【2022年度版】65歳からどうなる?年金受給者の個人住民税

赤石岳からの富士山 所得税・住民税

個人住民税は、個人ごとに、前年の収入により決定します。

令和4年度の個人住民税は令和3年1月から12月の収入により決定します。

令和2年の税制改正により、基礎控除額などが改正され、令和3年度徴収分から適用されています。

65歳からの年金受給者の個人住民税の算出方法、徴収方法などを確認しました。

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個人住民税の課税の仕組み

個人住民税は個人にかかる税金です。

一人ひとりの前年の収入で算出し、前年度分の個人住民税として6月に金額が確定します。

個人住民税は市区町村民税都道府県民税との合計金額になります.

それぞれ、1人当たり一定額の均等割額と所得に比例する所得割額の合計金額になっています。

個人住民税の標準税額

個人住民税の標準税額は以下の通りです。

▼個人住民税 標準税額

個人住民税均等割額(年額)所得割額
(政令指定都市)
市区町村民税3,500円6%( 8% )
都道府県民税1,500円4%( 2% )
合計5,000円10%

復興財源確保のため、平成26年度~令和5年度の均等割額が、都道府県民税、市区町村民税いずれも500円引き上げられています。

個人住民税の算出式

  • 個人住民税=均等割額+所得割額
    • 所得割額=課税標準額×10%
    • 課税標準額=所得-所得控除等
  • 事業所得=総収入-必要経費
  • 給与所得=給与収入-給与所得控除
  • 年金所得=年金収入-公的年金等控除

政令指定都市の税源移譲

以下の20の政令指定都市については、県費負担教職員の給与負担事務が道府県から指定都市に移譲されることに伴い税源移譲が行われ、所得割2%分が道府県民税から市町村民税に移譲されています。所得割額合計10%については変わりありません。

札幌・仙台・さいたま・千葉・横浜・川崎・相模原・新潟・静岡・浜松・名古屋・京都・大阪・堺・神戸・岡山・広島・北九州・福岡・熊本

超過課税、独自減税の場合あり

以下の道府県・市町村は、標準税率によらず、超過税率、独自減税を採用しています。(令和2年4月1日現在)

道府県民税 均等割 標準税額 1,500円

  • 2,700円:宮城県
  • 2,500円:岩手県、山形県、福島県、茨城県、岐阜県、三重県
  • 2,300円:秋田県、滋賀県、兵庫県
  • 2,200円:栃木県、群馬県、愛媛県
  • 2,100円:京都府
  • 2,000円:富山県、石川県、山梨県、長野県、愛知県、奈良県、和歌山県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、高知県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県
  • 1,900円:静岡県
  • 1,800円:神奈川県、大阪府

市町村民税 均等割 標準税額 3,500円

  • 4,400円:横浜市
  • 3,900円:神戸市
  • 3,300円:名古屋市
  • 3,200円:田尻町(大阪府)

道府県民税 所得割 標準税率4%(指定都市2%)

  • 4.025%:神奈川県
    神奈川県内の指定都市は2.025%

市町村民税 所得割 標準税率6%(指定都市8%)

  • 6.1%:豊岡市(兵庫県)
  • 7.7%:名古屋市(指定都市)
  • 5.4%:田尻町(大阪府)

65歳以上年金受給者の住民税

公的年金の場合は、受け取る年金収入額から公的年金等控除を差し引いて年金所得(雑所得)とします。

さらに所得控除を差し引いて所得割の課税標準額とします。

  • 年金所得
    =公的年金収入-公的年金等控除
  • 課税標準額
    =年金所得-所得控除

この課税標準額は所得税でいうところの「課税所得」にあたり、これをもとに住民税の所得割を算出します。

65歳以上の公的年金等控除額 110万円

2021年度より、公的年金等控除額が一律10万円引き下げられました。

また、「公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額」が、1千万円を超える場合、さらに段階的に引き下げられます。

  • (A)公的年金等の収入額
  • (B)公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額

▼65歳以上の公的年金控除額

(A)
公的年金等
の収入額
(B)
1千万円
控除額
(B)
2千万円
控除額
(B)
2千万円超
控除額
~330万円110万100万90万
~410万円A×25%
+27.5万
A×25%
+17.5万
A×25%
+7.5万
~770万円A×15%
+68.5万
A×15%
+58.5万
A×15%
+48.5万
1000万円A×5%
+145.5万
A×5%
+135.5万
A×5%
+125.5万
1000万円超195.5万185.5万175.5万

65歳以上・年金収入が330万円以下・年金以外の所得が1千万以下の場合、公的年金等控除額は110万円になります。

基礎控除 43万円

令和3年度より、基礎控除額が一律10万円引き上げられました。さらに、合計所得金額が2,400万円を超える場合、段階的に控除額を引き下げ、2,500万円を超える場合、基礎控除の適用がありません。

 合計所得金額  基礎控除額 
~2,400万円43万円
~2,450万円29万円
~2,500万円15万円
2,500万円超適用なし

合計所得金額2,400万円以下の場合、基礎控除額は43万円になります。

配偶者控除 33万円

2018年度までは、配偶者の前年の合計所得金額が38万円以下(給与収入103万円以下)の場合、本人の所得に関わらず一律33万円(配偶者が70歳以上の場合38万円)の配偶者控除の適用を受けることができました。

2019年度からは、本人の合計所得金額が900万円を超える場合、本人の合計所得金額に応じて、下表のとおり控除額が引き下げられることになりました。

 合計所得金額 配偶者控除額老人配偶者控除額
(70歳以上)
~900万円 33万円38万円
~950万円 22万円26万円
~1,000万円 11万円13万円
1,000万円超適用なし適用なし

2021年度からは、配偶者控除の適用条件となる配偶者の前年の合計所得金額が38万円以下から48万円以下に引き上げされました。ただし、給与所得控除が10万円引き下げられているので、「配偶者の給与収入103万円以下」という条件に変更はありません。

本人の合計所得が900万円以下の場合、配偶者控除は33万円になります。

夫婦二人年金世帯の夫の住民税

夫婦二人世帯で夫の年金が240万円として、夫の住民税を求めてみます。

  • 課税標準額
    =公的年金収入(240万)
     -公的年金等控除(110万)
     -基礎控除(43万)
     -配偶者控除(33万)
     -国民健康保険料夫婦分(概算18万円)
     -介護保険料本人分(概算10万円)
    =240万-214万
    =26万円
  • 個人住民税
    =均等割額+所得割額
    =0.5万+26万×10%
    =3.1万円

実際にはこの金額からさらに調整控除額が差し引かれます。→調整控除

個人住民税の非課税基準

住民税の所得割を課税する場合は「課税標準額」を用いますが、住民税の非課税は基礎控除などの所得控除を引く前の所得を合計した「合計所得金額」で判断します。

  • 事業所得=総収入-必要経費
  • 給与所得=給与収入-給与所得控除
  • 年金所得=年金収入-公的年金等控除

「均等割額」と「所得割額」のそれぞれに非課税になる基準があります。

均等割 非課税上限所得

配偶者
扶養親族
合計所得金額
非課税上限額
なし45万円
あり35万円×世帯人数+31万円

所得割 非課税上限所得

配偶者
扶養親族
合計所得金額
非課税上限額
なし45万円
あり35万円×世帯人数+42万円

65歳以上で住民税非課税となる年金額

均等割の非課税上限の方が低いので、所得がそれより低ければ、住民税が非課税になります。

65歳以上で収入が公的年金のみの場合、公的年金等控除額は「65歳以上の場合110万円」となるので、住民税が非課税になる年金額は以下の通りになります。

▼住民税非課税 年金所得・年金収入

配偶者
扶養親族
住民税非課税
所得上限額
住民税非課税
年金収入上限額
なし45万円45万+110万
=155万円
1人35万×2+31万
=101万円
101万+110万
211万円
2人35万×3+31万
=136万円
136万+110万
=246万円

年金収入211万円の壁

夫婦二人世帯・夫が65歳以上・夫の収入が公的年金のみの場合、夫の年金収入が211万円以下なら住民税非課税になります。

さらに妻が住民税非課税なら、住民税非課税世帯となり、様々なメリットがあります。

【2023年度版】65歳からどうなる?年金受給者の住民税非課税211万円の壁とは…
65歳からの年金収入には「211万円の壁」があります。 夫婦2人世帯で夫の年金が211万円以下なら個人住民税が非課税になります。 さらに妻も非課税なら住民税非課税世帯となり、様々な...

級地制度による非課税金額

級地制度とは、地域における生活様式や物価差による生活水準の差がみられる実態を踏まえ、最低生活保障の観点から生活保護基準に地域差を設けている制度です。

住民税非課税基準は1級地、2級地、3級地の3段階に分けられています。上記の非課税基準は1級地の基準で、2級地、3級地の基準は以下になります。

配偶者
扶養親族
2級地
非課税上限所得
3級地
非課税上限所得
なし41.5万円38万円
あり31.5万円×世帯人数
+28.9万円
28万円×世帯人数
+26.8万円

住民税非課税になる年金額上限

夫婦二人世帯の夫(65歳以上)の住民税が非課税になる年金額上限

  • 1級地
    35万×2+31万+110万=211万円
  • 2級地
    31.5万×2+28.9万+110万=201.9万円
  • 3級地
    28万×2+26.8万+110万=192.8万円

級地制度(Wikipedia)

個人住民税の納税方法

個人住民税は偶数月の年金支払額から特別徴収(天引き徴収)されます。

4月1日現在において65歳以上で対象年の年金支払額が年額18万円以上であるとき、特別徴収の対象になります。

  • 普通徴収…納付書または口座振替
  • 特別徴収…年金から天引き

特別徴収の例

初めて特別徴収が始まる年度

6月・8月10月・12月・2月
普通徴収特別徴収
年税額の1/4ずつ年税額の1/6ずつ

前年度から引き続き特別徴収する年度

4月・6月・8月10月・12月・2月
特別徴収特別徴収
仮徴収
前年額の半額の1/3ずつ
残額の1/3ずつ

※徴収方法は自治体により異なります

調整控除について

個人住民税には「調整控除」という控除があります。

  • 個人住民税
     =均等割額+所得割額-調整控除額

平成19年に所得税の税率を下げて住民税の税率を上げる「税源移譲」が行われました。その際、住民税の基礎控除・配偶者控除などの人的控除額が所得税のそれより少額になります。

控除の種類所得税住民税差額
基礎控除48万円43万円5万円
配偶者控除38万円33万円5万円

単純に所得税をマイナス5%、住民税をプラス5%にすると、控除額が小さくなり、税負担が増えることになってしまいます。その税負担を調整するため、「調整控除額」が設定されています。

合計課税所得金額(所得控除後の課税総所得金額、課税退職所得金額及び課税山林所得金額の合計額)が200万円以下の場合の調整控除額は以下の通りになります。

  • 調整控除額(1,2のいずれか少ない方)
    1. 人的控除額の差額の合計金額×5%
    2. 住民税の合計課税所得金額×5%

例えば、夫婦二人世帯で夫の住民税を算出する場合、基礎控除と配偶者控除の差額の合計は10万円になるので、調整控除額は「10万円×5%=5,000円」になり、夫の住民税から控除されます。

まとめ

令和2年度の税制改正により、公的年金控除が一律10万円引き下げられ、基礎控除が一律10万円引き上げられました。

平均的な年金受給者は、結果的に課税標準額に変化はなく、令和3年度以降においても、所得税、住民税とも大きな変化はないと思われます。

住民税の非課税基準も、公的年金控除が一律10万円引き下げられましたが、その代わり非課税基準額が一律10万円引き上げられたので、結果的に変化はありません。

一方、高額所得者は公的年金等控除、基礎控除、各種所得控除が所得により段階的に引き下げられ、所得税、住民税とも増額されます。