75歳になると、健康保険組合、国民健康保険等の医療保険から抜けて、個人で「後期高齢者医療制度」に加入することになります。
これまで75歳以上の窓口負担は原則1割でしたが、一定の収入がある人は2割になる改正が行われます。
今回の改正についてまとめてみました。
現行の高齢者医療制度
現行の窓口負担
75歳以上の人全員が加入する後期高齢者医療制度の窓口負担は、現役並所得者を除き原則1割です。(令和3年度現在)
年齢 | 医療制度 | 窓口負担 |
---|---|---|
70歳未満 | 健康保険組合 国民健康保険 | 3割 |
70歳以上 75歳未満 | 健康保険組合 国民健康保険 | 原則2割 現役並所得者:3割 |
75歳以上 | 後期高齢者医療制度 | 原則1割 現役並所得者:3割 |
現役並み所得者
住民税課税所得額が145万円以上の被保険者およびこの人と同じ世帯に属する被保険者は、すべて現役並み所得者として3割負担となります。
ただし、税法上の控除の関係から、収入額が少ないにもかかわらず、課税所得が145万円以上となるケースがあることから、課税所得だけでなく収入による判定も行い、次の要件に該当する場合は、申請し認定を受けると、申請した月の翌月から1割負担となります。
- 世帯に後期高齢者が1人で、収入額が383万円未満の場合
- 世帯に後期高齢者が2人以上で、収入額の合計が520万円未満の場合
- 世帯に後期高齢者が1人で、ほかに70歳以上75歳未満の人がいて、収入額の合計が520万円未満の場合
厚労省の資料によると、令和2年7月時点、後期高齢者1815万人のうち、現役並み所得者は130万人、約7%になるとのこと。現行制度では、残りの93%の後期高齢者は窓口負担が1割ということになります。
第137回 医療保険部会資料(全体版)[PDF形式:12.5MB]
⾼額療養費⾃⼰負担限度額
同一月内の医療費が高額になったときは、申請により自己負担限度額を超えた分が高額療養費として、後日、支給されます。
以下は、後期高齢者の現役並所得者以外の人の自己負担限度額です。
区分・基準 現役並所得者以外 | 外来 個人単位 同一月内 | 外来+入院 世帯単位 同一月内 |
---|---|---|
一般 | 18,000円 (注1) | 57,600円 (注2) |
低所得者Ⅱ 世帯全員が住民税非課税 年収約80万円超 | 8,000円 | 24,600円 |
低所得者Ⅰ 世帯全員が住民税非課税 年収約80万円以下 | 8,000円 | 15,000円 |
(注1)年間上限144,000円
(注2)過去12ヶ月に4回以上57,600円を超えた場合4回目以降は44,400円
例えば「一般」の人の場合、ある月に外来診療で20,000円の支払いがあった場合、自己負担限度額が18,000円なので、申請により2,000円を払い戻してもらえることになります。
高額療養費の申請を行い支給を受けると、以後の申請は不要です。高額療養費が発生した場合には、最初の申請で登録した口座へ振込みになります。
改正後の後期高齢者医療制度
今回の改正により、これまで窓口負担1割の人のうち、一定以上の収入がある人は窓口負担が2割になります。
施行時期は令和4年10月から令和5年3月の間としており、今後政令で定めることになります。
窓口負担が2割になる所得基準
現役並所得者に該当しない人のうち、住民税課税所得額が28万円以上の被保険者およびこの人と同じ世帯に属する被保険者は2割負担となります。
ただし、2割負担と判定された場合でも、次の要件に該当する場合は、1割負担となります。
- 世帯に後期高齢者が1人で、収入額が200万円未満の場合
- 世帯に後期高齢者が2人以上で、収入額の合計が320万円未満の場合
- 世帯に後期高齢者が1人で、ほかに70歳以上75歳未満の人がいて、収入額の合計が320万円未満の場合
配慮措置については
急激な負担増を抑制するため、2割負担になる者の外来受診の負担増加額が最大でも月3,000円に収まる措置が講じられます。
例えば、総医療費50,000円の場合、配慮措置として8,000円の自己負担になります。
- 1割負担 50,000×0.1=5,000円
- 2割負担 50,000×0.2=10,000円
- 配慮措置 50,000×0.1+3,000=8,000円
この配慮措置は、施行後3年間の経過措置になります。
また、高額医療費自己負担限度額は18,000円で維持されます。
総医療費 | 自己負担額 改正前 | 自己負担額 改正後 |
---|---|---|
10,000円 | 1,000円 | 2,000円 |
20,000円 | 2,000円 | 4,000円 |
30,000円 | 3,000円 | 6,000円 |
40,000円 | 4,000円 | 7,000円 |
50,000円 | 5,000円 | 8,000円 |
100,000円 | 10,000円 | 13,000円 |
150,000円 | 15,000円 | 18,000円 |
180,000円 | 18,000円 | 18,000円 |
父の医療費について
私の父は後期高齢者で年金収入が200万円以上あります。
現在の自己負担割合は1割ですが、今回の改正で2割になります。
父は在宅酸素療法を受けており、令和3年5月の医療費は自己負担額が約13,000円でした。
これが改正後の配慮措置では約16,000円ということになります。
年間144,000円という上限もあるので、この負担が1年続けば、そちらが適用されることになるかもしれません。
私の場合は…
私が75歳、妻が70歳になると
私は令和3年6月現在67歳で妻は5歳年下です。私が75歳になると妻は70歳になります。
私は後期高齢者医療保険、妻は国民健康保険ということになります。
二人の年金を合計しても320万円にならないので、「世帯に後期高齢者が1人で、ほかに70歳以上75歳未満の人がいて、収入額の合計が320万円未満の場合」にあたり、私の自己負担割合は1割になります。
70歳以上74歳以下の国民健康保険の現役並所得者以外の人の自己負担割合は2割なので、妻の自己負担割合は2割ということになります。
二人とも75歳以上になると
二人とも75歳以上になると、ともに後期高齢者医療保険になり「世帯に後期高齢者が2人以上で、収入額の合計が320万円未満の場合」にあたり、私も妻も自己負担割合は1割になると思われます。
外来の自己負担限度額については、妻も私も住民税非課税で「低所得者Ⅱ」に相当し、1ヵ月8,000円ということになると思われます。
それまで制度に変更がなければということですが…。