【2023年度版】65歳からどうなる?年金受給者の住民税非課税211万円の壁とは…

南アルプス空木岳駒峰ヒュッテ 所得税・住民税
南アルプス空木岳駒峰ヒュッテ

65歳からの年金収入には「211万円の壁」があります。

夫婦2人世帯で夫の年金が211万円以下なら個人住民税が非課税になります。

さらに妻も非課税なら住民税非課税世帯となり、様々なメリットがあります。

私自身も夫婦2人世帯で年金収入が211万円以下なので、様々なメリットを受けることができています。

2023年度も、住民税非課税世帯に対して「価格高騰重点支援給付金」として、1世帯当たり3万円が支給されます。

この「211万円の壁」について詳しく調べました。

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「211万円の壁」とは

次の条件を満たす場合、夫の個人住民税が非課税になります。

  • 夫婦二人世帯
  • 夫は65歳以上
  • 夫の公的年金が年額211万円以下

さらに妻の個人住民税が非課税であれば「住民税非課税世帯」ということになり、様々なメリットを受けることができます。

ただし、級地制度により住民税の非課税基準が異なるので注意が必要です。

個人住民税の仕組み

個人住民税は個人にかかる税金です。一人ひとりの収入で算出します。

都道府県民税と市区町村民税の合計金額で、1人当たり一定額の均等割と所得に比例する所得割を合計します。

  • 個人住民税=均等割+所得割
    • 均等割 標準税額:5,000円
    • 所得割 標準税率:10%
      税額・税率は自治体によって異なる場合があります

個人住民税の詳細は以下のサイトをご覧ください。

【2022年度版】65歳からどうなる?年金受給者の個人住民税
個人住民税は、個人ごとに、前年の収入により決定します。 令和4年度の個人住民税は令和3年1月から12月の収入により決定します。 令和2年の税制改正により、基礎控除額などが改正され、...

個人住民税の非課税基準

住民税の所得割を課税する場合は所得から基礎控除、配偶者控除などの所得控除を差し引いた「課税標準額」を用います。

いっぽう、住民税の非課税は所得控除を引く前の「所得」で判断し、年金収入の場合は公的年金等控除を差し引いた年金所得で判断します。

  • 事業所得=総収入-必要経費
  • 給与所得=給与収入-給与所得控除
  • 年金所得=年金収入-公的年金等控除

年金収入330万円以下の場合の公的年金等控除は、65歳未満:60万円、 65歳以上:110万円です。

均等割・所得割 それぞれの非課税基準

「均等割」と「所得割」のそれぞれに非課税になる基準があります。

世帯人数
 =本人+同一生計配偶者+扶養親族の人数

均等割 非課税上限所得

配偶者
扶養親族
均等割非課税上限所得
なし45万円
あり35万円×世帯人数+31万円

所得割 非課税上限所得

配偶者
扶養親族
所得割非課税上限所得
なし45万円
あり35万円×世帯人数+42万円

「均等割」の基準の方が低いので、「均等割」の上限が住民税の非課税上限になります。

住民税が非課税になる年金額

公的年金等控除額は「65歳以上の場合110万円」となるので住民税が非課税になる年金額は以下の通りになります。

▼住民税非課税 年金収入(65歳以上)

配偶者
扶養親族
住民税非課税
所得
住民税非課税
年金収入
なし45万円45+110
=155万円
1人35×2+31
=101万円
101+110
211万円
2人35×3+31
=136万円
136+110
=246万円

夫婦二人世帯で65歳以上の夫の年金収入が211万円以下なら、住民税が非課税になります。

これが年金収入「211万円の壁」です。

住民税非課税世帯の条件は…

夫婦2人世帯で住民税非課税世帯になるためには、妻も非課税になる必要があり、その場合、妻の非課税上限所得は45万円になります。

妻に年金収入がある場合…

「公的年金控除+非課税上限所得45万円」が住民税が非課税になる年金収入の上限額になります。

  • 妻が65歳未満の場合
    年金控除60万+非課税上限所得45万
    =非課税上限年金収入105万円
  • 妻が65歳以上の場合
    年金控除110万+非課税上限所得45万
    =非課税上限年金収入155万円

妻がこの金額を超えると、夫が住民税非課税でも住民税非課税世帯ではなくなります。

妻に給与収入がある場合…

妻に給与収入がある場合は、給与収入が100万円以下なら住民税が非課税になります。

給与収入162.5万円以下の給与所得控除は55万円なので、給与収入が55万円+45万円=100万円以下なら給与所得が45万円以下になり、住民税が非課税になります。

なお、所得税を算出する場合の基礎控除は48万円で、給与収入が55万+48万=103万円以下なら所得税が非課税になります。

所得税と住民税では非課税基準が異なるので注意が必要です。

級地制度による非課税金額

級地制度とは、地域ごとの物価や生活水準の差を考慮して、生活保護基準に地域差を設けている制度です。

級地制度により、地域ごとの住民税非課税基準が異なるので注意が必要です。

住民税非課税基準も級地制度に準じて、1級地、2級地、3級地の3段階に分けられています。

上記「211万円」は1級地の基準です。2級地、3級地は非課税基準が低くなります。

級地制度の例(広島県)

  • 1級地 広島市、呉市、福山市、…
  • 2級地 三原市、尾道市、府中市、…
  • 3級地 竹原市、三次市、庄原市、…

生活保護基準の級地区分は以下を参照してください。
級地制度-Wikipedia

級地別 非課税上限所得

世帯人数
 =本人+同一生計配偶者+扶養親族の人数

配偶者
扶養
親族
1級地2級地3級地
なし45万円41.5万円38万円
あり35万円
×世帯人数
+31万円
31.5万円
×世帯人数
+28.9万円
28万円
×世帯人数
+26.8万円
1人35×2+31
=101万円
31.5×2+28.9
=91.9万円
28×2+26.8
=82.8万円
2人35×3+31
=136万円
31.5×3+28.9
=123.4万円
28×3+26.8
=110.8万円

級地別非課税上限年金収入(65歳以上)

非課税上限の年金収入は、上記非課税上限所得に公的年金等控除110万円(年金収入330万円以下)を加えて求めます。

配偶者
扶養親族
1級地2級地3級地
なし155万円151.5万円148万円
1人211万円201.9万円192.8万円
2人246万円233.4万円220.8万円

夫婦2人世帯の夫の年金収入が住民税非課税になるのは、2級地では201.9万円、3級地では192.8万円になります。

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住民税非課税のメリット

住民税が非課税になると社会保険料などに色々なメリットがあります。

国民健康保険料

国民健康保険料は、所得割・均等割・平等割の合計金額になります。

均等割・平等割の部分が、所得金額によリ7割軽減・5割軽減・2割軽減の軽減措置があります。

保険料は世帯主から徴収されますが、軽減判定は世帯全体の合計所得金額で行われます。

前年12月31日において65歳以上の公的年金受給者は、年金所得から15万円を差し引いた額が軽減判定基準額になります。

夫婦2人世帯、夫が65歳以上、妻の所得は0円、2人とも国民健康保険に加入しているとした場合の軽減判定所得、年金収入は以下の通りです。

妻の所得が0円になる場合は、給与収入なら55万円以下、65歳未満の年金なら60万円以下、65歳以上の年金なら125万円以下です。

▼国民健康保険 軽減判定 年金収入

軽減種別軽減判定
合計所得
軽減判定
年金収入
7割軽減基礎控除額
43万円
43+110+15
=168万円以下
5割軽減43万円
+28.5万円×2
=100万円
100+110+15
=225万円
2割軽減43万円
+52万円×2
=147万円
147+110+15
=272万円

国民健康保険料の軽減判定は「211万円の壁」で判定されるわけではありません。

168万円の壁、225万円の壁、272万円の壁の3つの壁があります。

介護保険料

65歳になると「国民健康保険」から切り離されて「介護保険料」単独での徴収になります。

以下の条件で保険料段階が設定されています。

  • 本人の所得
  • 本人の住民税課税・非課税
  • 世帯の誰かの住民税課税・非課税

以下のページでは、本人が課税か非課税かで、年間26,000円の差が出る例が示されています。

【2023年度版】65歳からどうなる?年金受給者の介護保険
40歳になると「介護保険第2号被保険者」として、介護保険料の納付が始まります。 会社員などは給与からの天引きで、個人事業主などは国民健康保険料に含まれて徴収されます。 65歳になる...

高額医療費自己負担限度額

同じ医療機関で同じ月の中で限度額を超えて負担金を支払ったときは、超えた額が高額療養費として支給されます。

この自己負担限度額が、市民税非課税世帯の場合に低く設定されています。

▼自己負担限度額 月額
70歳未満の被保険者の場合(一部)

所得区分直近12ヵ月で
3回目まで
直近12ヵ月で
4回目以降
住民税非課税世帯35,400円24,600円
総所得金額
210万円以下
57,600円44,400円

※総所得金額とは世帯の合計所得です。一人ひとりの所得は、「年金収入-110万-43万」で計算されます。

※過去12か月間に、一つの世帯で高額療養費の支給が4回以上あった場合、4回目以降の限度額を超えた分が支給されます。

詳しくは以下のページをご覧ください。

【2023年度版】65歳からどうなる?年金受給者の国民健康保険
国民健康保険は年金生活を健康面で支えてくれる重要な仕組みです。 いっぽう、その保険料は介護保険料とあわせて、少なくない出費となります。 年金生活者の国民健康保険料についてはまとめま...

臨時福祉給付金

平成26年(2014年)4月の消費税率の引上げによる影響を緩和するため、暫定的・臨時的な措置として、平成26年度から29年度に「臨時福祉給付金」の支給が行われました。

対象は住民税(均等割)が非課税の人になります。ただし、課税されている方に生活の面倒を見てもらっている場合などは対象となりません。

  • 2014年度 
    支給対象者1人につき 1万円
    (年金や児童扶養手当等の受給者は5,000円の加算)
  • 2015年度
    支給対象者1人につき 6千円
  • 2016年度
    支給対象者1人につき 3千円
  • 2017年度
    2016年度支給対象 1人につき 1万5千円

プレミアム付き商品券

2019年10月、住民税非課税世帯は、消費税増税に合わせて発行される「プレミアム商品券」が購入可能になりました。

額面25,000円分の商品券が20,000円で購入できました。

消費税増税対策「プレミアム商品券」、対象者は?年金受給者は?
2019年10月の消費税増税に合わせてプレミアム付き商品券が発行されます。 0歳~2歳児のいる世帯、住民税非課税の世帯などが購入可能になります。 現時点での概要をまとめておきました...

2022年3月 臨時特別給付金

「新型コロナウイルス感染症の影響が長期化する中、様々な困難に直面した方々が、速やかに生活・暮らしの支援を受けられるよう」ということで、住民税非課税世帯等に対して、1世帯当たり10万円が支給されました。

住民税非課税世帯等に対する臨時特別給付金を申請しました
政府はコロナ対策として、「住民税非課税世帯等に対する臨時特別給付金」を実施しています。 2022年2月、市から「受給についての確認書」が届き、申請書を返送しました。 今回の臨時特別...

その他の非課税メリット

自治体により、住民税非課税の世帯にはさまざまな特典があります。

  • 「高額介護サービス費」の利用者負担の軽減
  • 介護施設入居者の住居費・食費の軽減
  • インフルエンザ予防接種の費用の軽減・無料

あえて年金繰上げ受給も…

公的年金の受給額が211万円をわずかに超える場合は、あえて繰上げ受給の手続きをして年金額を下げる方法もあります。1カ月繰上げるごとに0.4%ずつ受給額が下がります。

あえて年金額を下げて住民税が非課税になるようにして、非課税メリットを利用して実質の手取り額を増やす方法です。