年金制度改革法成立2020年 在職老齢年金の見直し

北アルプス 黒部五郎岳厚生年金

新型コロナウイルスへの警戒が続いている中、5月29日「年金制度改革関連法」が成立しました。

今回の改革には以下のポイントがあります。

  1. パートなどの短時間労働者への厚生年金適用範囲の拡大
  2. 老齢年金の繰下げ受給を75歳まで拡大
  3. 65歳未満の在職老齢年金制度の減額基準の見直し
  4. 65歳以上で働く場合の老齢厚生年金を毎年再計算
  5. 個人型確定拠出年金「iDECO」が利用しやすく

この記事では、「3.在職老齢年金制度の減額基準の見直し」「4.老齢厚生年金の毎年再計算」について記事にします。

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65歳未満の在職老齢年金

会社員や公務員として収入を得ている人が、老齢厚生年金(報酬比例部分)の支給年齢になったとき、収入と年金額に応じて、年金の一部または全額が支給停止になります。

65歳未満の老齢厚生年金の支給開始年齢

本来の老齢厚生年金の支給開始年齢は65歳からになりますが、支給開始年齢を65歳に引き上げる経過的措置として、65歳未満の人に「特別支給の老齢厚生年金」が支給されます。

特別支給の老齢厚生年金とは、支給開始年齢は?繰下げできる?
老齢厚生年金は、本来は、老齢基礎年金に上乗せする形で65歳から支給されます。「特別支給の老齢厚生年金」は、支給開始年金を65歳に引き上げる際の移行措置として、65歳になるまでの間だ...

例えば、昭和32年4月2日~34年4月1日生まれの男性は63歳から支給開始になります。

仮に昭和33年(1958年)8月2日生まれの男性は令和3年(2021年)9月分から老齢厚生年金の報酬比例部分が支給開始になります。

在職老齢年金支給停止の判定金額

特別支給の老齢厚生年金の支給が始まったとき、会社員や公務員として在職し厚生年金に加入している場合、在職老齢年金制度の対象となり、収入額と年金額の合計額によって、年金の一部または全部が支給停止になる場合があります。

年金支給停止の判定は、収入(報酬月額)と年金額(基本月額)の合計金額により、月ごとに判定されます。65歳未満も65歳以降もこの判定金額を用います。

判定金額=報酬月額+基本月額
報酬月額:
標準報酬月額
+(その月以前1年間の標準賞与額)÷12
基本月額:
老齢厚生年金(報酬比例部分)の月額

65歳未満の場合の判定基準

◆現行

判定金額判定結果
28万円以下年金の支給停止なし
28万円超年金の一部または全部支給停止

◆改定案(2022年4月1日改定予定)

判定金額判定結果
47万円以下年金の支給停止なし
47万円超年金の一部または全部支給停止
現行 65歳未満在職老齢年金支給停止例

報酬月額47万円以下・基本月額28万円以下の場合、年金支給停止額は判定金額28万円を超えた金額の1/2になります。

年金支給停止額
=(報酬月額+基本月額-28万円)×1/2

例1>
報酬月額:24万円、
基本月額:8万円の場合

  • 年金支給停止額:
    (24万+8万-28万)×1/2=2万円
  • 年金支給額:6万円
  • 給与との合計額:30万円

例2>
報酬月額:30万円、
基本月額:10万円の場合

  • 年金支給停止額:
    (30万+10万-28万)×1/2=6万円
  • 年金支給額:4万円
  • 給与との合計額:34万円

今回の年金改定により判定金額が47万円になると、例1・例2いずれの場合も支給停止額が発生しないことになります。

65歳以降の在職老齢年金

65歳以降の在職老齢年金の支給停止基準額については、当初金額引き上げが検討されましたが、「高収入者に対する優遇だ」とする反対意見から、現行のまま47万円で据え置かれました。

判定金額判定結果
47万円以下年金の支給停止なし
47万円超年金の一部または全部支給停止

なお、老齢基礎年金は判定基準には関係しません。

65歳以上の在職者の老齢年金を毎年再計算

現行では、老齢厚生年金の報酬比例部分の金額は、以下のタイミングで、その前月までのすべての加入記録をもとに計算されます。

  1. 特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢に到達したとき
  2. 65歳までに退職して資格喪失したとき(退職時改定)
  3. 65歳時点で在職している場合は65歳になったとき(65歳裁定)
  4. 70歳までに退職して資格喪失したとき(退職時改定)
  5. 70歳になり厚生年金の資格を喪失したとき(70歳裁定)

特別支給の老齢厚生年金の支給額が確定すると、その後在職して厚生年金保険料を納付しても、それが年金額に反映されるのは「退職時改定」または「65歳裁定」になります。

また、65歳になってその時点で老齢厚生年金の支給額が確定すると、その後在職して厚生年金保険料を納付しても、それが年金額に反映されるのは「退職時改定」または「70歳改定」になります。

今回の制度改定では、65歳以降も在職している場合、2022年以降、毎年1回(10月)それまでの加入記録で年金額が再計算され、それまでに支払った保険料が年金額に反映され、老齢厚生年金(報酬比例部分)の支給額が積み上がっていくことになります。「在職定時改定」と言います。

ただし、65歳未満では、この「在職定時改定」は行われず、現行のままになります。

まとめ

65歳未満の在職老齢年金の支給停止基準額が47万円に引き上げられることによって恩恵を受けるのは、改定が施行される令和4年(2022年)4月の時点で在職しながら特別支給の老齢厚生年金を受給している以下の方々です。

  • 昭和36年(1961年)4月1日以前に生まれた男性
  • 昭和36年(1961年)4月1日以前に生まれた女性公務員・女性私学教職員(注)
  • 昭和41年(1966年)4月1日以前に生まれた女性一般会社員

(注)女性のうち旧共済組合員(国家公務員・地方公務員・私学教職員)は、特別支給の老齢厚生年金の開始年齢が男性と同一になっています。

上記の年月日より後に生まれた人は特別支給の老齢厚生年金の制度がなくなり65歳からの支給になるので、通常は今回の改定の恩恵にはあずかれませが、老齢年金を繰上げ受給する場合は、年金額は繰上げによる減額がありますが、新基準が利用できることになります。

また、昭和32年(1957年)4月までに生まれた人は、制度が施行される令和4年(2022年)4月の時点で65歳になるので、この恩恵にはあずかれないことになります。

2022年4月以降、支給停止基準額が47万円に引き上げられると、在職しながら特別支給の老齢厚生年金を受給している人の多くは、年金を減額することなく受け取れることになります。