令和5年1月に令和5年度の年金額が厚労省より公表されました。
67歳になる年度の年度末まで支給される年金を新規裁定年金、68歳になる年度から支給される年金を既裁定年金といいます。
新規裁定年金
- 2.2%の引き上げ
- 老齢基礎年金(月額):66,250円
- 老齢厚生年金(月額):224,482円
既裁定年金
- 1.9%の引き上げ
- 老齢基礎年金(月額):66,050円
- 老齢厚生年金(月額):未発表
この年金額を改定率から実際に算出して確かめてみます。
基礎年金額を算出します
基礎年金額(満額)は、平成16年に定められた年金額780,900円に「当年度基礎年金改定率」を乗じて算出します。
- 基礎年金額
=780,900×当年度基礎年金改定率
「当年度基礎年金改定率」は、「前年度基礎年金改定率」に毎年決定する「年金改定率」を乗じて算出します。
- 当年度基礎年金改定率
=前年度基礎年金改定率×年金改定率
令和5年度 基礎年金額
新…新規裁定年金 既…既裁定年金
- 令和4年度基礎年金改定率
両裁定とも:-0.4%(0.996) - 令和5年度年金改定率
新:+2.2%(1.022)
既:+1.9%(1.019) - 令和5年度基礎年金改定率
新:0.996×1.022=1.018
既:0.996×1.019=1.015
- 令和5年度基礎年金額(年額)
新:780,900円×1.018=795,000円
既:780,900円×1.015=792,600円
(100円未満四捨五入) - 令和5年度基礎年金額(月額)
新:795,000÷12=66,250円
既:792,600÷12=66,050円
(1円未満切り捨て)
厚労省から発表された令和5年度基礎年金額が算出されました。
基礎年金額改定の推移(令和3年度~)
年度 | (前基改)前年度基礎年金改定率 (当年改)当年度年金改定率 (当基改)当年度基礎年金改定率 (年額)基礎年金年額 (月額)基礎年金月額 |
---|---|
R03 (2021) 両裁定 | (前基改)1.001 (当年改)-0.1% (当基改)1.001×0.999=1.000 (年額)780,900×1.000=780,900円 (月額)65,075円 |
R04 (2022) 両裁定 | (前基改)1.000 (当年改)-0.4% (当基改)1.000×0.996=0.996 (年額)780,900×0.996=777,800円 (月額)64,816円 |
R05 (2023) 新規裁定 | (前基改)0.996 (当年改)+2.2% (当基改)0.996×1.022=1.018 (年額)780,900×1.018=795,000円 (月額)66,250円 |
R05 (2023) 既裁定 | (前基改)0.996 (当年改)+1.9% (当基改)0.996×1.019=1.015 (年額)780,900×1.015=792,600円 (月額)66,050円 |
厚生年金224,482円(新規裁定)を算出します
この金額はいわゆる「モデル年金」の金額です。
夫が平均的な収入(賞与を含む月額平均43.9万円)で40年間就業し、その間妻は専業主婦という想定の、夫婦2人分の年金額です。
- モデル年金
=夫婦二人分の基礎年金
+夫の厚生年金報酬比例額
夫の厚生年金報酬比例額の算出式
「モデル年金224,482円」に含まれる夫の厚生年金報酬比例額は、下図(1)本来水準の総報酬制導入後の式(赤枠)で算出されています。
標準報酬額と再評価率
モデル年金の厚生年金報酬比例額を算出する際の標準報酬額と再評価率は、令和元年の財政検証で再計算されリセットされました。
財政検証は5年ごとに実施され、最新の人口や経済の状況を反映した、長期にわたる年金財政収支の見通しを作成しています。
- 令和元年度発表
平均標準報酬額:438,860円
令和元年度再評価率:0.938
夫の報酬比例年金額は、以下の式で算出されています。
- 報酬比例金額
=438,860×再評価率×5.481/1000×480
この「再評価率」は年金改定率によって、年度ごとに改定されます。
年金改定率には、新規裁定年金の場合、賃金変動率とマクロ経済スライド調整率が織り込まれています。
- 当年度再評価率
=前年度再評価率×年金改定率
厚生年金(月額)224,482 円を算出します
- 令和4年度再評価率:0.935
- 令和5年度年金改定率:2.2%(1.022)
- 令和5年度再評価率
0.935×1.022=0.956 - 報酬比例額(年額)
=438,860×0.956×5.481/1000×480
=1,103,786円 - 報酬比例額(月額)
=1,103,786÷12
=91,982円 - 夫婦二人分の年金額(月額)
※基礎年金含む
=66,250×2+91,982
=224,482円
厚労省発表の厚生年金額224,482円が算出されました。
報酬比例額の推移
年度 | (前年再)前年再評価率 (当年改)当年改定率 (当年再)当年再評価率 (年)報酬比例額年額 (月)報酬比例額月額 |
---|---|
R03 2021 | (前年再)0.940 (当年改)-0.1% (当年再)0.940×0.999=0.939 (年額)438,860×0.939×5.481/1000×480 =1,084,158円 (月) 90,346円 |
R04 2022 | (前年再) 0.939 (当年改) -0.4% (当年再)0.939×0.996=0.935 (年額)438,860×0.935×5.481/1000×480 =1,079,540円 (月額) 89,961円 |
R05 2023 | (前年再) 0.935 (当年改) +2.2% (当年再)0.935×1.022=0.956 (年額)438,860×0.956×5.481/1000×480 =1,103,786円 (月額) 91,982円 |
夫婦二人モデル年金額の推移
モデル年金額
=基礎年金額×2+夫の厚年報酬比例額
年度 | モデル年金額 |
---|---|
R03(2021) | 65,075×2+90,346=220,496 |
R04(2022) | 64,816×2+89,961=219,593 |
R05(2023) | 66,250×2+91,982=224,482 |
まとめ
厚生労働省発表の公表資料には、厚生年金の年金額について、「 平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)43.9 万円)で 40 年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準です。」という注釈があります。
しかしながら、この43.9万円がそのまま使われているのではなく、実際には再評価率を乗じた金額になっています。
この再評価率は毎年度の年金改定率により算出されますが、その年金改定率には、新規裁定年金の場合、賃金変動率と年度によってはマクロ経済スライド調整率が織り込まれています。
令和5年度の場合、賃金変動率+2.8%、マクロ経済スライド調整率-0.6%で、年金改定率は+2.2%になり、基礎年金額も厚生年金報酬比例額も、前年比+2.2%になります。