令和4年1月に令和4年度の年金額が公表されました。
新規裁定年金 の年金額は以下の通りになっています。
- 改定率:マイナス0.4%
- 老齢基礎年金(月額):64,816円
- 老齢厚生年金(月額):219,593円
この年金額を改定率から実際に算出して確かめてみます。
改定率と年金額の推移
老齢基礎年金:64,816円
老齢基礎年金の年金額は、20歳から59歳までの40年間加入した場合の満額支給額です。
老齢厚生年金:219,593円
厚労省発表の年金額の推移
年度 | 改定率 | 基礎年金 (月額) | 厚生年金 (月額) |
---|---|---|---|
H28(2016) | 0.0% | 65,008 | 221,504 |
H29(2017) | -0.1% | 64,941 | 221,277 |
H30(2018) | 0.0% | 64,941 | 221,277 |
R01(2019) | +0.1% | 65,008 | (R01)221,504 (R02)220,266 |
R02(2020) | +0.2% | 65,141 | 220,724 |
R03(2021) | -0.1% | 65,075 | 220,496 |
R04(2022) | -0.4% | 64,816 | 219,593 |
令和元年の財政検証により、厚生年金(モデル年金)の算出基準になる平均報酬月額と再評価率が改定されました。
その結果、令和元年度の厚生年金(モデル年金)の金額が、「令和元年1月に発表された金額」と「令和2年1月に前年度年金額として発表された金額」とで異なっています。
基礎年金64,816円を算出します
基礎年金額(満額)は、平成16年に定められた年金額780,900円に「当年度基礎年金改定率」を乗じて算出します。
- 当年度基礎年金額
=780,900×当年度基礎年金改定率
「当年度基礎年金改定率」は、「前年度基礎年金改定率」に毎年決定する「年金改定率」を乗じて算出します。
- 当年度基礎年金改定率
=前年度基礎年金改定率×当年度年金改定率
令和4年度基礎年金額
令和3年度の基礎年金改定率0.0%(乗数1.000)、令和4年度の年金改定率マイナス0.4%(乗数0.996)から、令和4年度の基礎年金改定率を求めます。
- 令和3年度基礎年金改定率:1.000
- 令和4年度年金改定率:-0.4%(0.996)
- 令和4年度基礎年金改定率
1.000×0.996=0.996
- 令和4年度基礎年金額(年額)
780,900円×0.996=777,800円
(100円未満四捨五入) - 令和4年度基礎年金額(月額)
777,800÷12=64,816円
(1円未満切り捨て)
厚労省から発表された「令和4年度基礎年金額64,816円」が算出されました。
基礎年金額改定の推移(平成元年~)
年度 | (前基改)前年度基礎年金改定率 (当年改)当年度年金改定率 (当基改)当年度基礎年金改定率 (年額)基礎年金年額 (月額)基礎年金月額 |
---|---|
R01 (2019) | (前基改)0.998(当年改)+0.1% (当基改)0.998×1.001=0.999 (年額)780,900×0.999=780,100円 (月額)65,008円 |
R02 (2020) | (前基改)0.999(当年改)+0.2% (当基改)0.999×1.002=1.001 (年額)780,900×1.001=781,700円 (月額)65,141円 |
R03 (2021) | (前基改)1.001(当年改)-0.1% (当基改)1.001×0.999=1.000 (年額)780,900×1.000=780,900円 (月額)65,075円 |
R04 (2022) | (前基改)1.000(当年改)-0.4% (当基改)1.000×0.996=0.996 (年額)780,900×0.996=777,800円 (月額)64,816円 |
端数処理
年額は100円未満四捨五入、月額は1円未満切り捨て
厚生年金220,496円を算出
この金額はいわゆる「モデル年金」の金額です。
夫が平均的な収入(賞与を含む月額平均43.9万円)で40年間就業し、その間妻は専業主婦という想定の、夫婦2人分の金額です。
- モデル年金=夫の年金+妻の年金
夫の年金:基礎年金+厚年報酬比例額
妻の年金:基礎年金
夫の厚生年金報酬比例額の算出式
「モデル年金220,496円」に含まれる夫の厚生年金報酬比例額は、下図(1)本来水準の総報酬制導入後の式(赤枠)で算出されています。
標準報酬額と再評価率
モデル年金の厚生年金報酬比例額を算出する際の標準報酬額と再評価率は、令和元年の財政検証で再計算されリセットされました。
・令和元年度発表
平均標準報酬額:438,860円
令和元年度再評価率:0.938
夫の報酬比例年金額は、以下の式で算出されています。
・報酬比例金額
=438,860×再評価率×5.481/1000×480
この「再評価率」は年金改定率によって、年度ごとに改定されます。
・当年度再評価率
=前年度再評価率×年金改定率
報酬比例額の推移
年度 | (改)改定率 (再)再評価率 (年)報酬比例額年額 (月)報酬比例額月額 |
---|---|
R01 2019 | (改)- (再)0.938 (年)438,860×0.938×5.481/1000×480 =1,083,004円 (月)90,250円 |
R02 2020 | (改)+0.2% (再)0.938×1.002=0.940 (年)438,860×0.940×5.481/1000×480 =1,085,313円 (月)90,442円 |
R03 2021 | (改)-0.1% (再)0.940×0.999=0.939 (年)438,860×0.939×5.481/1000×480 =1,084,158円 (月) 90,346円 |
R04 2022 | (改)-0.4% (再)0.939×0.996=0.935 (年)438,860×0.935×5.481/1000×480 =1,079,540円 (月) 89,961円 |
夫婦二人モデル年金額
モデル年金額
=基礎年金額×2+夫の厚年報酬比例額
年度 | モデル年金額 |
---|---|
R01(2019) | 65,008×2+90,250=220,266 |
R02(2020) | 65,141×2+90,422=220,724 |
R03(2021) | 65,075×2+90,346=220,496 |
R04(2022) | 64,816×2+89,961=219,593 |
厚労省から発表された「令和4年度厚生年金額219,593円」が算出されました。
まとめ
厚生労働省発表の公表資料には、厚生年金の年金額について、「 平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)43.9 万円)で 40 年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準です。」という注釈があります。
しかしながら、この43.9万円がそのまま使われているのではなく、実際には再評価率を乗じた金額になっています。
この再評価率の中には、毎年度の年金改定率、年度によってはマクロ経済スライド調整率が織り込まれています。
令和4年度の収入が令和4年度の年金額に反映されたと仮定すると、その収入は再評価率0.935を乗じて換算されることになります。