主な年金制度改正の歩み

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1986年(昭和61年)4月に新法の国民年金が施行され、1階を基礎年金、2階を被用者年金とする2階建ての年金制度がスタートしました。

それから現在に至るまで社会情勢の変化に伴い様々な制度改正が行われてきました。

1985年(昭和60年)以降の主な年金制度の改正についてまとめました。

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1985年(昭和60年)

基礎年金制度の導入

全国民共通の「基礎年金」を創設しこれを1階部分とし、厚生年金は報酬比例の年金を支給する2階部分とした。また、基礎年金の3分の1は国庫負担とした。1986年4月施行。

第3号被保険者制度の導入

厚生年金加入者の被扶養配偶者について、基礎年金を全国民共通のものとする考え方に沿って、国民年金の第3号被保険者として国民年金に強制加入することとした。これにより厚生年金が拠出金を負担して、厚生年金の被扶養配偶者も基礎年金を受けられることになった。1986年4月施行。

老齢厚生年金の支給開始年齢を引き上げ

男性の受給開始年齢は60歳から65歳に、女性の受給開始年齢は55歳から60歳に変更された。ただし、男性については60歳から65歳まで特別支給の老齢厚生年金を受給できるものであり、女性については3年に1歳ずつ、昭和62年度から12年かけて引き上げられるというものでした。

1989年(平成元年)

完全自動物価スライドの導入

それまでの物価スライド制は物価変動率が5%を超えて変動することが条件でしたが、5%枠をなくし、完全自動物価スライド制が導入された。

20歳以上学生の国民年金加入義務化を決定

20歳以上の学生の国民年金への加入は「任意」でしたが、1991年(平成3年)4月から義務化することに決定した。

1994年(平成6年)改正

厚生年金定額部分の支給開始年齢を引き上げ開始

60歳から65歳まで支給される「特別支給の老齢厚生年金」には、定額部分と報酬比例部分があります。このうち定額部分の支給開始年齢を、男子については2001年度から2013年度にかけて、女子についてはその5年遅れで、65歳に引上げることになった。

厚生年金に係る賞与等からの特別保険料(1%)の創設

平成7年4月から平成15年3月まで、賞与の1%、労使折半のため本人様の負担0.5%が、特別保険料として徴収され、年金給付に充てられていた。ただし、この特別保険料は本人の支給額には反映されないものだした。

2000年(平成12年)改正

老齢厚生年金報酬比例部分の支給開始年齢引上げ

60歳から65歳まで支給される「特別支給の老齢厚生年金」の報酬比例部分の支給開始年齢を、男子については2013年度から2025年度にかけて、女子についてはその5年遅れで、65歳に引上げることになった。

厚生年金の保険料に総報酬制を導入を決定

賞与にも標準報酬月額と同率の保険料率を乗じて保険料を徴収する事になった。特別保険料は廃止となった。2003年4月施行。

厚生年金給付の5%適正化

厚生年金の報酬比例部分について5%適正化が図られた。

総報酬制導入前の年金額の算出式

  • 適正化前(従前額保障年金額)
    平均標準報酬月額×7.5/1000×加入月数
  • 適正化後(本来水準年金額)
    7.5×0.95=7.125
    平均標準報酬月額×7.125/1000×加入月数

ただし、単純に減額されたわけではありません。適正化後の平均標準報酬月額は毎年度再評価率により改定されますが、適正化前の平均標準報酬月額は平成6年度の再評価率で固定されていて、「従前額保障」という措置で、適正化前の年金額が高くなる場合は適正化前の年金額が支給されている。

厚生年金加入条件の適用拡大

それまでは、週30時間勤務(週の所定内労働時間4分の3以上)が加入条件だったが、従業員500人以上の企業等について、週労働時間20時間以上、月額賃金8.8万円以上など、加入条件が拡大され、2016年10月施行された。

2004年(平成16年)改正

上限を固定した上での保険料の引上げ

急速な少子高齢化による負担の上昇が避けられない中、若年層を中心に負担上昇の不安が大きいことから、保険料水準の引上げスケジュールと上限を法律で定め、その財源の範囲内で給付を行う制度に変更した。2017年度以降の保険料水準を固定して、保険料を段階的に引上げを実施する。

  • 厚生年金 : 18.3%(労使折半)
    平成16年10月から毎年0.354%引上げ
  • 国民年金 : 16,900円
    平成17年4月から毎年280円引上げ

基礎年金国庫負担の2分の1への引上げ

2009年(平成21年)以降、基礎年金給付に対する国庫負担割合を、3分の1から2分の1に引き上げることに決定した。

積立金の活用

概ね100年間で年金財政の収支の均衡を図る方式とし、財政均衡期間終了時に給付費1年分程度の積立金を保有することとして、積立金を活用し後世代の給付に充てることとなった。

マクロ経済スライド調整の導入

上限が固定された保険料、国庫負担、積立金とういう限られた財源の範囲内で少子高齢化に対応するため、給付水準を自動調整する仕組みとなる「マクロ経済スライド調整」の仕組みが導入された。

GPIFの創設

専門性を徹底し、責任の明確化を図るとともに、グリーンピア業務や住宅融資業務を廃止して運用業務に特化するため、現在、年金積立金の管理運用をている特殊法人「年金資金運用基金」を廃止し、新たに独立行政法人「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」を創設を決定した。2006年4月に設立された。

2012年(平成24年) 

年金の受給資格期間を現在の25年から10年に短縮

2015年(平成27年)10月1日以降、年金の受給資格期間を10年に短縮した。

被用者年金制度の一元化

公務員及び私学教職員も厚生年金に加入し、2階部分は厚生年金に統一することになった。施行日は2015年(平成27年)10月1日。また、共済年金の保険料を段階的に引上げ、厚生年金の保険料率18.3%(労使折半)に統一することになった。

年金額の特例水準を解消

物価下落時に減額せず据え置いていたために本来より2.5%高い水準になっている年金額を、平成25年度から27年度までの3年間で解消することになった。

2020年(令和2年)

被用者保険の適用拡大

短時間労働者を被用者保険の適用対象とする事業所の規模を段階的に引き下げ、2022年10月に100人超規模、2024年10月に従業員50人超規模の事業所を対象とすることになった。

在職老齢年金制度の改正

60歳から64歳に支給される特別支給の老齢厚生年金について、年金額が支給停止となる基準額を、28万円から、65歳以上の場合と同じ47万円に引き上げる。2022年4月施行。

受給開始時期の選択肢を75歳まで拡大

繰下げ受給の上限年齢を75歳に引き上げ、受給開始時期を60歳から75歳の間で選択可能とした。

確定拠出年金(DC)の加入可能年齢の引上げ

2022年5月施行。

企業型DCの場合、厚生年金被保険者のうち65歳未満のものを加入者とすることができるとしていたが、厚生年金被保険者(70歳未満)であれば加入者とすることができるようにする。

個人型DCの場合、国民年金被保険者(1号・2号・3号)の資格を有していることに加えて60歳未満という要件があるが、国民年金被保険者であれば加入可能とする。たとえば、60歳以降でも国民年金任意加入被保険者は加入可能。

確定拠出年金の受給開始時期の拡大

確定拠出年金の受給開始の上限年齢を75歳に引き上げる。2022年4月施行。

国民年金手帳から基礎年金番号通知書への切替え

新たな国民年金加入者に対して、国民年金手帳に変わって基礎年金番号通知書を送付する。