住民税非課税には「パート収入100万円の壁」があります

北アルプス 雲の平 テント場 所得税・住民税

2022年9月、物価高騰の対策として、住民税非課税世帯に5万円給付する施策が決定しました。6月の10万円給付に続く措置になります。

年金生活をしている夫婦二人世帯では、世帯主とその配偶者の両方が住民税非課税になる必要があります。

配偶者にパート収入があるとき、所得税が発生する103万円の壁、会社の規模により社会保険料が発生する106万円の壁、無条件で社会保険料が発生する130万円の壁などがありますが、もう一つ、住民税が発生する100万円の壁があります。

配偶者のパート収入がこの100万円の壁を超えると、世帯主が住民税非課税であっても、住民税非課税世帯ではなくなってしまいます。

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世帯主が住民税非課税になるのは…

世帯主が現役で会社勤めしている場合は世帯主の住民税が非課税になることはまずないと思います。

ところが、世帯主が退職して年金生活に入ると、夫婦二人世帯で以下の条件を満たせば、世帯主の住民税は非課税になります。

  • 夫婦二人世帯
  • 世帯主が65歳以上
  • 世帯主の収入は公的年金のみ
  • 世帯主の年金収入が211万円以下
         ※各種控除前の支給額です

年金収入のみの場合、住民税が非課税になる年金収入の上限は、「住民税非課税上限所得+公的年金控除」で計算されます。

扶養親族が1人いる世帯主の住民税非課税上限所得は101万円、65歳以上の公的年金控除は110万円なので、住民税が非課税となる年金収入は211万円になります。

級地制度に注意

級地制度とは、地域ごとの物価や生活水準の差を考慮して、生活保護基準に地域差を設けている制度で、これにより住民税非課税基準も地域ごとに異なります。

上記の211万円という金額は1級地の金額で、2級地・3級地の住民税非課税年金収入はそれぞれ201.9万円、192.8万円になります。

▼住民税非課税年金収入

級地非課税上限
所得
 公的年金 
控除
非課税上限
年金収入
1級地101.0万円110万円211.0万円
2級地91.9万円110万円201.9万円
3級地82.8万円110万円192.8万円
夫婦二人世帯の世帯主・65歳以上・収入は公的年金のみ

給与収入など他の所得がある場合

所得を合計して非課税上限所得以下なら住民税非課税になります。

  • 年金所得=年金収入-公的年金控除
  • 給与所得=給与収入-給与所得控除
  • 事業所得=事業収入-必要経費

住民税非課税基準などについては以下のサイトを参照してください。

【2023年度版】65歳からどうなる?年金受給者の住民税非課税211万円の壁とは…
65歳からの年金収入には「211万円の壁」があります。 夫婦2人世帯で夫の年金が211万円以下なら個人住民税が非課税になります。 さらに妻も非課税なら住民税非課税世帯となり、様々な...

配偶者の住民税非課税基準

配偶者が住民税を課税される場合は、夫が住民税非課税であっても、今回の「住民税非課税世帯に5万円」というようなメリットが受けられません。

年間収入の数千円の差で受けられないということも起こるので注意が必要です。

公的年金のみの場合

年金収入が「非課税上限所得+公的年金控除」以下なら、住民税非課税になります。

▼住民税非課税年金収入(配偶者65歳未満)

級地非課税上限
所得
65歳未満の
公的年金控除
非課税上限
年金収入
1級地45万円60万円105万円
2級地41.5万円60万円101.5万円
3級地38万円60万円98万円
扶養親族なし・65歳未満・収入は公的年金のみ

▼住民税非課税年金収入(配偶者65歳以上)

級地非課税上限
所得
65歳以上の
公的年金控除
非課税上限
年金収入
1級地45万円110万円155万円
2級地41.5万円110万円151.5万円
3級地38万円110万円148万円
扶養親族なし・65歳以上・収入は公的年金のみ

65歳未満の年金は「特別支給の老齢厚生年金」か「繰り上げ受給の年金」になります。

65歳以上の年金は「基礎年金」を含んだ年金になります。

いずれにしても、妻が長期にわたって厚生年金に加入して共稼ぎの状態だった場合以外は、非課税上限を超えることはないと思われます。

パート収入のみの場合

給与収入が「非課税上限所得+給与所得控除」以下なら、住民税非課税になります。

▼住民税非課税給与収入

級地非課税上限
所得
給与所得控除非課税上限
給与収入
1級地45万円55万円100万円
2級地41.5万円55万円96.5万円
3級地38万円55万円93万円
扶養親族なし、収入162.5万円以下

1級地では、パート収入が100万円を超えたら住民税が発生することになります。

これが住民税非課税の100万円の壁です。

年金+パート収入の場合

これらの所得を合計して非課税上限所得以下なら住民税非課税になります。

  • 年金所得=年金収入-公的年金控除
  • 給与所得=給与収入-給与所得控除

パート収入の壁

夫が会社員で妻がパートで働く場合、パート収入には様々な壁があります。

▼パート収入の壁

  • 年収100万円超
    次年度に住民税が発生
  • 年収103万円超
    所得税が発生
    実際には月収8.8万円で所得税発生
  • 年収106万円(月収8.8万円以上)
    勤務先の会社規模により、夫の扶養をはずれ自身で勤務先の社会保険に加入
  • 年収130万円超(108,334円以上)
    夫の扶養をはずれ自身で勤務先の社会保険に加入するか、自身で国民健康保険・国民年金に加入する
  • 年収150万円超
    夫の配偶者特別控除が段階的に縮小

夫の会社の扶養手当の条件が、年収103万円、年収130万円などに設定されている場合、それらも大きな壁になります。

夫の退職後は100万円の壁を意識

夫が会社員の間は夫が住民税非課税であることはまずないので、妻も住民税非課税を意識して働く必要はありません。

夫が退職して年金生活に入り年金額が211万円以下なら住民税が非課税になりますが、妻のパート収入が年収100万円を超えると、住民税非課税世帯にはなりません。

その場合、住民税非課税世帯に対する様々な特典が受けられないことになります。

パート収入が年収100万円を少し超えて働いている人は、夫が退職して年金生活に入り住民税が非課税になった場合は、もう一度パート年収について検討してみる必要があると思います。