私は令和元年(2019年)8月で65歳になり、老齢年金の本来支給の権利が発生します。
最近とくに「繰下げ受給すると年金が増えてお得ですよ」という情報が聞こてきます。
これは、年金の支給開始年齢をなんとか引き上げて将来の年金の安定につなげたい政府の思惑が感じられます。
若い人には申し訳ないですが、将来的には年金の支給開始年齢の引き上げは避けて通れないのではないかと思います。
さて、65歳が差し迫った私はどうするか。結論は、タイトルにある通り「配偶者加給年金」がもらえなくなるので、厚生年金については繰下げ受給は考えられません。

配偶者加給年金とは
厚生年金保険の加入期間が20年(240ヶ月)以上ある人が、65歳になり本来支給の老齢厚生年金の受給を開始するとき、その人に生計を維持されている65歳未満の配偶者がいるときに「配偶者加給年金」が加算されます。
さらに、受給者本人の生年月日に応じて、配偶者の加給年金額に33,200円~165,600円が特別加算されます。
ただし、配偶者が65歳未満であっても、配偶者が厚生年金に20年以上加入していて特別支給の老齢厚生年金の受給が始まると配偶者加給年金は支給停止になります。
受給権者の 生年月日 | 加給 年金額 | 特別 加算額 | 合計額 |
---|---|---|---|
S09/4/2~S15/4/1 | 224,500 | 33,200 | 257,700 |
S15/4/2~S16/4/1 | 66,200 | 290,700 | |
S16/4/2~S17/4/1 | 99,400 | 323,900 | |
S17/4/2~S18/4/1 | 132,500 | 357,000 | |
S18/4/2以後 | 165,600 | 390,100 |
私は配偶者加給年金が支給されます
私は昭和29年(1954年)生まれで、令和元年(2019年)8月で65歳になります。
その時点で妻は60歳
私の厚生年金加入期間は334ヶ月
妻の厚生年金加入期間は75ヶ月
妻は61歳から特別支給の老齢厚生年金を受給することになりますが、厚生年金の加入期間が20年に満たないので、妻が65歳になるまで、私の老齢厚生年金に年額約39万円の配偶者加給年金が加算されます。
妻が65歳になり、老齢基礎年金の支給が始まると私の老齢厚生年金の配偶者加給年金は停止され、妻の老齢基礎年金に「振替加算」という金額が加算されます。
妻の老齢基礎年金の振替加算は26,940円になります。
年金の繰下げ受給
老齢基礎年金と老齢厚生年金はともに65歳から本来支給が始まります。
65歳になっても受給手続きをしなければ、いわば年金の受給を保留した状態になります。
1年以上待って66歳以降から繰下げ請求ができるようになり、繰下げ請求した時点から増額された支給が始まります。
増額されるのは70歳までの5年間だけで、それ以降に請求してもそれ以上の増額はありません。
増額率は1ヶ月0.7%、1年8.4%、最大5年で42%になります。
老齢厚生年金と老齢基礎年金をそれぞれに繰下げ時期を選択できます。老齢厚生年金は65歳から、老齢基礎年金は70歳からということもできます。
66歳以降に受給手続きをする際に、「繰下げによる増額請求」または「増額のない年金をさかのぼって受給」のどちらか一方を選択することができます。さかのぼって受給するときはそれまでの増額のない年金を一括で受給することができます。
70歳到達月より後に65歳時にさかのぼった請求をすると、5年時効により年金が支払われない部分が発生する可能性があります。ただし、実際には時効が適用されないようです。
繰下げ期間の配偶者加給年金は支給されません
例えば、配偶者加給年金を受給できる人が66歳で「繰下げによる増額請求」すると、報酬比例部分は8.4%増額されますが、配偶者加給年金は増額されません。
また、繰下げ期間の配偶者加給年金は支給されないので、65歳からの1年分の配偶者加給年金は支給されないことになります。
ただし、「増額のない年金をさかのぼって受給」する際はさかのぼっての期間の配偶者加給年金が支給されます。
私の場合、報酬比例部分は約93万円、配偶者加給年金は約39万円、妻との年齢差は4年8ヶ月=4.67年になります。その条件で、繰下げ受給した場合の受け取り総額を試算しました。
私の厚生年金繰下げ受給金額
受給開始 | 増額率 | 報酬比例額(万円) | 加給期間(年) | 加給年金総額(万円) |
---|---|---|---|---|
65歳 | 1.000 | 93.0 | 4.67 | 182.0 |
66歳 | 1.084 | 100.8 | 3.67 | 143.0 |
67歳 | 1.168 | 108.6 | 2.67 | 104.0 |
68歳 | 1.252 | 116.4 | 1.67 | 65.0 |
69歳 | 1.336 | 124.2 | 0.67 | 26.0 |
70歳 | 1.420 | 132.1 | 0.00 | 0.0 |
私の厚生年金繰下げ受け取り総額(万円)
受給 開始 | 70歳 まで | 75歳 まで | 80歳 まで | 85歳 まで |
---|---|---|---|---|
65歳 | 647 | 1,112 | 1,577 | 2,042 |
66歳 | 546 | 1,050 | 1,554 | 2,058 |
67歳 | 430 | 973 | 1,516 | 2,059 |
68歳 | 298 | 880 | 1,462 | 2,044 |
69歳 | 150 | 771 | 1,393 | 2,014 |
70歳 | 0 | 660 | 1,321 | 1,981 |
80歳までにもらえる年金総額
- 繰下げなしで65歳からもらい始めると、
93万×15年+加給年金182万=1577万円 - 1年繰下げて66歳からもらい始めると、
100.8万×14年+加給年金143万=1554万円 - 5年繰下げて70歳からもらい始めると、
132.1万×10年+加給年金0万=1321万円
配偶者加給年金を放棄してまで厚生年金を繰下げ受給するメリットはないようです。
基礎年金の繰下げ受給はどうするか…
老齢厚生年金と老齢基礎年金をそれぞれに繰下げ時期を選択できます。
老齢厚生年金は繰下げ受給をするメリットがほとんどありませんが、老齢基礎年金だけ繰下げ受給するという方法も考えられます。
老齢基礎年金の満額は780,100円ですが、私の場合は付加年金を含めて約75.2万円程度になります。
繰下げする場合は付加年金も含めて増額されます。
私の基礎年金の繰下げ受給金額
受給開始 | 増額率 | 基礎年金額(万円) |
---|---|---|
65歳 | 1.000 | 75.2 |
66歳 | 1.084 | 81.5 |
67歳 | 1.168 | 87.8 |
68歳 | 1.252 | 94.2 |
69歳 | 1.336 | 100.5 |
70歳 | 1.420 | 106.8 |
私の基礎年金受け取り総額(万円)
受給 開始 | 70歳 まで | 75歳 まで | 80歳 まで | 85歳 まで |
---|---|---|---|---|
65歳 | 376 | 752 | 1,128 | 1,504 |
66歳 | 326 | 734 | 1,141 | 1,549 |
67歳 | 264 | 703 | 1,142 | 1,581 |
68歳 | 188 | 659 | 1,130 | 1,601 |
69歳 | 100 | 603 | 1,105 | 1,607 |
70歳 | 0 | 534 | 1,068 | 1,602 |
基礎年金の繰下げ受給では受給開始から約11.9年で取り返すことができます
基礎年金額をA円、X年繰下げるとすると
- 繰下げた部分のA×X(円)がもらえない
- 年金はA×0.084×X(円)増額される
- (A×X)÷(A×0.084×X)
=1÷0.084
=11.9
繰下げ受給を始めてから約12年で取り返せることになります
- 受給開始66歳→78歳
- 受給開始67歳→79歳
- ︙
- 受給開始70歳→82歳
私の場合、仮に70歳から受給開始したとすると、
- 75.2×0.42=31.6万円増額される
- 82歳でもらわなかった5年分を取り返せる
- その後1年に31.6万円ずつ得する
ということになります。
まとめ
老齢厚生年金と老齢基礎年金は別々に繰下げ受給することができます。
私の場合、配偶者加給年金が受給できるので老齢厚生年金の繰下げ受給のメリットはありません。
老齢基礎年金の繰下げ受給は、受給開始から約12年で繰下げた期間の年金額を取り返すことができます。考えどころです…。たぶん繰下げしないかな…。