75歳からの後期高齢者医療制度【2025年5月改定】

南アルプス 北岳から甲斐駒を望む 後期高齢者医療制度

後期高齢者医療制度は、75歳以上の方が加入する独立した医療制度です。

75歳未満で加入していた健康保険組合や国民健康保険から離れ全員が加入することになります。

65歳以上74歳以下の方で、寝たきり等一定の障害があると認定された方も加入することができます。

対象となる高齢者は個人単位で保険料を支払います。

この記事では、保険料と自己負担それぞれの仕組みについてまとめます。

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後期高齢者医療制度の財源

後期高齢者医療制度は、以下の財源で支えられています。

  • 公費 約5割
    (内訳)国:都道府県:市区町村
        =4:1:1
  • 後期高齢者支援金 約4割
    健康保険組合や国民健康保険から拠出される支援金
  • 後期高齢者医療保険料 約1割
    後期高齢者本人が支払う保険料

74歳までの人が納付する被用者健康保険料や国民健康保険料のうち20%~25%は支援金として後期高齢者医療制度に拠出されています。

後期高齢者医療制度の保険料

保険料は被保険者一人ひとりが納付します。

保険料額は被保険者全員が負担する均等割額と被保険者の所得に応じて負担する所得割額との合計になります。

  • 保険料=均等割額+所得割額
    所得割額=賦課のもととなる所得×所得割率

「賦課のもととなる所得金額」とは、前年の総所得金額等(雑所得、事業所得、給与所得等の総所得金額と分離課税の株式の譲渡所得、土地建物等の譲渡所得、山林所得等の合計額)から、地方税法に定める基礎控除額を控除した額です(雑損失の繰越控除額は控除しません)。

収入が公的年金のみの場合の「賦課のもととなる所得金額」は以下の通り計算します。

  • 賦課のもととなる所得(65歳以上)
    =年金収入-公的年金等控除-基礎控除
    =年金収入-110万円-43万円
    =年金収入-153万円

ただし、上記の公的年金控除額110万円は、65歳以上、年金収入が330万円以下、公的年金以外の合計所得金額が1千万円以下の場合、基礎控除額43万円は合計所得金額が2,400万円以下の場合です。

住民税や所得税を算出する際の社会保険料などは控除されません。

保険料の全国平均

後期高齢者医療制度は、都道府県ごとに市区町村が加入する「広域連合」単位で運営されています。

均等割額と所得割率は広域連合ごと(都道府県ごと)に定められ、2年毎に見直されます。

▼均等割額・所得割率の全国平均

項目令和6・7年度令和4・5年度
均等割額 年額
     月額
50,389 円
4,199 円
47,777 円
3,981 円
所得割率10.21%9.34%
賦課限度額6年度:73万円
7年度:80万円
66万円
令和6年度は所得割率に激変緩和措置あり

▼保険料額の全国平均

平均令和7年度令和6年度令和4・5年度
年額
月額
86,306 円
7,192円
84,988円
7,082円
78,902円
6,575円
令和6年度は所得割率に激変緩和措置あり

厚生労働省
令和6年度からの後期高齢者医療の保険料について

都道府県ごとの保険料

均等割額と所得割率は広域連合ごと(都道府県ごと)に定められています。

令和7年度の均等割額の上位、中位、下位、それぞれ3都道府県の均等割額と所得割率を抜き出しました。

▼令和7年度 均等割額・所得割率

都道府県均等割額(円)所得割率(%)
福岡県60,00411.83
鹿児島県59,90011.72
大分県59,20011.55
石川県50,7609.88
岡山県50,20010.49
島根県50,16010.08
新潟県44,2008.61
千葉県43,8009.11
岩手県43,8008.53

全都道府県の均等割額・所得割率は以下を参照してください。
厚生労働省サイト PDFファイル
後期高齢者医療制度の令和6・7年度の保険料率について

保険料の計算例

年金収入240万円として、以下の3県の保険料を計算します。

公的年金等控除110万円、基礎控除43万円を引いて、賦課のもととなる所得は87万円になります。

  • 福岡県
    60,004+87万×11.83%=162,925円
  • 岡山県
    50,200+87万×10.49%=141,463円
  • 岩手県
    43,800+87万× 8.53%=118,011円

上下で、年間約45,000円の差があります。

実際には、世帯の所得水準に応じて、均等割について軽減措置があります。

職場の健康保険の被扶養者であった人

職場の健康保険などの被扶養者であった人も75歳の誕生日から後期高齢者医療制度の被保険者になり、新たに保険料を負担することになります。

その場合、保険料が急に増えることのないよう、加入から2年を経過する月まで均等割額が5割軽減になります。また、当分の間、所得割額がかかりません。

資格取得をした前日に国民健康保険または国民健康保険組合に加入されていた場合は、この軽減措置には該当しません。

保険料の納め方

保険料は、年金からの天引きによる納付(特別徴収)が原則となります。

均等割の軽減判定

同一世帯の被保険者と世帯主(被保険者でない方も含む)の総所得金額等の合算額が定められた基準を下回る場合、均等割額が軽減されます。

軽減措置を判定する場合の所得金額は、基礎控除を差し引く前の所得金額を用いますが、65歳以上の公的年金収入の場合は、公的年金等控除110万円に特別控除15万円を加えて差し引きます。

  • 軽減判定所得
    =年金収入
    -公的年金控除110万円
    -特別控除15万円
    ただし、公的年金控除110万円は年金収入が330万円以下、公的年金以外の合計所得金額が1千万円以下の場合

▼令和7年度 軽減判定基準

軽減割合判定基準
同一世帯内の総所得金額等の合計
7割軽減43万+10万×(B-1)
5割軽減43万+30.5万×A+10万×(B-1)
2割軽減43万+56.0万×A+10万×(B-1)
  • 人数A:被保険者数
  • 人数B:給与所得者等の数
    • 給与等の収入が55万円を超える人
    • 65歳未満で公的年金等の収入が60万円を超える人
    • 65歳以上で公的年金等の収入が125万円を超える人
AB7割軽減5割軽減2割軽減
1人0人43万73.5万99万
1人1人43万73.5万99万
2人0人43万104万155万
2人1人43万104万155万
2人2人53万114万165万

1人世帯の軽減判定の例

年金収入168万円以下の場合は7割軽減になります。

  • 年金収入 168万円
  • 公的年金等控除 110万円
  • 65歳以上の特別控除 15万円
  • 軽減判定所得
    168万円-110万-15万=43万円
    …7割軽減

1人世帯で、収入が公的年金だけの場合の軽減措置基準額は以下の通りです。

軽減割合7割軽減5割軽減2割軽減
判定所得43万円以下73.5万円以下99万円以下
年金収入43万+125万
168万円以下
73.5万+125万
198.5万円以下
99万+125万
224万円以下

75歳以上の夫婦2人世帯の軽減判定の例

夫の年金収入225万円、妻の年金収入125万円以下の場合は、夫婦とも5割軽減になります

  • 夫の軽減判定所得
    225万-125万=100万
  • 妻の軽減判定所得
    125万以下-125万=0
  • 合計判定所得額
    100万円…5割軽減

夫婦2人世帯で収入が公的年金だけの場合の軽減判定基準額は以下の通りです。

▼妻の年金を125万円以下として

軽減割合7割軽減5割軽減2割軽減
判定所得43万円以下104万円以下155万円以下
年金収入43万+125万
夫168万円以下
104万+125万
夫229万以下
155万+125万
夫280万以下

保険料の具体例

平成6・7年度、47都道府県の中位にある岡山県で保険料を計算してみます。

  • 岡山県
    均等割額 50,200円
    所得割率 10.49%

1人世帯 年金収入200万円 

  • 均等割軽減判定
    200万-110万-15万=75万円
    …2割軽減
  • 均等割額
    50,200×0.8=40,160円
  • 所得割額
    (200万-110万-43万)×10.49%
    =47万×10.49%
    =49,303円
  • 年間保険料
    40,160+49,303=89,463円
    100円未満切捨により 89,400円

2人世帯 年金収入 夫200万円 妻130万円 

  • 均等割軽減判定
     夫 200万-110万-15万=75万円
     妻 130万-110万-15万=5万円
     合計80万円…5割軽減

  •  均等割額
     50,200×0.5=25,100円
     所得割額
     (200万-110万-43万)×10.49%
     =47万×10.49%
     =49,303円
     年間保険料
     25,100+49,303=74,403円
     100円未満切捨により74,400円

  •  均等割額
     50,200×0.5=25,100円
     所得割額
     (130万-110万-43万)×10.49%=0円
     年間保険料
     25,100円+0円=25,100円

後期高齢者の医療費の窓口負担

後期高齢者医療制度の窓口負担は、令和4年(2022年)10月1日から、それまで1割負担の人の中で一定以上の所得がある場合は2割負担になりました。

▼高齢者の窓口負担

年齢医療制度窓口負担
70歳未満健康保険組合
国民健康保険
3割
70歳以上
75歳未満
健康保険組合
国民健康保険
2割
現役並所得者:3割
75歳以上後期高齢者医療制度1割・2割
現役並所得者:3割

3割負担:現役並み所得者

住民税課税所得額(各種控除後)が145万円以上の被保険者およびこの人と同じ世帯に属する被保険者は、すべて現役並み所得者として3割負担となります。

収入が年金だけの場合、住民税課税所得額とは以下のように算出されます。

  • 住民税課税所得額
    =年金収入-公的年金等控除-基礎控除-社会保険料(実費)

ただし、以下の基準のいずれかに該当する場合、2割負担または1割負担となります。

  • 世帯に後期高齢者が1人で、収入額が383万円未満の場合
  • 世帯に後期高齢者が2人以上で、収入額の合計が520万円未満の場合
  • 世帯に後期高齢者が1人で、ほかに70歳以上75歳未満の人がいて、収入額の合計が520万円未満の場合

2割負担

現役並み所得者以外で、以下の条件が当てはまる人、同じ世帯の被保険者の中に住民税課税所得が28万円以上のかたがいて、世帯の被保険者の「年金収入」+「その他の合計所得金額」の合計額が以下の条件に当てはまる人。

  • 世帯の被保険者が1人の場合
    住民税課税所得が28万円以上、かつ「年金収入+その他の合計所得金額」が200万円以上ある被保険者
  • 世帯の被保険者が2人以上の場合
    住民税課税所得が28万円以上の被保険者がいて、かつ被保険者の「年金収入+その他の合計所得金額」の合計が320万円以上ある世帯の被保険者

<負担軽減措置>
窓口負担割合が2割となる方は、令和4年10月1日から令和7年9月30日までの3年間、1か月の外来医療の窓口負担割合の引き上げに伴う自己負担増加額が3,000円までに抑えられます。

1割負担

上記の2割、3割に該当しない場合。

  • 世帯の被保険者が1人の場合
    住民税課税所得が28万円未満、または「年金収入+その他の合計所得金額」が200万円未満の被保険者
  • 世帯の被保険者が2人以上の場合
    被保険者全員の住民税課税所得が28万円未満、または被保険者の「年金収入+その他の合計所得金額」の合計が320万円未満の世帯の被保険者
  • 世帯全員が住民税非課税の人

参考サイト・資料

厚生労働省サイト
令和6年度からの後期高齢者医療の保険料について
後期高齢者の窓口負担割合の変更等(令和3年法律改正について)

政府広報オンライン
後期高齢者医療制度 医療費の窓口負担割合はどれくらい?

神奈川県後期高齢者医療広域連合
高額療養費