間を合算した期間が3分の2以上あること
  • 65歳未満の場合には、死亡日の属する月の前々月までの1年間に保険料の滞納がないこと(死亡日が令和8年4月1日までの特例)

たとえ死亡時に在職していて厚生年金に加入していても、国民年金保険料の未納期間が20歳から死亡時までに3分の1超あり、過去1年間に1ヶ月でも国民年金保険料が未納ならば、その人の遺族に遺族厚生年金は支給されないことになります。

この保険料納付要件は、障害基礎年金・障害厚生年金・遺族基礎年金にも適用されます。

短期要件の年金額

年金額は死亡時点までの加入記録から算出した老齢厚生年金報酬比例部分の4分の3になります。

遺族厚生年金(短期要件)
<総報酬制導入前>  
平均標準
報酬月額
× $$\frac{ 7.125 }{1000}$$ × H15年3月以前の
加入月数
<総報酬制導入後>  
平均標準
報酬額 
× $$\frac{ 5.481 }{1000}$$ × H15年4月以降の
加入月数
(導入前+導入後)×\(\large{\frac{3}{4}}\)=年金額

短期要件「3ヵ月みなし」

厚生年金の被保険者期間が300ヵ月未満の場合は、300ヵ月みなし計算がされます。

  • 300ヵ月みなし年金額
    上記年金額×\(\LARGE{\frac{300月}{実際の加入月数}}\)

仮に厚生年金の加入月数が100ヵ月なら、短期要件の場合、100ヵ月の加入記録から計算される年金額の3倍の年金額が支給されることになります。

遺族厚生年金 長期要件

長期要件は60歳以上の退職者や老齢厚生年金受給者が死亡した場合を想定しています。

長期要件 死亡した人の範囲

  1. 老齢厚生年金の受給資格期間が25年以上ある人が死亡したとき
  2. 受給資格期間が25年以上ある老齢厚生年金の受給権者が死亡したとき

ここで言う受給資格期間は、厚生年金加入期間だけではなく、国民年金第1号の保険料納付期間、保険料免除期間なども含んでいます。

1は在職者や65歳未満の人を想定しています。2は65歳以上ですでに老齢厚生年金を受給している人を想定しています。

平成29年9月から老齢基礎年金と老齢厚生年金の受給資格期間は10年に短縮されましたが、遺族基礎年金と遺族厚生年金の長期要件の受給資格期間は25年のまま据え置かれています。

長期要件 年金額

長期要件の場合の年金額の算出方法は、短期要件の計算式とほぼ同じで、老齢厚生年金の報酬比例部分の金額の4分の3です。 ただし、短期要件の「300ヵ月みなし」はありません。

遺族厚生年金(長期要件)
<総報酬制導入前>  
平均標準
報酬月額
× $$\frac{ 9.500~7.125 }{1000}$$ × H15年3月以前の
加入月数
<総報酬制導入後>  
平均標準
報酬額 
× $$\frac{ 7.308~5.481 }{1000}$$ × H15年4月以降の
加入月数
(導入前+導入後)×\(\large{\frac{3}{4}}\)=年金額

◆乗数は生年月日に応じて読み替え
◆昭和21年4月2日以降生まれは、7.125、5.481

長期要件に「300ヵ月みなし」はない

長期要件の場合は、厚生年金の加入年数が300ヵ月に満たない場合も、短期要件の場合のような「300ヶ月みなし」はありません。

亡くなった人の老齢厚生年金を引き継ぐ形で、亡くなった人が受け取るはずの老齢厚生年金の金額の4分の3が支給されることになります。

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中高齢寡婦加算について

夫が死亡した当時子のない40歳以上65歳未満の妻に、老齢基礎年金が支給される65歳まで、遺族厚生年金に加えて「中高齢寡婦加算」が支給されます。

  • 死亡した夫の要件
    • 短期要件に該当するとき
    • 長期要件に該当する場合は厚生年金被保険者期間が20年以上あるとき
  • 妻の要件
    • 夫が死亡したとき子のない40歳以上65歳未満の妻
    • 夫が死亡したとき40歳未満で子があって遺族基礎年金を受給していた妻が、40歳以降に子が成長して遺族基礎年金を失権したたときは、65歳になるまで支給される

中高齢寡婦加算の支給額

中高齢寡婦加算の額は、遺族基礎年金の4分の3に相当する額です。

  • 令和元年の支給額
    • 780,100×3/4=585,100円

万一の場合、私の妻が受け取れる遺族厚生年金は…

2019年10月時点で万一私がなくなった場合、私の妻が受け取れる遺族厚生年金の額を計算します。

  • 私65歳・妻60歳
  • 私の年金加入期間
    • 厚生年金加入月数=334月
    • 国民年金加入月数(含む任意加入)=122月
    • 合計保険料納付月数=456月
  • 私の老齢厚生年金額(令和元年度)
    • 930,523円

私が現時点で亡くなった場合、長期要件に該当し、老齢厚生年金の4分の3に加え、中高齢寡婦加算が支給されます。遺族厚生年金

  • 遺族厚生年金
    • 930,523×3/4
      =697,892円
  • 中高齢寡婦加算
    • 585,100円
  • 合計
    • 1,282,992円

妻が65歳になると中高齢寡婦加算が支給停止になり、妻自身の老齢基礎年金が支給されます。