令和元年6月、父の「平成31年度 市民税・県民税 税額決定・納税通知書」が届きました。
父は90歳代後半、配偶者・扶養親族なし、収入は厚生年金と恩給という状況です。
年金生活者の住民税がどのように決定されるのか見ていきたいと思います。
収入は厚生年金と恩給
収入は老齢厚生年金と軍人恩給になります。
平成30年度
老齢厚生年金:2,410,750
軍人恩給 : 568,400
合計 :2,979,150
所得を求めます
公的年金の収入は「公的年金等控除」を差し引いて「所得(雑所得)」とします。
父の収入の場合、公的年金控除は120万円になります。
所得(雑所得)
=公的年金収入-公的年金等控除
=2,979,150-1,200,000
=1,779,150
▽年金収入による公的年金等控除額
公的年金等の収入額 | 公的年金等控除額 |
---|---|
120万円まで | 税額0円 |
120万円超 330万円未満 | 120万円 |
330万円以上 410万円未満 | 収入金額×0.25+37.5万円 |
410万円以上 770万円未満 | 収入金額×0.15+78.5万円 |
770万円以上 | 収入金額×0.05+155.5万円 |
課税標準額を求めます
所得から様々な所得控除を差し引いて課税標準額とします。
所得控除には、基礎控除、配偶者控除、扶養控除、社会保険料控除、医療費控除、生命保険料控除など様々ですが、父の場合は基礎控除と社会保険料控除のみになります。
基礎控除 :330,000
介護保険料 : 92,700
後期高齢者医療保険料:167,300
所得控除額合計 :590,000
課税標準額
=1,779,150-590,000
=1,189,150
ただし、「1,000円未満の端数切り捨て」という決まりがあります。
課税標準額
=1,189,000
住民税の計算ルール
市民税
均等割:3,500円
所得割:課税標準額×8%-税額控除額
県民税
均等割:2,000円
所得割:課税標準額×2%-税額控除額
均等割の標準税額は市町村民税3,500円、都道府県民税1,500円ですが、環境目的などを目的に標準税率を超えて課税する超過課税を行なっている自治体も増えてきました。父のいる自治体は県民税が超過課税になっています。また、所得割の税率も通常6%・4%ですが、8%・2%になっています。
住民税合計
均等割:5,500円
所得割:課税標準額×10%-税額控除額
調整控除
調整控除は税額控除のひとつで所得割から直接控除されます。
平成19年度に実施された国から地方への税源移譲に伴い、所得税の一部が住民税に移されました。
ところが、所得税と住民税では基礎控除・配偶者控除などの人的控除が異なるため、変更後の税率をそのまま適用すると、所得税と住民税を合わせた税額が税源移譲前より増加する場合があります。
税源移譲の一例
課税所得(課税標準額):100万円
所得税基礎控除額:38万円
住民税基礎控除額:33万円
移譲前:所得税10%・住民税5%
所得税:(100万-38万)×10%=62,000円
住民税:(100万-33万)×5%=33,500円
税額合計:95,500円
移譲後:所得税5%・住民税10%
所得税:(100万-38万)×5%=31,000円
住民税:(100万-33万)×10%=67,000円
税額合計:98,000円
税額差額:2,500円
この金額は、所得税と住民税の基礎控除額の差額5万円に移譲された税率5%をかけて算出されます。課税所得100万円には直接関係ありません。
税額差額:人的控除額の差額×移譲された税率
この税額差額は、基礎控除・配偶者控除・扶養控除などの人的控除額の差額の合計額に応じて、「調整控除」として所得割額から差し引き、税額が増えることのないよう調整します。
調整控除のルール(一部)
市・県民税の合計課税所得金額が200万円以下の人
次の(1)と(2)のいずれか少ない金額の5%
(市民税4%、県民税1%)
(1)人的控除額の差額の合計金額
(2)市・県民税の合計課税所得金額
父の場合の調整控除
父の場合の人的控除額は基礎控除だけなので、調整控除額は以下のとおりです。
市民税の調整控除
=(38万-33万)×4%
=2,000円
県民税の調整控除
=(38万-33万)×1%
=500円
父の場合の住民税
公的年金収入=2,979,150円
公的年金控除=1,200,000円
公的年金所得(雑所得)=1,779,150円
所得控除=590,000円
課税標準額=1,189,150円
課税標準額(端数処理)=1,189,000円
市民税と県民税は別々に計算します。
市民税
調整控除
=2,000円
所得割
=1,189,000×8%-2,000
=95,120-2,000
=93,120
100円未満切り捨て
=93,100円
均等割
=3,500円
市民税
=96,600円
県民税
調整控除
=500円
所得割
=1,189,000×2%-500
=23,780-500
=23,280
100円未満切り捨て
=23,200円
均等割
=2,000
県民税
=25,200円
住民税
市民税+県民税
=96,600+25,200
=121,800円
公的年金からの特別徴収
65歳以降の住民税は公的年金の支払い時に支給額から天引き徴収されます。
4・6・8月は前年度の住民税の1/6に相当する金額が仮徴収されます。10・12・2月は残額の1/3ずつが徴収されます。
まとめ
住民税課税標準額
=年金収入-年金控除-所得控除
住民税
=所得割+均等割
父の住んでる自治体
所得割=課税標準額×10%-調整控除
均等割=5,500円