国民年金の加入期間を45年にする案が検討されている件について

北アルプス 雲の平 木道 トピックス
北アルプス 雲の平

国民年金は現在20歳から59歳までの40年間加入することが義務付けられています。

この加入期間を20歳から64歳までの45年間に延長することが検討されているとのこと。

国民年金の加入期間を5年延長することにより年金支給額がどうなるのかを見ていきます。

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2019年の財政検証ですでに加入期間45年の試算が示されています

公的年金は5年ごとに財政検証が行われています。直近では2019年に行われました。

今後進んでゆく少子高齢化と様々な社会経済情勢を想定して、100年先までの年金水準の見通しを作成し、制度改正の検討を行うことになっています。

公的年金は、基礎年金、厚生年金それぞれで、少子高齢化を織り込んだ「マクロ経済スライド」により年金給付額を調整していくことになっています。

マクロ経済スライド調整は、基礎年金、厚生年金それぞれで、財政収支が均衡するまで実施されます。

2019年の財政検証では、このマクロ経済スライド調整を踏まえ、出生率、死亡率、経済成長率、労働参加などの条件を変えて、さまざまなモデル年金の試算が示されています。

さらに、3つのケースについて、オプション試算として保険料拠出期間を45年間に延長した場合の試算も示されています。

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モデル年金

財政検証では、いわゆる「モデル年金」による試算が行われています。

モデル年金とは、夫が平均賃金で40年間働いたサラリーマンであり、妻が40年間第3号被保険者である場合における二人世帯の年金額になります。

2019年のモデル年金

2019年時点のモデル年金額は以下のとおりです。

 年金の種類  年金額(月額) 所得代替率 
厚生年金9.0万円25.3%
基礎年金13.0万円36.4%
合計22.0万円61.7%

厚生年金は夫の厚生年金報酬比例額、基礎年金は夫婦二人分の基礎年金満額です。一人分の基礎年金満額は6.5万円になります。

所得代替率とは、それぞれの年金額の現役男子手取り収入(35.7万円)に対する割合です。

財政検証では、年金の給付水準の尺度としてモデル年金の所得代替率を用いています。

基礎年金の加入期間を45年に延長した場合の試算

財政検証では厚生年金と基礎年金の両方について加入期間を45年に延長する試算が示されていますが、厚生年金の加入期間は人それぞれなので、基礎年金の所得代替率を取り上げます。

所得代替率の年金額が2019年の水準でどうなるのかを計算してみました。

年金額は2019年の物価水準になります。

ケースⅠ 経済成長率0.9%として試算

ケースⅠ2019年加入40年加入45年
調整終了年2046年2045年
基礎年金
所得代替率
36.4%26.7%30.4%
2019年代替率
に対する倍率
10.730.84
2019年水準の
基礎年金額
6.5万円4.8万円5.4万円

ケースⅢ 経済成長率0.4%として試算

ケースⅢ2019年加入40年加入45年
調整終了年2047年2046年
基礎年金
所得代替率
36.4%26.2%30.0%
2019年代替率
に対する倍率
10.720.82
2019年水準の
基礎年金額
6.5万円4.7万円5.4万円

▼ケースⅤ 経済成長率0.0%として試算

ケースⅤ2019年加入40年加入45年
調整終了年2058年2055年
基礎年金
所得代替率
36.4%21.9%25.6%
2019年代替率
に対する倍率
10.600.70
2019年水準の
基礎年金額
6.5万円3.9万円4.6万円

基礎年金の加入年数を40年から45年にすることにより、基礎年金のマクロ経済スライド調整の終了時点で、14%~17%年金額が増える計算になります。

なお、法律では、財政検証において5年後までの間にモデル年金の所得代替率が50%を下回る見込みとなった時点において、所要の措置を講ずることとされています。

基礎年金と厚生年金の調整終了を一致させる案も…

マクロ経済スライド調整は、基礎年金と厚生年金のそれぞれで、財政収支が均衡するまで実施されますが、その終了時期を一致させる案も検討されています。

その場合、厚生年金の資金が基礎年金の給付に回されることにになります。

2020年12月の社会保険審議会年金数理部会の資料には、ケースⅢとケースⅤの追加試算が掲載されています。

日経新聞「国民年金を厚生年金で穴埋め」という記事について
日経新聞9月28日国民年金「5万円台」維持へ 厚労省、厚生年金で穴埋め 基礎年金の将来の支給額を今の物価水準で月5万円以上に保つことが厚労省で検討されているとのこと。 その原資とし...

「調整一致+45年加入」案の試算

以下の試算は、2019年の財政検証に2020年の年金改正法を反映させています。

基礎年金には1/2の国庫負担がありますが、「加入45年+一致」の試算は、5年延長分にも1/2の国庫負担がある試算になります。

年金額は2019年の物価水準になります。

ケースⅢ 経済成長率0.4%として試算

ケースⅢ2019年加入40年加入40年
+一致
加入45年
+一致
調整終了年2046年2033年2033年
基礎年金
所得代替率
36.4%26.5%32.9%37.0%
2019年代替率
に対する倍率
10.730.901.02
2019年水準の
基礎年金額
6.5万円4.7万円5.9万円6.6万円

▼ケースⅤ 経済成長率0.0%として試算

ケースⅤ2019年加入40年加入40年
+一致
加入45年
+一致
調整終了年2057年2039年2039年
基礎年金
所得代替率
36.4%22.2%29.6%33.3%
2019年代替率
に対する倍率
10.610.810.91
2019年水準の
基礎年金額
6.5万円4.0万円5.3万円5.9万円

参考資料

これらの資料を含め、財政検証の関連資料のリンクは厚生労働省の以下のページに掲載されています。