介護保険には第1号と第2号の2つの被保険者資格があります。
40歳になると介護保険第2号被保険者として、介護保険料の納付が始まります。
会社員などは給与からの天引きで、個人事業主などは国民健康保険料に含まれて、世帯単位で納付します。
65歳になると介護保険第1号被保険者に変わり、介護保険料は個人単位で納付することになります。
65歳からの介護保険料は3年ごとに改定され、2024年4月分より改定された保険料が適用されます。
介護保険料は市区町村ごとに基準額が定められていますが、その基準額が全国平均で月6,225円になり、21~23年度の月6,014円と比べて3.5%上がりしました。
介護保険被保険者1号2号とは
65歳以上の人は「介護保険第1号被保険者」、40歳以上65歳未満の人は「介護保険第2号被保険者」と定められています。
第1号被保険者…65歳以上の人
原因を問わず、要介護あるいは要支援状態と認定されると介護サービスを受けられます。
第2号被保険者…40歳以上65歳未満の人
加齢を原因とする特定疾病により介護が必要と認定された場合に限り介護サービスを受けられます。
第2号被保険者(40歳~64歳)の介護保険料
40歳以上65歳未満の第2号被保険者の介護保険料は以下の通り納付します。
被用者健康保険に加入している人
給与の標準報酬月額や標準賞与額に介護保険料率を乗じて算出し、事業主と折半して給与・賞与から天引きされます。例えば「協会けんぽ」の場合の介護保険料率は年度ごとに改定され、23年度1.82%から24年度1.60%になりました。この金額の1/2が本人負担分として給与から天引きされます。
なお、「協会けんぽ」の健康保険料率は24年度、都道府県ごとに9.3%~10.42%、平均9.95%になっていますが、介護保険料率は全国一律です。
国民健康保険に加入している人
国民健康保険料は医療分・高齢者医療支援分・介護保険分の合計金額になっており、介護保険料は国民健康保険に含まれて徴収されています。市区町村ごとに算出式が定められていて、世帯単位の支払いになります。
国民健康保険については下記へ
第1号被保険者の介護保険料
65歳になり第1号被保険者に変わると介護保険料は個人単位の徴収になります。
被用者健康保険・国民健康保険から分離され、原則、年金からの天引きになり市区町村に保険料を納付します。(特別徴収)
特別徴収の対象者
- 当該年の4月1日現在において、65歳以上であること。
- 当該年の4月1日現在において、特別徴収の対象の年金額が年額18万円以上であること。
介護保険料の徴収は65歳になったその月から始まりますが、特別徴収が始まるまでは納付書により納付します。年金の繰下げなどで年金を受給していない場合も納付書による納付になります。(普通徴収)
介護保険料の算定方法
65歳以上の介護保険料は、市区町村ごとに基準額と保険料段階を定めて決定します。
基準額と保険料段階は市区町村内の介護サービスにかかる費用と市区町村ごとの事情により定められています。
保険料段階は住民税の課税・非課税と本人の所得によリ10数段階に分けられており、基準額に保険料段階の倍率を乗じて段階ごとの介護保険料を決定します。
基準額と保険料段階は3年ごとに改定が行われます。
基準額の全国平均は、「21年度~23年度:月6,014円」から「24年度~26年度:月6,225円」に3.5%引き上げられました。
保険料基準額と保険料段階の例
保険料基準額月額(2024~2026年度)
- 全国平均:6,225円
- 最低額 :3,374円(東京都 小笠原村)
- 最高額 :9,249円(大阪府 大阪市)
▼基準額と保険料段階の例(2024~2026年度)
市区町村 | 標準額 年額(円) 上:~23年 下:24~年 | 標準月額(円) 上:21~23年 下:24~26年 | 保険料 段階 | 倍率 |
---|---|---|---|---|
札幌市 | 69,270 69,270 | 5,773 5,773 | 13 | 0.285 ~2.30 |
世田谷区 | 74,160 75,360 | 6,180 6,280 | 18 | 0.285 ~4.90 |
名古屋市 | 79,709 83,403 | 6,642 6,950 | 18 | 0.25 ~3.10 |
大阪市 | 97,128 110,988 | 8,094 9,249 | 15 | 0.335 ~3.00 |
福岡市 | 74,699 82,784 | 6,225 6,899 | 15 | 0.245 ~2.70 |
段階ごとの保険料の例<札幌市>
上記の表から札幌市の保険料段階と段階ごとの保険料を例示します。第5段階が標準額になっています。
▼札幌市の保険料段階(2024~2026年度)
段階 | 料率 | 保険料 年額 (円) | 保険料 月額 (円) |
---|---|---|---|
第1段階 | 0.285 | 19,743 | 1,645 |
第2段階 | 0.485 | 33,596 | 2,800 |
第3段階 | 0.685 | 47,450 | 3,954 |
第4段階 | 0.90 | 62,343 | 5,195 |
第5段階 | 1.00 | 69,270 | 5,773 |
第6段階 | 1.15 | 79,661 | 6,638 |
第7段階 | 1.25 | 86,588 | 7,216 |
第8段階 | 1.50 | 103,905 | 8,659 |
第9段階 | 1.75 | 121,223 | 10,102 |
第10段階 | 2.00 | 138,540 | 11,545 |
第11段階 | 2.10 | 145,467 | 12,122 |
第12段階 | 2.20 | 152,394 | 12,700 |
第13段階 | 2.30 | 159,321 | 13,277 |
段階ごとの基準<札幌市の例(一部)>
▼札幌市の保険料段階(2021~2023年度)
段階 | 市民税 | 前年の収入と所得 |
---|---|---|
第1 | 世帯全員 非課税 | 本人の年金収入と 年金以外の所得の合計が 80万円以下 |
第2 | 世帯全員 非課税 | 本人の年金収入と 年金以外の所得の合計が 80万円超120万円以下 |
第3 | 世帯全員 非課税 | 本人の年金収入と 年金以外の所得の合計が 120万円超 |
第4 | 本人非課税 誰かが課税 | 本人の年金収入と 年金以外の所得の合計が 80万円以下 |
第5 | 本人非課税 誰かが課税 | 本人の年金収入と 年金以外の所得の合計が 80万円超 |
第6 | 本人が課税 | 合計所得金額が 125万円未満 |
第7 | 本人が課税 | 合計所得金額が 125万円以上200万円未満 |
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- 第1段階には、生活保護を受給している人、中国残留邦人等の方々のための支援給付を受けている人、老齢福祉年金受給者で世帯全員が市町村民税非課税の人を含む
- 公的年金等の収入金額には、遺族年金や障害年金などの非課税年金は含まれない。
- 合計所得金額とは、収入から必要経費相当額を差し引いた所得控除前の所得を合計したもの。
- 事業所得=収入-必要経費
- 給与所得=収入-給与所得控除
- 年金所得=公的年金収入-公的年金控除
介護保険料の試算例
札幌市の介護保険料が、住民税非課税・課税でどのように変わるかを試算します。
- 夫婦二人世帯
- 二人とも65歳以上
- 収入は公的年金のみ
- 年金以外の所得はなし
この場合、夫の公的年金収入が211万円以下、妻の年金が155万円以下なら、二人とも住民税が非課税で、住民税非課税世帯になります。
(A) 年金額 夫:211万円、妻:80万円
夫婦とも住民税非課税になります。
- 夫:第3段階 47,450円
- 妻:第1段階 19,742円
- 合計:67,192円
(B) 年金額 夫:212万円、妻:80万円
夫は住民税課税、妻は非課税になります。夫の所得は公的年金控除110万円を引いて102万円です。
- 夫:第6段階 79,661円
- 妻:第4段階 62,343円
- 合計:142,004円
年金211万円の壁
夫の年金額が(A)211万円から(B)212万円にとなり1万円増えると、夫の介護保険料は+32,211円になり、手取りで約22,000円減ってしまいます。
更に、夫が住民税課税になることにより、妻の介護保険料も+42,601円になります。
夫婦合わせて介護保険料が約75,000円増えてしまいます。
これがいわゆる「年金211万円の壁」です。
私の場合は…
私は2019年8月に65歳になり、第1号被保険者として特別徴収で保険料を納付しています。
妻は2024年4月に65歳になり、これまで第2号被保険者として国民健康保険で介護保険分を納付していましたが、今後は第1号被保険者として保険料を納付することになります。
私も妻も住民税が非課税で、住民税非課税世帯になります。
札幌市の保険料段階に当てはめると、私は「第3段階」、妻は「第1段階」になります。
私の住んでいる自治体の基準額は年額73,000円程度で、私は0.65倍で48,000円程度、妻は0.285倍で21,000円程度、合計69,000円程度になっています。