TV朝日 年金の疑問 徹底調査! 検証その3 払った額を上回るのはいつ?

北アルプス雲の平 トピックス

テレビ朝日の番組「林修の今知りたいでしょ! 年金の疑問 徹底調査!」という番組を見ました。

番組内では、以下の5つの年金の疑問について解説していました。

  1. 何歳からもらうのが一番得?
  2. 最高で月いくらもらえる?
  3. 払った額を上回るのはいつ?
  4. 年金で足りない人はどうしている?
  5. 未納期間がある年金の額は?
  6. 将来年金はもらえる?

これらの項目について、私なりに検証していきたいと思います。

この記事では「3.払った額を上回るのはいつ?」について検証してみます。

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払った額を上回るのはいつ?番組内では…

番組では「払った額を上回るのはいつ?」という問いに対して、「国民年金・厚生年金、共に約10年で上回る」としています。

TVer 「年金の疑問 徹底調査!」22分40秒~

これについて、具体的に金額で検証してみます。

「国民年金」という言葉について

「国民年金」という言葉は2通りに使われているよう思います。

「日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満の方はすべて国民年金に加入することになっている」という場合の国民年金。

「自営業者、農業や漁業に従事している人は国民年金の保険料を自分で収めている」という場合の国民年金。

ここでは自分で国民年金保険料を収めている「国民年金第1号被保険者」について、支払った国民年金保険料とそれによって受け取れる年金額を比較して、「払った額を上回るのはいつ?」なのかを見ていきます。

国民年金 払った額を上回るのはいつ?

国民年金保険料は、年度ごとに改定されています。

令和元年度(2019年度)以降の国民年金保険料は17,000円/月を基準にして、物価変動・賃金変動にあわせて改定されています。

令和5年度の国民年金保険料は、16,520円/月でした。

一方、国民年金保険料の納付により受給できる老齢基礎年金は以下の式で算出されます。

  • 老齢基礎年金
    =満額×納付済み月数/480月

満額の金額は、65歳になり支給開始となるときの金額(新規裁定年金)と、68歳になる年度から支給される金額(既裁定年金)で、金額が異なります。

  • 令和5年度 老齢基礎年金満額(年額)
    新規裁定年金:795,000円
    既裁定年金 :792,600円

20歳以上60歳未満の40年間(480ヵ月)国民年金保険料を支払うことにより、満額が支給されることになります。

この場合について、支払った保険料の総額を年金受給により何年で回収できるかを令和5年度の保険料額と既裁定年金額で計算します。

  • 保険料総額÷年金額
    =16,520×480÷792,600
    =7,929,600÷792,600
    =10.0年

約10年で保険料を回収できることになります。

保険料の支払いが480ヵ月に満たない場合でも、同じく約10年で回収できます

  • 保険料総額÷年金額
    =(16,520×M)÷(792,600×M/480)
    =16,520÷(792,600/480)
    =16,520÷792,600×480
    =10.0年

思いのほか短期間で回収できますが、これは老齢基礎年金の約半分に国庫が投入されているからです。

保険料免除制度を利用して、ある期間全額免除になっても、その期間に相当する年金額については半額が国庫から支給されます。

国庫はすなわち消費税などの税金なので、学生時代などの未納期間がある場合は、税金だけ取られて国庫負担分の年金がもらえないことになります。

厚生年金 払った額を上回るのはいつ?

納付した厚生年金保険料総額とそれによって受給できる老齢基礎年金・老齢厚生年金の金額から、納付した保険料を何年で回収できるかを、具体的な数値で検証します。

40年間(480ヵ月)厚生年金に加入したとして計算します

  • 報酬月額
    賞与を含む月平均の報酬額
  • 保険料折半額
    =報酬月額×9.15%
    保険料率18.3%の内の自己負担分
  • 保険料総額
    =保険料折半額×480月
  • 厚生年金
    =報酬月額×5.481/1000×480月
    実際には報酬月額に再評価率が掛けられます
  • 年金合計
    =厚生年金+基礎年金792,600円
    基礎年金は既裁定年金額
  • 回収年
    =保険料総額÷年金合計

報酬
月額
(円)
保険料
折半額
(円)
保険料
総額
(万円)
厚生
年金
(万円)
年金
合計
(万円)
回収年
(年)
200,00018,300 878.452.6131.9 6.7年
300,00027,4501317.678.9158.2 8.3年
400,00036,6001756.8105.2184.5 9.5年
500,00045,7502196.0131.5210.810.4年
600,00054,9002635.2157.9237.111.1年
700,00064,0503074.4184.2263.411.7年

厚生年金保険料については、自己負担分だけで考えると、7年から12年で回収できることになります。

老齢基礎年金の支給額は報酬月額に関わらず一定なので、報酬月額が低いほど基礎年金の割合が高くなり、回収年が早まります。

上記の表は、厚生年金に40年加入したとして計算していますが、仮に30年加入したとすると、保険料総額も厚生年金も上記の4分の3になり、基礎年金も厚生年金加入部分については4分の3になります。

したがって、回収年は厚生年金加入年月に関わらず、上記のとおりになります。

また、上記の表では保険料総額を折半額で計算していますが、会社負担分も含めて考えると保険料総額は2倍になり、回収年も上記の表の2倍になり14年から24年かかります。

第3号被保険者制度を考えると

会社員(第2号被保険者)の配偶者で収入等の一定の要件を満たす場合、第3号被保険者として、保険料を納付することなしにその期間に相当する老齢基礎年金を受給することができます。

仮に、夫が40年厚生年金に加入して、妻が30年間第3号被保険者だったとします。

この場合、夫の厚生年金保険料により、自分自身の老齢基礎年金の40年分(満額)だけではなく、妻の老齢基礎年金の30年分も受給できることになります。

  • 年金合計
    =厚生年金+基礎年金×(1+3/4)
報酬
月額
(円)
保険料
折半額
(円)
保険料
総額
(万円)
厚生
年金
(万円)
年金
合計
(万円)
回収年
(年)
200,00018,300878.452.6191.34.6年
300,00027,4501317.678.9217.66.1年
400,00036,6001756.8105.2243.97.2年
500,00045,7502196.0131.5270.28.1年
600,00054,9002635.2157.9296.68.9年
700,00064,0503074.4184.2322.99.5年

この場合、厚生年金保険料の自己負担分を5年から10年で回収できることになります。

まとめ

国民年金第1号被保険者が直接支払う国民年金保険料については、老齢基礎年金を約10年受け取ることで回収できることになります。

65歳から受け取り始めると75歳までで回収できる計算です。

厚生年金保険料については、保険料の自己負担分と自分自身の年金で考えると、7年から12年で回収できることになります。

厚生年金保険料は、財政的には、第3号被保険者の老齢基礎年金の半額分も負担しています。

厚生年金保険料に独身者と妻帯者の区別はないので、ここに不公平感があることは否めません。

パート従業員として就労している第3号被保険者をできるだけ第2号被保険者に移行させるよう、年金制度改革が進められています。

参考サイト

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