令和5年度の老齢年金の年金額は、昭和30年度(1955年度)以前生まれと昭和31年度(1956年度)以降生まれで、過去の保険料納付履歴が同じであっても年金額に違いが生じることになりました。
老齢基礎年金の満額で比較すると、令和5年度の場合、昭和30年度以前に生まれた人は792,600円、昭和31年度以降に生まれた人は795,000円になります。
新既裁定年金と既裁定年金
老齢年金は、通常、65歳の誕生日の前日が「受給資格付与日」となり、その翌月分から支給開始となります。例えば、誕生日が5月10日の場合、6月分から支給開始となります。
その後、67歳になる年度の年度末まで支給される年金を新規裁定年金、68歳になる年度から支給される年金を既裁定年金といいます。
昭和30年度(1955年度)に生まれた人は、令和5年度(2023年度)に68歳になるので、令和5年度から既裁定年金になります。
昭和31年度(1956年度)以降生まれで年金を受け取る人は、新規裁定年金ということになります。
令和5年度、この既裁定年金と新既裁定年金に違いが生じることになりました。
令和5年度改定率、新既裁定年金+2.2%、既裁定年金+1.9%
年金額改定のルールとして、原則、新規裁定年金は賃金変動率ベースで、既裁定年金は物価変動率ベースで改定されます。
ただし、賃金変動率が物価変動率を下回る場合は、現役世代の負担を考慮して、既裁定年金も賃金変動率ベースで改定されることになります。
令和4年度までは、賃金変動率が物価変動率を下回り、両裁定年金とも賃金変動率ベースで改定されてきましたが、令和5年度は、賃金変動率が物価変動率を上回り、原則にしたがって改定されることになりました。
また、令和5年度はマクロ経済スライド調整も適用されました。
- 令和5年度の参考指標
物価変動率 +2.5%
賃金変動率 +2.8%
マクロ経済スライド調整率 -0.6%
- 既裁定年金 +1.9%
物価(+2.5%)+調整(-0.6%) - 新規裁定年金 +2.2%
賃金(+2.8%)+調整(-0.6%)
基礎年金は満額に違いが…
老齢年金の1階部分に当たる老齢基礎年金は、20歳から60歳になるまでの40年間、国民年金や厚生年金に加入することによって、満額を受け取ることができます。
令和5年度は、この満額の金額に違いが生じることになります。
▼令和5年度 老齢基礎年金満額(年額)
- 既裁定年金 792,600円
- 新規裁定年金 795,000円
厚生年金は再評価率に違いが…
老齢年金の2階部分にあたる厚生年金の報酬比例部分は、加入期間中の標準報酬額をもとに算出します。
その際、過去の標準報酬額に報酬年度ごとに定めた再評価率を乗じて、平均標準報酬額を算出します。
この再評価率には、手取り賃金の上昇率やマクロ経済スライド調整が織り込まれています。
令和4年度の再評価率は、既裁定年金と新既裁定年金で同率に定められていましたが、令和5年度は、改定率の違いにより異なる数値になりました。
▼令和4年度再評価率(一部)
誕生年度→ ↓ 報酬年度 | 昭和13~29年度 (既裁定者) | 昭和30年度~ (新規裁定者) |
平成10年度 | 0.966 | 0.966 |
平成11年度 | 0.965 | 0.965 |
平成12年度 | 0.965 | 0.965 |
平成13年度 | 0.964 | 0.964 |
平成14年度 | 0.970 | 0.970 |
▼令和5年度再評価率(一部)
誕生年度→ ↓ 報酬年度 | 昭和13~30年度 (既裁定者) | 昭和31年度~ (新規裁定者) |
平成10年度 | 0.984 | 0.987 |
平成11年度 | 0.983 | 0.986 |
平成12年度 | 0.983 | 0.986 |
平成13年度 | 0.982 | 0.985 |
平成14年度 | 0.988 | 0.991 |
- 既裁定者の再評価率
平成10年度 0.966×1.019=0.984
平成11年度 0.965×1.019=0.983
︙ - 新規裁定者の再評価率
平成10年度 0.966×1.022=0.987
平成11年度 0.965×1.022=0.986
︙
既裁定年金の場合、すべての報酬年度の再評価率が昨年度の+1.9%になっています。
いっぽう、新規裁定年金の場合、すべての報酬年度の再評価率が昨年度の+2.2%になっています。
結果、過去の標準報酬額の履歴が同じであっても、厚生年金の報酬比例部分に、0.3%程度の差が生じることになります。
参考リンク
日本年金機構 年金額の計算に用いる数値
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/kyotsu/nenkingaku/20150401-01.html