40歳になると「介護保険第2号被保険者」として、介護保険料の納付が始まります。
会社員などは給与からの天引きで、個人事業主などは国民健康保険料に含まれて徴収されます。
65歳になると介護保険の資格が第2号から第1号に変わり、個人単位で介護保険料を納付することになり、原則、公的年金からの天引き…特別徴収…となります。
65歳からの介護保険についてまとめました。
介護保険被保険者1号2号とは
65歳以上の人は「介護保険第1号被保険者」、40歳以上65歳未満の人は「介護保険第2号被保険者」と定められています。
第1号被保険者…65歳以上の人
原因を問わず、要介護あるいは要支援状態と認定されると介護サービスを受けられます。
第2号被保険者…40歳以上65歳未満の人
加齢を原因とする特定疾病により介護が必要と認定された場合に限り介護サービスを受けられます。
第2号被保険者(40歳~64歳)の介護保険料
40歳以上65歳未満の第2号被保険者の介護保険料は以下の通り納付します。
被用者健康保険に加入している人
給与の標準報酬月額や標準賞与額に介護保険料率を乗じて算出し、事業主と折半して給与・賞与から天引きされます。例えば「協会けんぽ」の場合の介護保険料率は1.82%(令和3年3月~)です。この金額の1/2が本人負担分として給与から天引きされます。「協会けんぽ」の健康保険料率は9.33%~10.51%(2023年度)で都道府県ごとに定められていますが、介護保険料率は全国一律です。
国民健康保険に加入している人
国民健康保険料は医療分・高齢者医療支援分・介護保険分の合計金額になっており、介護保険料は国民健康保険に含まれて徴収されています。市区町村ごとに算出式が定められていて、世帯単位の支払いになります。
国民健康保険については下記へ
第1号被保険者の介護保険料
65歳になり第1号被保険者に変わると介護保険料は個人単位の徴収になります。
被用者健康保険・国民健康保険から分離され、原則、年金からの天引きになり市町村に保険料を納付します。(特別徴収)
特別徴収の対象者
- 当該年の4月1日現在において、65歳以上であること。
- 当該年の4月1日現在において、特別徴収の対象の年金額が年額18万円以上であること。
介護保険料の徴収は65歳になったその月から始まりますが、特別徴収が始まるまでは納付書により納付します。年金の繰下げなどで年金を受給していない場合も納付書による納付になります。(普通徴収)
介護保険料の算定方法
65歳以上の介護保険料は、市区町村ごとに基準額と保険料段階を定めて決定します。
基準額と保険料段階は市区町村内の介護サービスにかかる費用と市区町村ごとの事情により定められています。
保険料段階は住民税の課税・非課税と本人の所得によリ10数段階に分けられており、基準額に保険料段階の倍率を乗じて段階ごとの介護保険料を決定します。
基準額と保険料段階は3年ごとに改定が行われます。
保険料基準額と保険料段階の例
保険料基準額月額(2021~2023年度)
- 全国平均:6,014円
- 最低額 :3,300円(北海道 音威子府村)
- 最高額 :9,800円(東京都 青ヶ島村)
▼基準額と保険料段階の例(2021~2023年度)
市区町村 | 標準額 年額(円) | 標準額 月額(円) | 保険料 段階 | 倍率 |
---|---|---|---|---|
札幌市 | 69,270 | 5,773 | 13 | 0.3 ~2.3 |
世田谷区 | 74,160 | 6,180 | 17 | 0.3 ~4.2 |
名古屋市 | 79,709 | 6,642 | 15 | 0.25 ~2.5 |
大阪市 | 97,128 | 8,094 | 15 | 0.35 ~2.3 |
福岡市 | 74,699 | 6,225 | 13 | 0.25 ~2.5 |
段階ごとの保険料の例<札幌市>
上記の表から札幌市の保険料段階と段階ごとの保険料を例示します。第5段階が標準額になっています。
▼札幌市の保険料段階(2021~2023年度)
段階 | 料率 | 保険料 年額 (円) | 保険料 月額 (円) |
---|---|---|---|
第1段階 | 0.30 | 20,781 | 1,732 |
第2段階 | 0.50 | 34,635 | 2,886 |
第3段階 | 0.70 | 48,489 | 4,041 |
第4段階 | 0.90 | 62,343 | 5,195 |
第5段階 | 1.00 | 69,270 | 5,773 |
第6段階 | 1.15 | 79,661 | 6,638 |
第7段階 | 1.25 | 86,588 | 7,216 |
第8段階 | 1.50 | 103,905 | 8,659 |
第9段階 | 1.75 | 121,223 | 10,102 |
第10段階 | 2.00 | 138,540 | 11,545 |
第11段階 | 2.10 | 145,467 | 12,122 |
第12段階 | 2.20 | 152,394 | 12,700 |
第13段階 | 2.30 | 159,321 | 13,277 |
段階ごとの基準<札幌市の例(一部)>
▼札幌市の保険料段階(2021~2023年度)
段階 | 市民税 | 前年の収入と所得 |
---|---|---|
第1 | 世帯全員 非課税 | 本人の年金収入と 年金以外の所得の合計が 80万円以下 |
第2 | 世帯全員 非課税 | 本人の年金収入と 年金以外の所得の合計が 80万円超 120万円以下 |
第3 | 世帯全員 非課税 | 本人の年金収入と 年金以外の所得の合計が 120万円超 |
第4 | 本人非課税 誰かが課税 | 本人の年金収入と 年金以外の所得の合計が 80万円以下 |
第5 | 本人非課税 誰かが課税 | 本人の年金収入と 年金以外の所得の合計が 80万円超 |
第6 | 本人が課税 | 合計所得金額が 125万円未満 |
第7 | 本人が課税 | 合計所得金額が 125万円以上 200万円未満 |
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- 第1段階には、生活保護を受給している人、中国残留邦人等の方々のための支援給付を受けている人、老齢福祉年金受給者で世帯全員が市町村民税非課税の人を含む
- 公的年金等の収入金額には、遺族年金や障害年金などの非課税年金は含まれない。
- 合計所得金額とは、収入から必要経費相当額を差し引いた所得控除前の所得を合計したもの。
- 事業所得=収入-必要経費
- 給与所得=収入-給与所得控除
- 年金所得=公的年金収入-公的年金控除
介護保険料の試算例
札幌市の介護保険料が、住民税非課税・課税でどのように変わるかを試算します。
- 夫婦二人世帯
- 二人とも65歳以上
- 収入は公的年金のみ
- 年金以外の所得はなし
この場合、夫の公的年金収入が211万円以下、妻の年金が155万円以下なら、二人とも住民税が非課税になります。
(A) 年金額 夫:211万円、妻:80万円
夫婦とも住民税非課税になります。
- 夫:第3段階 48,489円
- 妻:第1段階 20,781円
(B) 年金額 夫:212万円、妻:80万円
夫は住民税課税、妻は非課税になります。夫の所得は公的年金控除110万円を引いて102万円です。
- 夫:第6段階 79,661円
- 妻:第4段階 62,343円
年金211万円の壁
夫の年金が211万円のときと212万円で、介護保険を比較すると以下のようになります。
夫の保険料 | 妻の保険料 | 合計保険料 | |
---|---|---|---|
(A) | 48,489 | 20,781 | 69,270 |
(B) | 79,661 | 62,343 | 142,004 |
差額 | 31,172 | 41,562 | 72,734 |
夫の年金収入が211万円から1万円増えると、夫の介護保険料が年額で約31,000円も増えてしまい、手取りで約21,000円減ってしまいます。
更に、夫が住民税課税になることにより、妻の保険料も約41,000円も増えてしまいます。
夫婦合わせて介護保険料が約73,000円増えてしまいます。
これがいわゆる「年金211万円の壁」です。
私の場合は…
私は、2019年8月で65歳になり、9月分より老齢基礎年金と老齢厚生年金の本来支給が始まりました。
年金額は老齢基礎年金・報酬比例部分・配偶者加給を合計して年額206万円~207万円程度になります。
私も妻も住民税が非課税で、住民税非課税世帯になります。
札幌市の保険料段階に当てはめると私は「第3段階」になります。
私の住んでいる自治体の基準額は67,000円程度で、同じく「第3段階」ですが倍率は0.65倍になっており、私の介護保険料は44,000円程度になっています。
妻は65歳未満で国民健康保険の介護分を納付しています。