読売新聞オンラインに、社説として「年金額改定 制度維持に欠かせぬ給付抑制」という記事が掲載されていました。
何かと評判の悪い「マクロ経済スライド」について、「高齢者に手厚い給付を続ければ、若い世代が将来受け取る年金水準は低下してしまう。給付抑制を着実に実施し、子や孫世代の安心につなげていきたい。」として、その必要性を訴えています。
私自身は年金受給世代ですが、「マクロ経済スライド」の適正な運用は必要不可欠だと思っています。
記事の内容…
「給付水準を引き下げるのはやむを得ない」
世代間の仕送り…
公的年金制度は「世代間の仕送り」と呼ばれる。少子高齢化で、年金を受給する高齢者が増える一方、保険料を納める現役世代は先細りしている。給付水準を引き下げるのはやむを得ない。
子や孫世代の安心に…
高齢者に手厚い給付を続ければ、若い世代が将来受け取る年金水準は低下してしまう。給付抑制を着実に実施し、子や孫世代の安心につなげていきたい。
「課題を先送りせず不断に見直しを」
政府は、年金財政を5年ごとに点検する財政検証の作業に着手している。24年夏に結果を公表し、制度改革を行う予定だ。
年金制度への信頼を高めるには、課題を先送りせず、不断に見直しを続ける必要がある。
「少子化対策」「高齢者が長く働ける環境」
国を挙げて、少子化対策に取り組むことが重要だ。政府は、意欲のある高齢者が長く働ける環境を整えてもらいたい。
その通りだと思います。
マクロ経済スライドは欠かせない仕組みです
マクロ経済スライドによる調整は実質的に年金額が減らされるので、とても評判の悪い制度ですが、日本の公的年金の健全な維持にとって欠かせない仕組みになっています。
権丈善一(けんじょう よしかず)著「ちょっと気になる社会保障増補版」の「日本の年金を世界がうらやましがっている理由」のなかで、マクロ経済スライド調整の仕組みと意義が取り上げられています。氏は社会保障審議会年金部会の委員のひとりです。
内容を少し紹介します。
日本の「マクロ経済スライド」という方式は、他国がうらやむ制度となっています。なぜ、うらやましがるのか?それは、他国がマネしたくても、未だマネができない幾つかの特徴がマクロ経済スライドの中に組み込まれているからです。
将来の年金の保険料を固定するという保険料固定方式のもとで年金財政に入ってくる財源と、給付のバランスが取れるように、「政治プロセスを経ることなく自動的に」給付を引き下げていくメカニズムが組み込まれています。
給付の調整は、(中略)年金受給を新しく開始する人たちの「新規裁定年金」だけではなく、すでに年金を受給しはじめている人たちの「既裁定年金」にまでおよんでいます。これは大変なことで、他国がマネしようにもなかなかできないと思います。
保険料が固定され、年金財政の収入も固定されている日本の公的年金制度の下では、次のようなふたつの方法のいずれであっても、長期的には財政バランスを取ることができます。
- 今の高齢者に多くの年金を給付して、将来の人たちが我慢する。
- 今の高齢者に我慢してもらって、将来の人たちに多くの年金を給付する。
いま、公的年金が僕たち日本人に提示している大きな課題のひとつが、今の年金受給者である高齢者と、その人たちの孫、ひ孫さんたちの間で、どのように年金資金を分配するのが望ましいのかということです