長生きリスクに備える第一の方法はなんと言っても「年金」です。
老齢年金は通常65歳から支給されます。
- 老齢年金
=老齢基礎年金+老齢厚生年金(報酬比例額)
この記事では60歳から老齢年金を増やす方法を記事にしました。
なんと言っても厚生年金に加入することです
60歳過ぎても会社勤めをして厚生年金に加入し続けることができれば最強です。厚生年金は70歳になるまで加入できます。
報酬比例部分は総報酬額に比例して増えます
報酬比例部分は総報酬額に比例して支給されます。60歳以降も厚生年金に加入して総報酬額を増やせば、その分老齢年金も増えます。
年収額に対して厚生年金報酬比例部分がどのくらい増えるか算出してみます。
- 年収100万円に対して支給される厚生年金報酬比例額を計算
- 厚生年金報酬比例部分(年額)
=平均標準報酬(月)額×再評価率×5.481/1000×加入月額
平均標準報酬(月)額×加入月額12カ月=年収
=年収×再評価率×5.481/1000
各年度の報酬額は、「再評価率」を乗じて一律の賃金水準に換算します。ここでは令和7年度の再評価率0.944で計算します。
- 100万×0.944×5.481/1000=5,141円
年収100万円につき年金が5,174円増える計算になります。これは報酬額の0.517%になります。
報酬年額 | 報酬比例部分 増加分(年額) |
---|---|
100万円 | 5,174円 |
200万円 | 10,348円 |
300万円 | 15,522円 |
400万円 | 20,696円 |
500万円 | 25,870円 |
老齢基礎年金は60歳以降の厚生年金加入では増えません
老齢基礎年金は、年額=満額×保険料納入月数/480で支給されますが、この保険料納入月数は、20歳未満60歳以降の厚生年金加入月数はカウントされません。60歳以降の厚生年金加入では老齢基礎年金は増えません。
経過的加算が老齢基礎年金に代わって増えます
20歳未満60歳以降の厚生年金加入月数の老齢基礎年金に相当する金額は65歳から「経過的加算」で支給されることになります。
ただし、この「経過的加算」は厚生年金の加入月数の合計が480月を越えて加算されることはありません。
厚生年金の加入月数が480月を越えている場合、報酬比例部分は増額されますが、経過的加算には反映されません。
- A=定額単価
×厚年全加入月数(最大480ヵ月)
定額単価=基礎年金満額の約1/480 - B=基礎年金満額
×厚年20~59歳加入月数/480 - 経過的加算=A-B
<参考>2024年度
(1956年4月2日以降生まれの人)
定額単価:1,701円
基礎年金満額:816,000円
816,000×1/480=1,700.0円
例えば、学生時代に国民年金保険料2年分が未納でその後会社員となり厚生年金に加入した場合、60歳以降も厚生年金に2年加入していれば、老齢基礎年金は増えませんが、厚生年金経過的加算で2年分の老齢基礎年金相当額が保障されることになります。

在職老齢年金の支給停止について
厚生年金保険に加入しながら老齢厚生年金を受けるときは、年金月額と賞与込み月収の合計額が支給停止調整額を上回る場合、年金額の全部または一部が支給停止されます。
なお、支給停止の対象となるのは老齢厚生年金報酬比例部分で、老齢基礎年金は対象になりません。
- 基本月額
加給年金額を除いた老齢厚生年金(報酬比例部分)の月額 - 総報酬月額相当額
(その月の標準報酬月額)+(その月以前1年間の標準賞与額の合計)÷12
支給停止調整額(2025年度) 51万円
- 基本月額+総報酬月額相当額≦51万円
支給額=基本月額全額 - 基本月額+総報酬月額相当額>51万円
支給額=基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-51万円)÷2
国民年金の任意加入制度を利用する
老齢基礎年金は、20歳以降60歳未満の期間で、国民年金1号・2号・3号の加入した月を合計して、満額×加入月数/480月で支給されます。学生時代に国民年金保険料を納付していない場合など480月に満たない場合は満額支給されません。
そういう人のために国民年金の任意加入制度があります。
- 60歳以降65歳になるまで加入できる
- 加入月から納付となり、さかのぼっての納付はできない
- 国民年金保険料納付済み月数が480ヵ月になるまで加入できる
- 厚生年金保険、共済組合等の加入者は利用できない
任意加入は何年でモトがとれるか
2025年度の国民年金保険料と老齢基礎年金の金額で計算してみます。
- 国民年金保険料(月額):17,920円
- 老齢基礎年金満額(年額):831,700円
老齢基礎年金は国民年金保険料納付月数480月で満額になります。国民年金保険料を1カ月分納付することで基礎年金がどれだけ増えるか計算します。
- 831,700÷480=1,733円
国民年金保険料を1ヵ月分17,920円納付すると年額1,733円だけ基礎年金が増えます。保険料1ヵ月分を取り返すのに何年かかるか計算します。
- 17,920÷1,733=10.3年
65歳から10年、75歳でモトが取れることになります。
60歳になった時点で国民年金保険料の未納月があり、保険料を納付する余裕がある場合は、ぜひ利用したい制度です。
保険料の割引がある「前納制度」も利用できます。市区町村役所で手続きします。
付加年金保険料も上乗せ納付しましょう
国民年金第1号被保険者ならびに任意加入被保険者は、定額保険料に付加保険料を上乗せして納めることで年金額を増やすことができます。
月々400円を保険料に上乗せ納付することで、年金額は「200円×付加保険料納付月数」だけ増えることになります。
Xヵ月納付すると、保険料(400×X)円の支払いで、年額(200×X)円だけ年金額が増えます。
(400×X)÷(200×X)=2年でモトがとれることになり大変お得です。何ヶ月分納付しても2年でもとが取れます。
使わない手はない制度です。
国民年金免除制度を利用した人は追納もあり?
事情によリ国民年金の免除制度を利用した人は、10年以内であれば、後から追納して老齢基礎年金の受給額を満額に近づけることが可能です。
免除制度を利用した場合、その期間が受給資格期間(120月)へ算入されます。また、老齢基礎年金を算出する保険料納入月数にも一定の割合で算入されます。例えば全額免除の場合は1/2月分の保険料を納付したとしてカウントされます。
全額免除を追納した場合は何年でモトがとれるか
2025年度の国民年金保険料と老齢基礎年金の金額で計算してみます。
- 国民年金保険料(月額):17,920円
- 老齢基礎年金満額(年額):831,700円
全額免除の場合、追納しなくても1/2月分の年金は 支給されるので、1ヶ月分の保険料を追納すると1/2月分の年金が増えることになります。
- 831,700÷480×1/2=866円
17,920円追納して年金額が866円増えることになります。保険料を1ヵ月追納して何年でモトが取れるか計算します。
- 17,920÷866=20.3年
65歳から20年、85歳でモトが取れることになります。
3/4免除、1/2免除、1/4免除を追納した場合も同様になります。
免除された保険料を追納するのは、任意加入制度と比較して正直微妙です。
まとめ
60歳以降で年金を増やす方法
- 60歳以降も厚生年金は最強
- 厚生年金加入で報酬比例部分が増やせる
- 厚生年金加入で老齢基礎年金相当額が増やせる
- 厚生年金加入していない場合は国民年金に任意加入できる
- 国民年金に加入するときは付加年金もつけるべき
- 免除保険料の追納は微妙