65歳からどうなる?年金受給者の住民税非課税211万円の壁とは【2025年4月改定】

南アルプス空木岳駒峰ヒュッテ 所得税・住民税
南アルプス空木岳駒峰ヒュッテ

65歳からの年金収入には「211万円の壁」があります。

夫婦2人世帯で夫の年金が211万円以下なら個人住民税が非課税になります。

さらに妻も非課税なら住民税非課税世帯となり、様々なメリットがあります。

私自身も夫婦2人世帯で私の年金収入が211万円以下なので、様々なメリットを受けることができています。

この「211万円の壁」について詳しく調べました。

スポンサーリンク

「211万円の壁」とは

次の条件を満たす場合、夫の個人住民税が非課税になります。

  • 夫婦二人世帯
  • 夫は65歳以上
  • 夫の公的年金が年額211万円以下

さらに妻の個人住民税が非課税であれば「住民税非課税世帯」ということになり、様々なメリットを受けることができます。

ただし、級地制度により住民税の非課税基準が異なるので注意が必要です。

個人住民税の仕組み

個人住民税は個人にかかる税金で、一人ひとりの収入で算出します。

都道府県民税と市区町村民税の合計金額で、1人当たり一定額の均等割と所得に比例する所得割を合計します。

  • 個人住民税=均等割+所得割
    • 均等割 標準税額:5,000円
    • 所得割 標準税率:10%
      税額・税率は自治体によって異なる場合があります

個人住民税の詳細は以下のサイトをご覧ください。

65歳からどうなる?年金受給者の個人住民税【2025年5月改定】
各年度の個人住民税は、個人ごとの前年1年間の収入により、6月に決定し通知されます。65歳からの年金受給者の個人住民税の算出方法、徴収方法などを確認しました。個人住民税の課税の仕組み...

個人住民税の非課税基準

住民税の所得割を課税する場合は所得から基礎控除、配偶者控除などの所得控除を差し引いた「課税標準額」を用います。

いっぽう、住民税の非課税は所得控除を引く前の「所得」で判断し、年金収入の場合は公的年金等控除を差し引いた年金所得で判断します。

  • 事業所得=総収入-必要経費
  • 給与所得=給与収入-給与所得控除
  • 年金所得=年金収入-公的年金等控除

年金収入330万円以下の場合の公的年金等控除は、65歳未満:60万円、 65歳以上:110万円です。

均等割・所得割 それぞれの非課税基準

「均等割」と「所得割」のそれぞれに非課税になる基準があります。

均等割 非課税上限所得

配偶者
扶養親族
均等割非課税上限所得
なし45万円
あり35万円×世帯人数+31万円

所得割 非課税上限所得

配偶者
扶養親族
所得割非課税上限所得
なし45万円
あり35万円×世帯人数+42万円

均等割非課税上限所得の方が低いので、所得が均等割非課税上限所得以下の場合に住民税非課税となります。

住民税が非課税になる年金額

公的年金等控除額は「65歳未満:60万円、 65歳以上:110万円」となります。

収入が年金だけの場合、住民税が非課税になる年金額は以下の通りになります。

▼住民税非課税 年金収入

配偶者
扶養親族
非課税所得非課税年金収入
(上)65歳未満
(下)65歳以上
なし45万円 45+ 60=105万円
45+110=155万円
1人35×2+31
=101万円
101+ 60=161万円
101+110=211万円
2人35×3+31
=136万円
136+ 60=196万円
136+110=246万円

夫婦二人世帯で65歳以上の夫の年金収入が211万円以下なら、住民税が非課税になります。

これが年金収入「211万円の壁」です。

年金と給与がある場合

以下は、年金収入と給与収入の場合で住民税が非課税なる例です。

  • 公的年金等控除額
    65歳未満:60万円
    65歳以上:110万円
  • 給与所得控除 55万円
    ただし、給与収入162.5万円以下の場合

▼住民税非課税になる年金収入と給与収入

配偶者
扶養親族
年齢非課税
所得
年金収入・給与収入
(年金所得・給与所得)
万円
なし65歳
未満
45万 60・100 ( 0・45)
80・ 80 (20・25)
105・ 55 (45・ 0)
なし65歳
以上
45万110・100 ( 0・45)
130・80 (20・25)
155・55 (45・ 0)
1人65歳
未満
101万 60・156 ( 0・101)
100・116 ( 40・61)
161・55 (101・ 0)
1人65歳
以上
101万110・156 (0・101)
150・116 (40・61)
211・55 (101・0)

    妻が非課税になる条件

    夫婦2人世帯で住民税非課税世帯になるためには、妻も非課税になる必要があります。

    その場合、妻は「扶養親族なし」になるので非課税上限所得は45万円になり、上の表の「扶養親族なし」の範囲内で年金収入・給与収入があれば非課税になります。

    年金収入が65歳未満で60万円以下、65歳以上で110万円以下の場合、給与収入100万円以下なら住民税非課税になります。給与収入が100万円を超えると住民税課税となってしまいます。

    所得税を算出する場合の基礎控除は48万円で、給与収入が55万+48万=103万円以下なら所得税が非課税になりますが、住民税と所得税は非課税基準が異なるので注意が必要です。なお、所得税を算出する場合の基礎控除は48万円で、給与収入が55万+48万=103万円以下なら所得税が非課税になりますが、住民税と所得税は非課税基準が異なるので注意が必要です。

    級地制度による非課税金額

    級地制度とは、地域ごとの物価や生活水準の差を考慮して、生活保護基準に地域差を設けている制度です。

    級地制度により、地域ごとの住民税非課税基準が異なるので注意が必要です。

    住民税非課税基準も級地制度に準じて、1級地、2級地、3級地の3段階に分けられています。

    上記「211万円」は1級地の基準です。2級地、3級地は非課税基準が低くなります。

    級地制度の例(広島県)

    • 1級地 広島市、呉市、福山市、…
    • 2級地 三原市、尾道市、府中市、…
    • 3級地 竹原市、三次市、庄原市、…

    生活保護基準の級地区分は以下を参照してください。
    級地制度-Wikipedia

    級地別 非課税上限所得

    級地別の住民税非課税所得は以下の式で計算されています。

    配偶者
    扶養
    親族
    1級地2級地3級地
    なし45万円41.5万円38万円
    あり35万円
    ×世帯人数
    +31万円
    31.5万円
    ×世帯人数
    +28.9万円
    28万円
    ×世帯人数
    +26.8万円
    1人35×2+31
    =101万円
    31.5×2+28.9
    =91.9万円
    28×2+26.8
    =82.8万円
    2人35×3+31
    =136万円
    31.5×3+28.9
    =123.4万円
    28×3+26.8
    =110.8万円

    級地別非課税上限年金収入

    収入が年金だけの場合の非課税上限の年金収入は、非課税上限所得に公的年金等控除を加えて求めます。

    ▼級地別非課税上限年金額
    上段:65歳未満 下段:65歳以上

    配偶者
    扶養親族
    1級地2級地3級地
    なし105万円
    155万円
    101.5万円
    151.5万円
    98万円
    148万円
    1人161万円
    211万円
    151.9万円
    201.9万円
    142.8万円
    192.8万円
    2人196万円
    246万円
    183.4万円
    233.4万円
    170.8万円
    220.8万円

    夫婦2人世帯の夫の年金収入が住民税非課税になるのは、2級地では201.9万円以下、3級地では192.8万円以下になります。

    住民税非課税のメリット

    住民税が非課税になると社会保険料などに色々なメリットがあります。

    国民健康保険料

    国民健康保険料は、所得割・均等割・平等割の合計金額になります。

    均等割・平等割の部分が、所得金額によリ7割軽減・5割軽減・2割軽減の軽減措置があります。

    保険料は世帯主から徴収されますが、軽減判定は世帯全体の合計所得金額で行われます。

    前年12月31日において65歳以上の公的年金受給者は、年金所得から15万円を差し引いた額が軽減判定基準額になります。

    夫婦2人世帯、夫が65歳以上、妻の所得は0円、2人とも国民健康保険に加入しているとした場合の軽減判定所得、年金収入は以下の通りです。

    妻の軽減判定所得が0円になる場合は、給与収入なら55万円以下、65歳未満の年金なら60万円以下、65歳以上の年金なら125万円以下です。

    ▼国民健康保険 軽減判定 年金収入
    夫65歳以上・妻の所得0円とする

    軽減種別軽減判定
    合計所得
    軽減判定
    年金収入
    7割軽減43万円43+110+15
    =168万円以下
    5割軽減104万円104+110+15
    =229万円以下
    2割軽減155万円155+110+15
    =280万円以下

    国民健康保険料の軽減判定は「211万円の壁」で判定されるわけではありません。

    168万円の壁、229万円の壁、280万円の壁の3つの壁があります。

    国民健康保険の詳細は以下の記事を参照してください。

    65歳からどうなる?年金受給者の国民健康保険【2025年4月改定】
    国民健康保険は年金生活を健康面で支えてくれる重要な仕組みです。いっぽう、その保険料は介護保険料とあわせて、少なくない出費となります。年金生活者の国民健康保険料についてはまとめました...

    介護保険料

    65歳になると「国民健康保険」から切り離されて「介護保険料」単独での徴収になります。

    介護保険料は個人単位で納付しますが、世帯の住民税の課税・非課税の条件で保険料段階が設定されています。

    • 本人の所得
    • 本人の住民税課税・非課税
    • 世帯の誰かの住民税課税・非課税

    以下のページでは、夫婦2人世帯で、夫が課税か非課税かで夫の保険料に約3万円の差が出て、更に妻の保険料も約4万円の差が出る例が示されています。

    65歳からどうなる?年金受給者の介護保険【2025年4月改定】
    介護保険には第1号と第2号の2つの被保険者資格があります。40歳になると介護保険第2号被保険者として、介護保険料の納付が始まります。会社員などは給与からの天引きで、個人事業主などは...

    高額療養費 自己負担限度額

    同じ月の中で窓口負担額が自己負担限度額を超えたときに、その超えた金額が公的医療保険から支給され、限度額以上の負担が免除されます。この自己負担限度額が、市民税非課税世帯の場合に低く設定されています。

    政府から「自己負担限度額の2025年8月から引き上げ」が提案されていましたが、結局見送りとなりました。

    ▼自己負担限度額 月額
    70歳未満の被保険者の場合(一部)

    所得区分直近12ヵ月で
    3回目まで
    直近12ヵ月で
    4回目以降
    住民税非課税世帯35,400円24,600円
    総所得金額
    210万円以下
    57,600円44,400円

    ※総所得金額とは世帯の合計所得です。一人ひとりの所得は、「年金収入-110万-43万」で計算されます。

    ※過去12か月間に、一つの世帯で高額療養費の支給が4回以上あった場合、4回目以降の限度額を超えた分が支給されます。

    臨時福祉給付金

    平成26年(2014年)4月の消費税率の引上げによる影響を緩和するため、暫定的・臨時的な措置として、平成26年度から29年度に住民税(均等割)が非課税の人を対象に「臨時福祉給付金」の支給が行われました。

    • 2014年度 1万円
    • 2015年度 6千円
    • 2016年度 3千円
    • 2017年度 1万5千円

    プレミアム付き商品券

    2019年10月、住民税非課税世帯を対象に、消費税増税に合わせて「プレミアム商品券」が発行されました。額面25,000円分の商品券が20,000円で購入できました。

    消費税増税対策「プレミアム商品券」、対象者は?年金受給者は?
    2019年10月の消費税増税に合わせてプレミアム付き商品券が発行されます。0歳~2歳児のいる世帯、住民税非課税の世帯などが購入可能になります。現時点での概要をまとめておきました。対...

    各種給付金・支援金

    以下は、私自身が受け取った住民税非課税世帯対象の給付金・支援金です。

    • 2022年3月 臨時給付金 10万円
    • 2022年12月 価格高騰給付金 5万円
    • 2023年8月 負担軽減給付金 3万円
    • 2023年12月 負担軽減給付金 7万円
    • 2025年2月 非課税世帯給付金 3万円 
    住民税非課税世帯等に対する臨時特別給付金を申請しました
    政府はコロナ対策として、「住民税非課税世帯等に対する臨時特別給付金」を実施しています。2022年2月、市から「受給についての確認書」が届き、申請書を返送しました。今回の臨時特別給付...

    その他の非課税メリット

    自治体により、住民税非課税の世帯にはさまざまな特典があります。

    • 「高額介護サービス費」の利用者負担の軽減
    • 介護施設入居者の住居費・食費の軽減
    • インフルエンザ予防接種の費用の軽減・無料

    あえて年金繰上げ受給も…

    公的年金の受給額が211万円をわずかに超える場合は、あえて繰上げ受給の手続きをして年金額を下げる方法もあります。1カ月繰上げるごとに0.4%ずつ受給額が下がります。

    あえて年金額を下げて住民税が非課税になるようにして、非課税メリットを利用して実質の手取り額を増やす方法です。