【2024年度版】令和6年度年金額、マクロ経済スライド適用、新規裁定・既裁定とも+2.7%、

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令和6年1月19日、厚労省より令和6年度の老齢基礎年金と老齢厚生年金の年金額が発表されました。

65歳から支給される年金を新規裁定年金、68歳になる年度から支給される年金を既裁定年金といいます。

令和5年度はそれぞれ異なる改定率になりましたが、令和6年度は両裁定年金とも+2.7%になります。

また、令和5年度に続き、マクロ経済スライド調整も適用されます。

令和4年度・令和5年度の改定は以下を参照してください。

【2022年度版】年金額はマイナス0.4%、マクロ経済スライドは次年度以降に繰り越し
令和4年1月21日、令和4年度の老齢基礎年金と老齢厚生年金の支給額が公表されました。 新規裁定年金、既裁定年金、ともに改定率がマイナス0.4%となりました。 マクロ経済スライド調整...
【2023年度版】令和5年度年金額、マクロ経済スライド適用、新規裁定+2.2%、既裁定+1.9%、
令和5年1月20日、厚労省より令和5年度の老齢基礎年金と老齢厚生年金の年金額が発表されました。 65歳から支給される年金を新規裁定年金、68歳になる年度から支給される年金を既裁定年...
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令和6年1月19日 厚労省発表

毎年1月に新年度の老齢年金の年金額改定率が厚生労働省より発表されます。今年も1月19日に令和6年度の年金額が発表されました。

年金額改定

https://www.mhlw.go.jp/content/12502000/001040881.pdf

令和6年度(2024年度)年金額

  • 老齢基礎年金
    20歳から59歳までの40年間国民年金に加入した場合の老齢基礎年金の満額支給額
  • 老齢厚生年金
    夫が賞与含む月額換算の平均標準報酬43.9万円で40年間就業し、妻がその期間すべて専業主婦であった夫婦2人世帯で、夫婦二人が受け取る老齢基礎年金を含めた年金額(モデル年金)

新規裁定・既裁定とも2.7%の引き上げですが、昨年度の金額が異なるので、令和6年度の金額も異なっています。

新規裁定年金

  • 老齢基礎年金(月額):68,000円
  • 老齢厚生年金(月額):230,483円

既裁定年金

  • 老齢基礎年金(月額):67,808円
  • 老齢厚生年金(月額):未発表

年金額と改定率の推移

平成28年度~令和4年度は、新規裁定年金・既裁定年金とも同率・同額です。

年度改定率基礎年金厚生年金
H28(2016)0.0%65,008221,504
H29(2017)-0.1%64,941221,277
H30(2018)0.0%64,941221,277
R01(2019)+0.1%65,008221,504
R02(2020)+0.2%65,141220,724
R03(2021)-0.1%65,075220,496
R04(2022)-0.4%64,816219,593
R05(2023)新 +2.2%
既 +1.9%
66,250
66,050
224,482
R06(2024)新+2.7%
既+2.7%
68,000
67,808
230,484

年金額改定のルール

年金額改定の基本ルールは以下の通りになっています。

年金額改定の基本ルール

ベース改定率
(マクロ経済スライド調整前の改定率)

 賃金変動率>物価変動率
  新規裁定年金 :賃金変動率ベース
  既裁定年金  :物価変動率ベース

 賃金変動率<物価変動率
  両裁定年金とも:賃金変動率ベース

新規裁定年金は賃金変動率ベースで、既裁定年金は物価変動率ベースで改定するのが原則ですが、賃金変動率が物価変動率を下回る場合は、現役世代の負担を考慮して、既裁定年金も賃金変動率ベースで改定することになります。

マクロ経済スライド調整
現役人口の減少や平均余命の伸びに合わせて、年金の給付水準を自動的に減額調整する仕組みです。

  • ベース改定率がマイナスまたはゼロの場合は適用されない
  • ベース改定率がプラスの場合も改定率がゼロを下回る適用はされない
  • 適用されなかった調整率は次年度以降に繰り越す

(※)当サイトではマクロ経済スライド調整を加える前の改定率を「ベース改定率」としています

令和6年度は新規裁定・既裁定ともに賃金変動率ベース

  • 令和6年度の参考指標
    • 物価変動率   +3.2%
    • 賃金変動率   +3.1%
    • スライド調整率 -0.4%

令和6年度の参考指標は、賃金変動率が物価変動率を下回っているので、新規裁定年金・既裁定年金とも賃金変動率+3.1%がベース改定率になります。

マクロ経済スライドが適用されます

ベース改定率がプラスになったので、令和6年度はマクロ経済スライド調整率-0.4%が適用されます

  • 新規裁定・既裁定とも
     賃金(+3.1%)+調整(-0.4%)
     =+2.7%

これまでの年金改定率の推移

ベース改定率の推移

マクロ経済スライド調整が適用される前のベース改定率は以下のように推移しています。

年度物価
変動率
賃金
変動率
適用
変動率
ベース
改定率
H28(2016)+0.8%-0.2%ゼロ0.0%
H29(2017)-0.1%-1.1%物価-0.1%
H30(2018)+0.5%-0.4%ゼロ0.0%
R01(2019)+1.0%+0.6%賃金+0.6%
R02(2020)+0.5%+0.3%賃金+0.3%
R03(2021)0.0%-0.1%賃金-0.1%
R04(2022)-0.2%-0.4%賃金-0.4%
R05(2023)+2.5%+2.8%新:賃金
既:物価
+2.8%
+2.5%
R06(2024)+3.2%+3.1%賃金+3.1%

平成28年度から令和4年度までずっと賃金変動率が物価変動率を下回っています。賃金変動率が物価変動率に追いついていないことになります。

令和5年度、賃金変動率が物価変動率を上回りましたが、令和6年度はふたたび賃金変動率が物価変動率を下回りました。

平成28~30年度は例外規定が適用されました

H28~30年度は「賃金変動率<物価変動率」で、本来なら両裁定年金とも賃金変動率がベース改定率になるところですが、令和2年度までは例外規定があり、※印に例外規定が適用されています。

「賃金変動率<物価変動率」で賃金変動率がマイナスになったとき、そのまま賃金変動率を適用すると年金額のマイナスが大きくなるので、H28・H30年度は変動なし、H29年度は物価変動率が適用されています。

R03年度からは例外規定が撤廃されて「賃金変動率<物価変動率」の場合に賃金変動ベースが適用されています。

さらにマクロ経済スライド調整が加わります

上表のベース改定率にマクロ経済スライド調整率が加わります。

年度ベース
改定率
スラ
イド
実施
スラ
イド
実施
改定率
H28
(2016)
0.0%-0.7%しない0.0%
H29
(2017)
-0.1%-0.5%しない-0.1%
H30
(2018)
0.0%-0.3%繰越0.0%
R01
(2019)
+0.6%-0.2%-0.5%+0.1%
R02
(2020)
+0.3%-0.1%-0.1%+0.2%
R03
(2021)
-0.1%-0.1%繰越-0.1%
R04
(2022)
-0.4%-0.2%繰越-0.4%
R05
(2023)
新:+2.8%
既:+2.5%
-0.3%-0.6%+2.2%
+1.9%
R06
(2024)
+3.1%-0.4%-0.4%+2.7%

スライド調整の繰越

平成28年度・29年度は繰越制度がなくマクロ経済スライドは実施されませんでした。平成30年(2018)度より、将来世代の給付水準の確保や世代間での公平性を担保する観点から、適用できなかった調整率を、翌年度以降に繰越することになりました。

改定率の実際の計算

令和6年度の改定率は、
(+3.1)+(-0.4)=+2.7%
と近似的に計算されますが、実際の計算は、
1.031×0.996=1.0268…=1.027
となります。

まとめ

年金額の改定ルールは、基本的には、新規裁定年金は賃金変動率ベース、既裁定年金は物価変動率ベースですが、日本の年金制度は「賦課方式」で、現役世代が納める保険料が年金として支給されているため、賃金変動率が物価変動率に追いついていない場合は、既裁定年金も賃金変動率ベースで改定されます。

令和6年度は賃金変動率が物価変動率を下回ったので両裁定年金とも賃金変動率をベースに改定されることになりました。

また、ベースとなる改定率がプラスになったためマクロ経済スライドが適用されます。

物価変動率+3.2%に対して、年金額は+2.7%になり、実質的には目減りすることになります。