物価が急上昇している中、2022年度年金の最初の支払いが6月15日にあり、年金の減額が話題になっています。今年度の年金額は昨年度より0.4%減額されています。
年金額は前年度までの賃金変動率や物価変動率により算出されるので、今年度に入っての物価上昇には対応できていません。
基礎年金満額と消費者物価指数から、物価に対する年金額の変動がみえる実質年金額指数を算出してみました。
なお、この指数はあくまでも個人的な考え方で作成していますので、参考程度にご覧ください。
基礎年金満額より「名目」年金額指数を算出
基礎年金満額とは、国民年金に20歳から60歳になるまでの40年間加入することにより支給される1階部分の年金額です。
1階部分の基礎年金も2階部分の厚生年金も年度ごとに同じ改定率で算出されるので、基礎年金満額で、名目年金額指数を算出することにします。
2015年度の年金額を基準とします
2013年9月までの年金額は物価が下落したにもかかわらず、年金額を据え置いたことで、本来の水準よりも2.5%高い水準(特例水準)となっていました。
この特例水準を、2013年10月、2014年4月、2015年4月に段階的に解消し、2015年度より本来水準の年金額に改定しました。
そこで、2015年度の基礎年金満額を基準として「名目年金額指数」を算出します。
年度 | 基礎年金 年額 | 基礎年金 月額 | 名目 年金額指数 |
---|---|---|---|
2010 | 792,100 | 66,008 | 101.5 |
2011 | 788,900 | 65,741 | 101.1 |
2012 | 786,500 | 65,541 | 100.8 |
2013 | 782,500 | 65,208 | 100.3 |
2014 | 772,800 | 64,400 | 99.1 |
2015 | 780,100 | 65,008 | 100.0 |
2016 | 780,100 | 65,008 | 100.0 |
2017 | 779,300 | 64,941 | 99.9 |
2018 | 779,300 | 64,941 | 99.9 |
2019 | 780,100 | 65,008 | 100.0 |
2020 | 781,700 | 65,141 | 100.2 |
2021 | 780,900 | 65,075 | 100.1 |
2022 | 777,800 | 64,816 | 99.7 |
年金額改定の詳細は以下のページを参照してください


年度単位の消費者物価指数を2015年度基準に変換
消費者物価指数は5年ごとに改定されおり、今回は2020年基準消費者物価指数を利用しました。
通常、消費者物価指数は1月~12月の年単位の指数を用いますが、統計局のデータには4月~翌年3月の年度単位の指数も掲載されており、今回は年度単位の指数を利用しました。
年金額指数を2015年基準に設定したので、2020年基準の年度単位の指数を2015年度基準の指数に変換しました。
年度 | 2020年基準 物価指数 | 2015年度基準 物価指数 |
---|---|---|
2010 | 94.7 | 96.4 |
2011 | 94.6 | 96.3 |
2012 | 94.4 | 96.1 |
2013 | 95.2 | 96.9 |
2014 | 98.0 | 99.8 |
2015 | 98.2 | 100.0 |
2016 | 98.2 | 100.0 |
2017 | 98.9 | 100.7 |
2018 | 99.6 | 101.4 |
2019 | 100.1 | 101.9 |
2020 | ※99.9 | 101.7 |
2021 | 100.0 | 101.8 |
2022 |
※2020年指数=100(基準)に対し、2020年度指数=99.9なっています
元データ e-Stat

実質年金額指数を算出してみました
名目年金額指数と消費者物価指数から2015年基準の実質年金額指数を算出してみました。
- 実質年金額指数
=名目年金額指数÷消費者物価変動率
年度 | 名目 年金額指数 | 消費者 物価指数 | 実質 年金額指数 |
---|---|---|---|
2010 | 101.5 | 96.4 | 105.3 |
2011 | 101.1 | 96.3 | 105.0 |
2012 | 100.8 | 96.1 | 104.9 |
2013 | 100.3 | 96.9 | 103.5 |
2014 | 99.1 | 99.8 | 99.3 |
2015 | 100.0 | 100.0 | 100.0 |
2016 | 100.0 | 100.0 | 100.0 |
2017 | 99.9 | 100.7 | 99.2 |
2018 | 99.9 | 101.4 | 98.5 |
2019 | 100.0 | 101.9 | 98.1 |
2020 | 100.2 | 101.7 | 98.5 |
2021 | 100.1 | 101.8 | 98.3 |
2022 | 99.7 |
実質年金額指数からわかること
2015年に特例水準が解消するまでは、本来水準より相当高い年金額が支給されていたことがわかります。
このところ毎年度、賃金変動率が物価変動率を下回り、年金改定のルールにより、賃金変動率ベースで年金額が改定されいます。仮に賃金変動率がプラスになっても、その場合はマクロ経済スライド調整が適用されます。
消費者物価指数が上昇すれば実質年金額指数は必ず下降しますが、2021年度までは消費者物価指数が上昇していないので、実質年金額指数はそれほど下降していません。
2022年度に入り物価がこれまでになく上昇しており、今年度の実質年金額指数の下落が想定されます。