長生きリスクに備える第一の方法はなんと言っても「年金」です。
国民年金の任意加入制度を利用すると60歳を過ぎてからでも年金を増やすことができます。
この任意加入制度について記事にします。
任意加入制度
日本に住む20歳以上60歳未満のすべての人は国民年金制度に加入する義務があります。
老齢基礎年金はこの40年間(480ヵ月)に保険料を納付した月数によってが年金額が決定します。
◆老齢基礎年金額
=老齢基礎年金満額×納付済月数/480
(令和3年度満額:780,900円)
任意加入制度を利用すると、60歳を過ぎて納付済月数を増やすことができます。
ただし、納付済月数は最大480ヵ月になります。
国民年金1号・2号・3号
自営業者などは国民年金1号として国民年金保険料を支払います。60歳以降1号資格はなくなり支払う義務はありませんが、任意加入して納付することができます。
会社員は国民年金2号として厚生年金保険料を支払います。60歳以降は、65歳までは2号資格が継続しますが老齢基礎年金の納付済月数には算入されません。ただし、老齢厚生年金の「経過的加算」で基礎年金相当額が加算されます。厚生年金に加入している場合は任意加入はできません。
国民年金2号である会社員・公務員の配偶者で一定の収入以下の人は、配偶者自身で保険料は納付しませんが国民年金3号として納付済月数がカウントされます。その配偶者自身が60歳になると3号資格を喪失し納付済月数がカウントされなくなります。60歳以降は任意加入制度を利用できます。
国民年金1号だった人、国民年金3号だった人は、任意加入制度を利用して、60歳以降に納付済月数を増やすことができます。
老齢厚生年金の「経過的加算」については以下の記事をご覧ください。
保険料納付済期間とは
保険料納付済期間とは以下の期間の合計月数になります。最大480ヵ月までカウントされます。
- 1号…国民年金保険料納付月数
- 2号…厚生年金加入月数
(20歳以上60歳未満の期間) - 3号としての月数
国民年金1号期間中に申請して認定された「保険料免除期間」も一定の割合で納付済月数に算入されます。例えば全額免除期間は、免除月数の1/2の月数が納付済月数に算入されます。ただし、学生納付特例期間・若年者納付猶予期間は納付済月数には算入されません。
受給資格期間
受給資格期間とは、老齢基礎年金・老齢厚生年金を受給するために必要な期間です。
保険料納付済期間に加え、保険料免除期間、学生納付特例期間、若年者納付猶予期間などを加えた期間などを合計します。
平成29年8月1日からは受給資格期間が25年から10年に短縮されました。
この受給資格期間を満たさない場合は、老齢基礎年金はもちろん老齢厚生年金も受給できません。
任意加入制度の損得
結論から言って、任意加入制度は60歳時点で保険料納付済月数が480ヶ月に満たない場合、保険料を納付する余裕があれば、ぜひ利用したい制度です。
75歳でモトがとれます
令和3年度の金額でモトがとれる期間を計算します、
- 国民年金保険料(月額):16,610円
- 老齢基礎年金満額(年額):780,900円
納付済月数480ヵ月で満額780,900円支給されるので、保険料1ヵ月に相当する年金額は、780,900÷480=1,627円になります。
保険料1ヵ月分16,610円を年金として取り戻す年数は、16,610÷1,627=10.2年かかることになります。
65歳から受給開始して約10年、75歳まで受け取ればモトが取れることになります。
ちなみに、令和元年簡易生命表の平均余命から算出した65歳の平均寿命は、男性84.8歳、女性89.6歳となっています。
加入月数が480ヵ月に足りない場合は、ぜひ利用したい制度です。
付加年金保険料も上乗せ納付しよう
国民年金第1号被保険者ならびに任意加入被保険者は、国民年金保険料に付加保険料を上乗せして納めることで年金額を増やすことができます。
月々400円を保険料に上乗せ納付することで、年金額は年額「200円×付加保険料納付月数」だけ増えることになります。
何年でモトが取れるか計算します。
- 付加保険料 Aヵ月納付
- 保険料合計 400×A(円)
- 年金額 200×A(円)
- (400×A)÷(200×A)=2年
納付した保険料を2年で取り返すことができます。大変お得な制度です。
任意加入 対象者・手続き
対象者
以下のすべてに当てはまる人
- 日本国内に住所を有する60歳以上65歳未満の人
- 老齢基礎年金の繰上げ支給を受けていない人
- 20歳以上60歳未満までの保険料の納付月数が480月未満の人
- 厚生年金保険、共済組合等に加入していない人
手続き
- 市区役所・町村役場の国民年金担当窓口または年金事務所で手続き
- 申し込みした月からの加入となり遡って加入することはできない
- 口座振替が原則
- 国民年金保険料の前納制度も利用できる
わたし自身は…
わたし自身は、20歳になってから6年間ほど国民年金未納の期間がありました。当時は未納通知もなかったように思います。
その後、会社員になり厚生年金に加入し、50代後半で退職して「1号」になり、国民年金保険料を納付していました。
60歳で国民年金保険料を納付する必要がなくなりましたが、年金定期便などで老齢基礎年金が満額に遠いことに気づきました。このとき、任意加入制度があることを知って、あわてて手続きしました。
任意加入制度を利用して、なんとか基礎年金保険料を満額に近づけることができました。
60歳過ぎて国民年金保険料を納付する余裕があるようならばぜひ利用したい制度です。