厚生年金の経過的加算て一体なあに?差額加算ともいう…

南アルプス悪沢岳夜明け 老齢厚生年金
南アルプス悪沢岳夜明け

これはH26年6月に届いたねんきん定期便です。老齢年金見込額(65歳~)の老齢厚生年金の欄に経過的加算部分として212円と記載されています。

ねんきん定期便

これは平成27年61歳になって特別支給の老齢厚生年金の受給手続きに行ったとき渡された制度共通年金見込額照会回答票です。65歳からの老齢厚生年金の欄に差額加算として264円と記載されています。

制度共通年金見込額照会回答票

この経過的加算差額加算は言葉は違いますが同じものです。

金額の違いは、算出のもとになる金額が年度により変わるためです。

私の場合、非常に少額で受給額にはほとんど影響がないですが、気になったので調べてみました。

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旧年金制度と新年金制度の計算方法の違い

旧年金制度は厚生年金、共済年金、国民年金がそれぞれ独立した制度でしたが、昭和61年4月から新しい年金制度が始まり、国民共通の基礎年金が導入されました。

厚生年金加入者の支給額

  • 旧制度老齢厚生年金支給額(60歳~)
    定額部分(定額単価×加入月数)
    +報酬比例部分
  • 新制度厚生年金被保険者支給額(65歳~)
    老齢基礎年金(満額×加入月数/480)
    +老齢厚生年金(報酬比例部分)

旧制度老齢厚生年金の定額部分が、すべての国民に共通の老齢基礎年金に置き換わり、支給開始年齢が65歳に引き上がりました。

ただし、65歳以前に特別支給の老齢厚生年金という制度を設け、旧制度の計算方法で、支給開始年齢を段階的に引き上げています。

平成30年現在、男性の場合、特別支給の老齢厚生年金で定額部分の支給は終了し、報酬比例部分の支給開始年齢を引き上げています。

昭和36年4月2日以降に生まれた男性は、報酬比例部分の支給もなくなります。特別支給の制度が終了し、年金の支給開始が65歳からになります。

特別支給の老齢厚生年金とは?支給開始年齢は?(2023年6月改定)
この記事は2019年4月に公開しましたが、2023年6月に改定しました。 老齢厚生年金は、本来は、老齢基礎年金に上乗せする形で65歳から支給されます。 「特別支給の老齢厚生年金」は...

昭和29年8月生まれの私の場合、定額部分の支給はなく、報酬比例部分が61歳から支給されました。

61歳になり特別支給の老齢厚生年金の請求手続きをしました
昭和60年の法律改正により、 厚生年金保険の支給開始年齢が60才から65才に引き上げられました。支給開始年齢を段階的に、スムーズに引き上げるために設けられたのが「特別支給の老齢厚生...

加入月数のカウント方法に違いがあります

旧制度老齢厚生年金定額部分の加入月数と新制度老齢基礎年金の加入月数には、カウント方法に違いがあります。

旧制度老齢厚生年金
20歳未満60歳以降も含め、厚生年金加入全期間の月数がカウントされる

新制度老齢基礎年金
20歳以上60歳未満の国民年金1号2号3号の加入月数が合計されてカウントされ、20歳未満60歳以降の厚生年金加入月数はカウントされない

特別支給の老齢厚生年金の定額部分を支給されていた人が、65歳になり老齢基礎年金を支給されるようになると、20歳未満60歳以上の厚生年金加入月数の部分がカバーされません。

また、特別支給の制度がなくなっても、65歳から支給される老齢基礎年金に20歳未満60歳以降の厚生年金加入月数が年金額に反映されなくなってしまいます。

そこで、経過的加算(差額加算)を老齢厚生年金に上乗せしています。

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経過的加算の計算方法

経過的加算(差額加算)は以下の式で計算します。

  • A
    =老齢厚生年金定額単価
    ×厚生年金全期間加入月数
  • B
    =老齢基礎年金満額
    ×20歳以上60歳未満の厚生年金加入月数/480
  • 経過的加算
    =A-B

計算例

以下の条件で経過的加算を計算します

  • 厚生年金(20歳未満60歳以降)=10月
  • 厚生年金(20歳以上60歳未満)=400月
  • 厚生年金定額単価(H30年)=1,625円
  • 基礎年金満額(H30年)=779,300円
  • A=1,625×410=666,250円
  • B=779,300×400/480=649,417円
  • 経過的加算
    =666,250-649,417
    =16,833円

新制度老齢基礎年金でカバーされない厚生年金10ヶ月加入分が、65歳から経過的加算部分として支給されることになります。

ちなみに老齢基礎年金の10ヶ月分は以下の金額になります。

  • 779,300×10/480=16,235円

ただし、厚生年金の加入月数が480月を越えた場合、Aの部分を計算するときの厚生年金加入月数は480月として計算され、480月を越えた部分は算入されません。報酬比例部分には反映されますが…。

私の場合の経過的加算があるのはなぜ?

私は20歳未満、60歳以降に厚生年金の加入月数がありません。ただ経過的加算の計算はその場合でも適用されます。

制度共通年金見込額紹介回答票

この平成27年9月の制度共通年金見込額照会回答票の経過的加算(差額加算)を確かめてみます。

  • 厚生年金定額単価(H27年度)=1,626円
  • 基礎年金満額(H27年度)=780,100円
  • 厚生年金加入月=334月
  • 差額加算
    =1,626×334-780,100×334/480
    =264円

提示どおりの金額が出ました。

老齢厚生年金定額単価1,626円が老齢基礎年金の1ヶ月分の金額がよりわずかに多いために差額が生じ、それが差額加算になります。

  • 定額単価1,626円
  • 老齢基礎年金1ヶ月分
    780,100×1/480
    =1625.2円

まとめ

  • 65歳支給開始の老齢基礎年金は20歳未満60歳以上の厚生年金加入月数をカバーしない。
  • 20歳未満60歳以上の厚生年金加入期間がある場合、加入月数の基礎年金額に相当する金額が、経過的加算(差額加算)として、65歳以降の厚生年金に上乗せされて支給される。
  • ただし、厚生年金加入期間が480月以上ある場合は、480月として経過的加算が計算される。
  • 20歳未満60歳位以上の厚生年金加入期間がない場合も、少額の経過的加算がある。