テレビ朝日の番組「林修の今知りたいでしょ! 年金の疑問 徹底調査!」という番組を見ました。
番組内では、以下の5つの年金の疑問について解説していました。
- 何歳からもらうのが一番得?
- 最高で月いくらもらえる?
- 払った額を上回るのはいつ?
- 年金で足りない人はどうしている?
- 未納期間がある年金の額は?
- 将来年金はもらえる?
これらの項目について、私なりに検証していきたいと思います。
この記事では「4.年金で足りない人はどうしている?」の疑問について検証してみます。
老後に必要な生活費は?
番組では、老後に必要な生活費を、以下のように紹介しています。
- 夫婦2人の老後の最低日常生活費
平均 月23.2万円
出典となっている(公財)生命保険文化センターHP「老後の生活費はいくらくらい必要と考える」に当たってみました。
生命保険文化センターが行った調査によると、夫婦2人で老後生活を送る上で必要と考える最低日常生活費は月額で平均23.2万円、ゆとりある老後生活を送るための費用は月額で平均37.9万円となっています。
老齢年金の平均は?
番組では老齢年金の平均は以下のように紹介しています。
- 国民年金(自営業など)
平均 月5.5万円 - 厚生年金(会社員など)
平均 月14.5万円
「国民年金」とは国民年金制度の1階部分の老齢基礎年金支給額、「厚生年金」とは老齢基礎年金と老齢厚生年金報酬比例額の合計支給額になります。
出典となっている「厚生労働省 令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概要(PDF)」に当たってみました。少し数字が違っていますが…。
▼国民年金の受給額
国民年金受給者の老齢年金の平均年金月額は、令和3年度末現在で5万6千円、令和3年度新規裁定者で5万4千円となっている。また、基礎のみ共済なし・旧国年の受給者の老齢年金の平均年金月額は、令和3年度末現在で5万2千円となっている。
令和3年度の老齢基礎年金の満額は月額6.5万円です。以下、語句の説明です。
- 新規裁定者
65歳になり新規に老齢年金を受給し始める人。 - 基礎のみ共済なし
昭和61年以降の新法国民年金で厚生年金・共済年金の受給がなく老齢基礎年金だけを受給している人。 - 旧国年
昭和61年4月1日以前の旧国民年金制度。自営業者等が対象、会社員の妻は任意加入、大正15年4月1日以前生まれの人。
▼厚生年金の受給額
令和3年度末の厚生年金保険(第1号)の老齢給付の受給権者の平均年金月額は、併給する老齢基礎年金の額を含めて、老齢年金が 14 万4千円、通算老齢年金が6万3千円となっている。
以下、語句の説明です。
- 厚生年金保険(第1号)
国民年金第1号のことではない。厚生年金被保険者は4種別に分けられていて、その第1号のこと。民間の事業所の厚生年金加入者(第1号)、国家公務員共済組合員(第2号)、地方公務員共済組合員(第3号)、私立学校の教職員(第4号)。 - 通算老齢年金
旧法厚生年金保険の年金であり、いくつかの年金制度に加入した者が、各年金制度の加入期間を合計(通算)して一定期間以上ある場合等に、各制度からそれぞれの加入期間に応じて支給される年金をいう。大正15年4月1日以前生まれの人。
条件を絞った年金額
条件を絞った場合の平均額を調べてみました。昭和61年4月以降に新法が適用された受給者(大正15年4月2日以降生まれの方)の平均値です。
- 老齢基礎年金のみの受給者
平均 月52,161円 - 老齢厚生年金受給者
(65歳未満の特別支給受給者を除く)
平均 月150,515円
(内 基礎年金 58,937円)
出典:令和3年度 厚生年金保険・国民年金 事業統計 概要 (PDF)
番組で紹介されている国民年金の数値「月平均5.5万円」は、厚生年金受給者の基礎年金額も含めて平均した数値と思われ、基礎年金だけを受け取っている人は「月平均5.2万円」になっています。
また、番組で紹介されている厚生年金の数値「平均14.5万円」は、基礎年金を受給していない特別支給の老齢厚生年金受給者の年金額を含めて平均した数値と思われ、基礎年金を含めて受給している人は「平均15.1万円」になっています。
夫婦二人分の平均は資料がありませんが、仮に夫が厚生年金、妻が基礎年金と仮定すると、15.1万円+5.2万円=20.3万円になります。
夫婦二人の最低日常生活費が月23.2万円とありますので、月3万円ほど足りないことになります。
10万円~25万円の年金をもらうために必要な年収は?
国民年金保険料を40年間収めたとしても、老齢基礎年金満額の月額6.5万円にしかなりません。
老後の生活に必要なある程度の資金を公的年金で得るためには、会社員などになって厚生年金に加入する必要があります。
ここでは厚生年金に加入したとして、老齢年金を月額10万円~25万円もらうために必要な年収を計算してみます。
厚労省では毎年度「夫が標準的な収入で40年厚生年金に加入してその間妻が専業主婦である夫婦二人分の年金(モデル年金)」を公表しています。
- モデル年金の夫の老齢年金(令和5年度)
年額
438,860×0.956×0.005481×480
+795,000
=1,898,786円
月額
158,232円
438,860円は平均的とする賞与を含む平均報酬月額、0.956は令和5年度に採用された再評価率、0.005481は「本来水準」の年金額を算出する際の定数、795,000円は令和5年度の老齢基礎年金満額(新規裁定者)です。
この場合の夫の老齢年金を算出する計算式を逆算して、月額10万円~25万円の年金をもらうのに必要な年収を求めます。
年金 月額 | 年金 年額 | 内 報酬 比例額 | 平均 報酬 月額 | 年収 |
---|---|---|---|---|
10万 | 120万 | 40.5万 | 16.1万 | 193万 |
15万 | 180万 | 100.5万 | 40.0万 | 479万 |
20万 | 240万 | 160.5万 | 63.8万 | 766万 |
25万 | 300万 | 220.5万 | 87.7万 | 1052万 |
老齢基礎年金が一律に支給されるので、収入が多ければ多いほど年金額が抑えられる仕組みになっており、年金額で10万円と20万円で比較すると、年金を2倍するのに年収は約4倍も必要になります。
年金を月額20万円にするには年収766万円を40年間続ける必要があり、平均的な会社員にとってはなかなかハードルが高いと言わざるを得ません。
足りない分は健康を維持して働け?
番組では、仕事をして年金以外の収入を得ている方を紹介しています。
- 68歳男性 元会社員→リサイクルショップ就業
年金8万円+12万円 - 78歳女性 元会社員→パン店でパート
年金額11万円+3万円 - 68歳男性 元税務署勤務→税理士アルバイト
年金額20万円+10万円 - 80歳男性 元会社員→マンション管理人の代行
年金額20万円+?
年金額は個人個人で大きな差があります。
国民年金(基礎年金)だけ生活するのはたいへん難しいでしょう。
厚生年金を受給している人も、職歴により大きな差があります。
番組では「健康を維持して年取っても働けるような仕事や技術を見つけておく」としています。
安心した老後を過ごすためには、貯蓄、投資、個人年金などで、早い時期から老後の資金の手当てをしておく必要があります。
参考サイト
▼年金の疑問 徹底調査SP!(期間限定)