令和2年から、給与所得控除や公的年金等控除の金額が、一律10万円引き下げられます。
その結果、控除額を差し引いた給与所得、年金所得(雑所得)は一律10万円増えることになります。
結論からいうと、同時に基礎控除が一律10万円引き上げられるので、高額所得者を除き大きな影響はないように思われます。
令和2年からの公的年金控除額の改定
- 控除額が一律10万円引き下げられる
- その結果、所得額は一律10万円引き上がる
- 令和2年1月の収入から適用される
- 個人住民税は前年収入より算出されるので令和3年度納付の税額より適用される
65歳未満の人
公的年金等の収入額 | 公的年金等控除額 上段:令和元年まで 下段:令和2年以降 |
---|---|
130万円以下 | 70万円 60万円 |
130万円超 410万円以下 | 年金収入×25%+37.5万円 年金収入×25%+27.5万円 |
410万円超 770万円以下 | 年金収入×15%+78.5万円 年金収入×15%+68.5万円 |
770万円超 1000万円以下 | 年金収入×5%+155.5万円 年金収入×5%+145.5万円 |
1000万円超 | 年金収入×5%+155.5万円 195.5万円 |
65歳以上の人
公的年金等の収入額 | 公的年金等控除額 上段:令和元年まで 下段:令和2年以降 |
---|---|
330万円以下 | 120万円 110万円 |
330万円超 410万円以下 | 年金収入×25%+37.5万円 年金収入×25%+27.5万円 |
410万円超 770万円以下 | 年金収入×15%+78.5万円 年金収入×15%+68.5万円 |
700万円超 1000万円以下 | 年金収入×5%+155.5万円 年金収入×5%+145.5万円 |
1000万円超 | 年金収入×5%+155.5万円 195.5万円 |
(注)上記の金額は、公的年金等以外の所得が1,000万円以下の場合です。公的年金等以外の所得が1,000万円超える場合は、さらに控除額が引下げられます。
基礎控除は一律10万円引き上げられます
令和2年からの基礎控除額の改正
- 基礎控除額が一律10万円引き上げられる
- 所得税算出時…38万円→48万円
- 個人住民税算出時…33万円→43万円
- 合計所得金額が2400万円超の場合は段階的に逓減される
課税所得の計算方法
- 年金所得(雑所得)
=年金収入- 公的年金等控除 - 課税所得=年金所得-所得控除
- 所得控除:基礎控除、配偶者控除、扶養控除、社会保険料控除、他
まとめると以下の式になります。
課税所得(住民税では課税標準額)
=年金収入-公的年金等控除-基礎控除
-その他の所得控除
この式で、公的年金等控除が一律マイナス10万円、基礎控除が一律プラス10万円改定されます。
高額所得者を除き実質の影響はないことになります。
住民税非課税の基準にも影響はありません
住民税を課税する場合は前出の「課税標準額」を用いますが、住民税の非課税は別の所得基準で判定します。
住民税は「均等割」と「所得割」の合計になり、それぞれに非課税になる所得基準があります。
均等割非課税の所得基準のほうが低いので、年金所得がその基準以下であれば住民税が非課税になります。
住民税非課税の所得金額・年金収入額
令和2年度まで
- 扶養親族なし:35万
- 扶養親族あり:35万円×(控除対象配偶者及び扶養親族の数+1)+21万円
- 夫婦二人世帯の場合の夫の非課税所得
35万×2+21万=91万円 - その場合の夫(65歳以上)の年金収入額
120万円+91万円 =211万円
令和3年度から
- 扶養親族なし:45万
- 扶養親族あり:35万円×(控除対象配偶者及び扶養親族の数+1)+31万円
- 夫婦二人世帯の場合の夫の非課税所得
35万×2+31万=101万円 - その場合の夫(65歳以上)の年金額収入額
110万円+101万円=211万円
すなわち、「年金211万円の壁」は変わらないことになります。
まとめ
私自身は、65歳からの年金が211万円をギリギリ切る金額で住民税が非課税になると算段していました。
ところが 「公的年金等控除の金額が10万円減り、年金所得が10万円引き上げられる」と知り、少々焦りました。
その後、同時に基礎控除が10万円増やされること、住民税非課税になる所得基準も実質変わらないことを確認し、一安心しました。
今回の改正では、高額所得の場合、給与所得控除·公的年金等控除と基礎控除が引下げられ、課税所得が引上げられることになります。