【2023年度版】マクロ経済スライド調整の仕組み、令和5年度は繰越分と合わせて-0.6%

南アルプス北岳への道 年金額年度改定

マクロ経済スライド調整とは、現役の被保険者の減少平均余命の伸びに応じて年金額を抑えるしくみです。

令和5年度単年のマクロ経済スライド調整率は-0.3%ですが、令和3年度繰越分-0.1%、令和4年度繰越分-0.2%とあわせて、令和5年度は-0.6%適用されることになりました。

マクロ経済スライド調整の仕組みについてまとめました。

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令和5年度調整率-0.3%の算出

マクロ経済スライド調整率は以下の2つの数値を乗じて算出します

  • 公的年金被保険者数の変動率
    令和5年度:0.0%(1.000)
     (2~4年度前の平均)
  • 平均余命の伸び率による調整
     一定値:-0.3%(0.997)
  • マクロ経済スライド調整率
    1.000×0.997=0.997 ⇒-0.3%

この数字は、近似的に (+0.0%)+(-0.3%)=-0.3% として求めることができます。

年度ごとの調整率の推移

▼スライド調整率の推移

 年度 保険者数平均余命 調整率
2016-0.4%-0.3%-0.7%
2017-0.2%-0.3%-0.5%
20180.0%-0.3%-0.3%
2019+0.1%-0.3%-0.2%
2020+0.2%-0.3%-0.1%
2021+0.2%-0.3%-0.1%
2022+0.1%-0.3%-0.2%
R05
2023
0.0%-0.3%-0.3%

令和5年度は繰越分も含めて適用

マクロ経済スライド調整は必ず適用されるというわけではありません。

物価変動率・賃金変動率が調整適用前のベース改定率となりますが、ベース改定率がプラスの場合に調整が適用されます。

スライド調整が適用される条件

  • ベース改定率がマイナスまたはゼロの場合は適用されない
  • ベース改定率がプラスの場合も改定率がゼロを下回る適用はされない
  • 2018年度以降、適用されなかった調整率は次年度以降に繰り越す

令和5年度は繰越分も含めて適用されました

67歳になる年度の年度末まで支給される年金を新規裁定年金、68歳になる年度から支給される年金を既裁定年金といいます。

令和5年度は、新規裁定年金は「賃金変動率」、既裁定年金は「物価変動率」がベース改定率になりました。

いずれのベース改定率もプラスになり、マクロ経済スライド調整が令和3年分と令和4年分の繰越分も含めて適用されました。

  • 令和5年度適用調整率
    令和3年度:-0.1%
    令和4年度:-0.2%
    令和5年度:-0.3%
    (-0.1%)+(-0.2%)+(-0.3%)=-0.6%

調整前のベースとなる改定率については以下の記事を参照してください。

【2023年度版】令和5年度年金額、マクロ経済スライド適用、新既裁定+2.2%、既裁定+1.9%、
令和5年1月20日、厚労省より令和5年度の老齢基礎年金と老齢厚生年金の年金額が発表されました。65歳から支給される年金を新規裁定年金、68歳になる年度から支給される年金を既裁定年金...

ベース改定率と調整適用の推移

▼調整率適用の推移

年度ベース
改定率
単年度
調整率
適用適用
スライド
適用後
改定率
20160.0%-0.7%しない0.0%
2017-0.1%-0.5%しない-0.1%
20180.0%-0.3%繰越0.0%
2019+0.6%-0.2%する-0.3%
-0.2%
+0.1%
2020+0.3%-0.1%する-0.1%+0.2%
2021-0.1%-0.1%繰越-0.1%
2022-0.4%-0.2%繰越-0.4%
R05
2023
新 +2.8%
既 +2.5%
-0.3%する-0.1%
-0.2%
-0.3%
新 +2.2%
既 +1.9%
新:新規裁定年金 既:既裁定年金

2017年度までは繰越制度がなく、2016年度と2017年度は「ベース改定率がマイナスまたはゼロ」ということで、実施が見送られました。調整は2007年度から実施する計画でしたが、実際に実施できたのは2015年度だけという状況でした。

2018年度より繰越制度が始まり、2018年度の調整率は翌年以降に繰り越され、2019年度のベース改定率がプラスになったので、2018年度と2019年度の2年分の調整が実施されました。

2021・2022年度は2年連続で繰越となり、2023年度はベース改定率がプラスになったので、繰越分も含めて適用されました。