繰下げ受給を検討、繰下げしている間は配偶者加給年金がもらえない…

南アルプス 白峰三山 繰上げ繰下げ
南アルプス 白峰三山

私は令和元年(2019年)8月で65歳になり、老齢年金の本来支給の権利が発生します。

最近とくに「繰下げ受給すると年金が増えてお得ですよ」という情報が聞こてきます。

これは、年金の支給開始年齢をなんとか引き上げて将来の年金の安定につなげたい政府の思惑が感じられます。

若い人には申し訳ないですが、将来的には年金の支給開始年齢の引き上げは避けて通れないのではないかと思います。

さて、65歳が差し迫った私はどうするか。結論は、タイトルにある通り「配偶者加給年金」がもらえなくなるので、厚生年金については繰下げ受給は考えられません。

この記事を書いた2019年6月時点では年金繰下げは70歳まででしたが、2020年5月に「年金制度改革法」成立し、2022年4月から、75歳まで繰り下げることができるようになりました。

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配偶者加給年金とは

厚生年金保険の加入期間が20年(240ヶ月)以上ある人が、65歳になり本来支給の老齢厚生年金の受給を開始するとき、その人に生計を維持されている65歳未満の配偶者がいるときに「配偶者加給年金」が加算されます。

さらに、受給者本人の生年月日に応じて、配偶者の加給年金額に33,200円~165,600円が特別加算されます。

ただし、配偶者が65歳未満であっても、配偶者が厚生年金に20年以上加入していて特別支給の老齢厚生年金の受給が始まると配偶者加給年金は支給停止になります。

加給年金と特別加算 2019年度

加給年金額 224,500円

受給権者の生年月日特別加算額合計支給額
昭和09/4/2~15/4/133,200257,700
昭和15/4/2~16/4/166,200290,700
昭和16/4/2~17/4/199,400323,900
昭和17/4/2~18/4/1132,500357,000
昭和18/4/2以後165,600390,100

私は配偶者加給年金が支給されます

私は昭和29年(1954年)生まれで、令和元年(2019年)8月で65歳になります。

その時点で妻は60歳
私の厚生年金加入期間は334ヶ月
妻の厚生年金加入期間は75ヶ月

妻は61歳から特別支給の老齢厚生年金を受給することになりますが、厚生年金の加入期間が20年に満たないので、妻が65歳になるまで、私の老齢厚生年金に年額約39万円の配偶者加給年金が加算されます。

妻が65歳になり、老齢基礎年金の支給が始まると私の老齢厚生年金の配偶者加給年金は停止され、妻の老齢基礎年金に「振替加算」という金額が加算されます。

妻の老齢基礎年金の振替加算は26,940円になります。

年金の繰下げ受給

(注)2022年4月より年金の繰下げ制度が改正され、下線部分に変更があります。赤枠の項を参照してください。

老齢基礎年金と老齢厚生年金はともに65歳から本来支給が始まります。

65歳になっても受給手続きをしなければ、いわば年金の受給を保留した状態になります。

1年以上待って66歳以降から繰下げ請求ができるようになり、繰下げ請求した時点から増額された支給が始まります。

増額されるのは70歳までの5年間だけで、それ以降に請求してもそれ以上の増額はありません。(この部分改定あり)

増額率は1ヶ月0.7%、1年8.4%、最大5年で42%になります。(この部分改定あり)

老齢厚生年金と老齢基礎年金をそれぞれに繰下げ時期を選択できます。老齢厚生年金は65歳から、老齢基礎年金は70歳からということもできます。

66歳以降に受給手続きをする際に、「繰下げによる増額請求」または「増額のない年金をさかのぼって受給」のどちらか一方を選択することができます。さかのぼって受給するときはそれまでの増額のない年金を一括で受給することができます。

70歳到達月より後に65歳時にさかのぼった請求をすると、5年時効により年金が支払われない部分が発生する可能性があります。ただし、実際には時効が適用されないようです。(この部分改定あり)

2020年5月に「年金制度改革法」が成立し、2022年4月から、最大10年間、75歳まで繰下げが可能になります。その場合は、0.7×120=84%増額されます。70歳を過ぎても、「繰下げによる増額請求」または「さかのぼって一括受給」のどちらか一方を選択することができます。さかのぼって一括受給する場合は、5年間さかのぼった時点の年金額を5年分受給することになります。例えば72歳で一括受給する場合は67歳まで繰下げた年金額(0.7×24=16.8%増額)を5年分一括で受け取り、その後は67歳まで繰下げた年金額を受け取ることになります。

繰下げ期間の配偶者加給年金は支給されません

配偶者加給年金を受給できる人が、繰下げ受給をした場合、繰下げ期間中の配偶者加給年金は支給されません。

また、配偶者加給年金については繰下げによる増額もありません。

ただし、「増額のない年金をさかのぼって受給」する場合は、さかのぼっての期間の配偶者加給年金が支給されます。

私の場合、報酬比例部分は約93万円、配偶者加給年金は約39万円、妻との年齢差は4年8ヶ月=4.67年になります。その条件で、繰下げ受給した場合の受け取り総額を試算しました。

私の厚生年金繰下げ受給金額

受給開始を1年繰下げするごとに報酬比例額は8.4%ずつ増額しますが、加給年金の受給期間が1年短くなります。

受給
開始
増加率報酬比例
額(円)
加給年金
期間
加給年金
総額(円)
65歳1.00093.0万4.67年182.0万
66歳1.084100.8万3.67年143.0万
67歳1.168108.6万2.67年104.0万
68歳1.252116.4万1.67年65.0万
69歳1.336124.2万0.67年26.0万
70歳1.420132.1万0.00年0.0万

私の厚生年金繰下げ受け取り総額

受給開始を67歳まで繰下げた場合の80歳までの年金総額は以下の通りになります。

  • 報酬比例額:年額108.6万円
  • 加給年金総額:104万円
  • 80歳までの年金総額
    108.6万×13年+104万
    1,515.8万円
受給
開始
70歳
まで
75歳
まで
80歳
まで
85歳
まで
65歳647万1,112万1,577万2,042万
66歳546万1,050万1,554万2,058万
67歳430万973万1,516万2,059万
68歳298万880万1,462万2,044万
69歳150万771万1,393万2,014万
70歳0万660万1,321万1,981万

配偶者加給年金を放棄してまで厚生年金を繰下げ受給するメリットはないようです。

基礎年金の繰下げ受給はどうするか…

老齢厚生年金と老齢基礎年金はそれぞれに繰下げ時期を選択できます。

老齢厚生年金は繰下げ受給をするメリットがほとんどありませんが、老齢基礎年金だけ繰下げ受給するという方法も考えられます。

老齢基礎年金の満額は780,100円ですが、私の場合は 付加年金を含めて約75.2万円程度になります。

繰下げする場合は付加年金も含めて増額されます。

私の基礎年金の繰下げ受給金額

受給開始増額率基礎年金額(円)
65歳1.00075.2万
66歳1.08481.5万
67歳1.16887.8万
68歳1.25294.2万
69歳1.336100.5万
70歳1.420106.8万

私の基礎年金受け取り総額

受給
開始
70歳
まで
75歳
まで
80歳
まで
85歳
まで
65歳376万752万1,128万1,504万
66歳326万734万1,141万1,549万
67歳264万703万1,142万1,581万
68歳188万659万1,130万1,601万
69歳100万603万1,105万1,607万
70歳0万534万1,068万1,602万

基礎年金の繰下げ受給では受給開始から約11.9年で取り返すことができます

基礎年金額をA円、X年繰下げるとすると

  • 繰下げた部分のA×X(円)がもらえない
  • 年金はA×0.084×X(円)増額される
  • (A×X)÷(A×0.084×X)
    =1÷0.084
    =11.9

繰下げ受給を始めてから約12年で取り返せることになります

  • 受給開始66歳→78歳
  • 受給開始67歳→79歳
  • 受給開始70歳→82歳

私の場合、仮に70歳から受給開始したとすると、

  • 75.2×0.42=31.6万円増額される
  • 82歳でもらわなかった5年分を取り返せる
  • その後1年に31.6万円ずつ得する

ということになります。

まとめ

老齢厚生年金と老齢基礎年金は別々に繰下げ受給することができます。

私の場合、配偶者加給年金が受給できるので老齢厚生年金の繰下げ受給のメリットはありません。

老齢基礎年金の繰下げ受給は、受給開始から約12年で繰下げた期間の年金額を取り返すことができます。考えどころです…。たぶん繰下げしないかな…。

結局、老齢厚生年金も老齢基礎年金も繰り下げせず、65歳から受給を開始しました。今後、妻が65歳になるとき老齢基礎年金を繰下げするかどうかを検討することになります。