厚生労働省から発表されている「年金事業年報」には、老齢厚生年金の受給額の平均値が記載されています。
令和元年12月に発表された平成30年度の年報では、厚生年金保険(第1号)受給者の老齢年金平均年金月額が145,865円となっています。
この年金額の算出根拠について詳しく調べてみました。
厚生年金保険の平均年金月額
厚労省「平成30年度厚生年金保険・国民年金事業の概要」からの抜粋です。
平均年金月額
平成30年度の老齢年金の平均年金月額は以下の通りです。
- 老齢年金 145,865円
- 基礎または定額あり 153,049円
- 基礎及び定額なし 69,095円
平均年金月額は以下の式で求めます。
- 平均年金月額
=受給者年金総額÷受給者数÷12
この3つの平均年金月額を厚労省のデータより算出します。
厚労省データ
算出に用いる実数は、「政府統計の総合窓口 e-Statホームページ 厚生年金保険・国民年金事業統計」より引用しています。
<引用データ>
平成30年度 厚生年金保険(第1号) 年金給付状況(受給者)
老齢年金 月額145,865円
ここでの「老齢年金」は以下の年金を指します。
- 旧法厚生年金保険の老齢年金
- 旧法船員年金の老齢年金
- 新法老齢厚生年金の老齢相当
被保険者期間が20~25年以上ある旧法老齢年金に相当する年金 - 旧法旧共済組合年金の退職年金
旧日本鉄道・旧日本たばこ産業・旧日本電信電話・旧農林漁業団体職員の各共済組合の退職年金 - 新法旧共済年金の退職年金相当
平成30年度の実数を厚労省データよりピックアップします。
- (A)老齢年金受給者総数
15,408,646人 - (B)老齢年金受給者年金総額
17,424,425,967千円
この年金総額は厚生年金部分の年金額です。
平均年金月額は新法厚生年金に併給される基礎年金額が含まれます。
- (C)新法厚生年金に併給される基礎年金
9,437,353,175千円 - (D)新法旧共済年金に併給される基礎年金
109,132,114千円
- (E)受給年金総額
=(B)+(C)+(D)
=26,970,911,256千円
- (F)平均年金額
=(E)÷(A)
=1,750,375円 - 平均年金月額
=(F)÷12
=145,865円
この老齢年金の平均年金月額145,865円は、旧法・新法の受給者をひっくるめて算出していることになります。
旧法と新法
年金法は昭和61年(1986年)4月1日に新法が施行されました。
旧法では、対象者の職域の違いなどから3種8制度に分立していましたが、新法では1階部分の制度が国民年金(基礎年金)として一元化され、被用者保険が上乗せ支給される2階建ての年金制度に再編成されました。
昭和61年(1986年)4月1日の前後で旧法・新法の適用が変わりました。
- 旧法:大正15年(1926年)4月1日以前誕生日の人
- 新法:大正15年(1926年)4月2日以降誕生日の人
1926年生まれの人は2020年に94歳になります。
基礎または定額あり 153,049円
前出の平均年金月額145,865円は旧法・新法ひっくるめている数値であるのに対し、この平均年金月額153,049円は新法厚生年金受給者の平均年金月額になります。
新法厚生年金第1号受給者のうち、25年以上の加入期間があり基礎年金を同時に受給している人、65歳前の特別支給の老齢厚生年金の定額部分(基礎年金相当)を受給している人のデータです。
長期で老齢厚生年金に加入して基礎年金も同時に受給している人の受給額を反映していると思われます。
- (A)受給者数 13,514,641人
- (B)厚生年金総額 15,383,469,848千円
- (C)基礎年金総額 9,437,353,175千円
- (D)受給年金総額
(B)+(C)=24,820,823,023千円 - (E)年金額
(D)÷(A)=1,836,588円 - 平均年金月額
(E)÷12=153,049円
厚生年金受給額の「基礎または定額あり」の平均年金月額が求まりました。
更に年金月額の内訳は以下の通りです。
- 厚生年金部分月額
(B)÷(A)÷12=94,857円 - 基礎年金部分月額
(C)÷(A)÷12=58,192円
基礎及び定額なし 月額69,095円
この平均年金月額69,095円は、新法厚生年金の受給者のうち、基礎年金を受給していない人、65歳前の特別支給の老齢厚生年金で定額部分(基礎年金相当)を受給していない人の平均年金月額になります。
特別支給の老齢年金の報酬比例部分を受給している人の平均年金月額を反映しているものと思われます。
- (A)受給者数 1,279,418人
- (B)厚生年金総額 1,060,811,180千円
- (C)年金額 (B)÷(A)=829,136円
- 平均年金月額 (C)÷12=69,095円
まとめ
平均年金月額で老齢厚生年金受給額の実情を最もよく表しているのは、平均年金月額153,049円になると思われます。
男女別に算出してみました
新法老齢厚生年金 平均年金月額
(基礎または定額あり・基礎年金含む)
- 男子 172,357円
- 基礎年金 112,684円
- 報酬比例 59,673円
- 女子 109,047円
- 基礎年金 54,229円
- 報酬比例 54,818円