年金制度改革法成立 2020年 被用者保険の適用範囲の拡大

北アルプス 雲の平厚生年金

5月29日「年金制度改革関連法」が成立しました。

今回の改革には以下のポイントがあります。

  1. 社会保険(厚生年金保険、健康保険)の適用範囲の拡大
  2. 老齢年金の繰下げ受給を75歳まで拡大
  3. 65歳未満の在職老齢年金制度の減額基準の見直し
  4. 65歳以上で働く場合の老齢厚生年金を毎年再計算
  5. 個人型確定拠出年金「iDECO」が利用しやすく

この記事では、「1.被用者保険(厚生年金保険・健康保険)の適用範囲の拡大」について記事にします。

3.4.については以下の記事をご覧ください。

年金制度改革法成立2020年 在職老齢年金の見直し
新型コロナウイルスへの警戒が続いている中、5月29日「年金制度改革関連法」が成立しました。今回の改革には以下のポイントがあります。パートなどの短時間労働者への厚生年金適用範囲の拡大...
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被用者保険の適用範囲

株式会社などの法人の事業所や従業員が常時5人以上いる個人の事業所は一部の例外を除いて厚生年金保険・健康保険の適用事業所となります。

適用事業所に常時使用される70歳未満の人は全員厚生年金保険・健康保険の被保険者となります。

さらにパート・アルバイト等の短時間労働者も、1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3以上である場合は被保険者となります。

たとえば、1週間の所定労働時間が40時間の場合、30時間以上働くようなパートタイマーが該当します。

パート年収130万円の壁

夫がサラリーマンで厚生年金保険・健康保険に加入していて、妻がパート等の収入がある場合、妻の収入が年間130万円未満なら、妻は夫の社会保険の扶養家族となります。

その場合、妻の年金保険料・健康保険料は夫が加入している社会保険制度から負担されます。妻は国民年金第3号被保険者として保険料を払うことなく国民年金の保険料納付期間が加算されます。

妻の年収が130万円以上になると夫の社会保険の扶養対象から外れてしまいます。

その場合、妻は国民年金第2号被保険者として自分が働いている事業所の厚生年金保険・健康保険に加入して保険料を負担するか、それができない場合は、国民年金第1号被保険者として国民年金・国民健康保険に加入して保険料を納付することになります。

これがパート年収130万円の壁です。

年収130万円(月収108,333円)のときの社会保険料

サラリーマンの妻のパート収入が年収130万円以上になると社会保険を自分で負担することになります。以下は令和2年度の自己負担金額です。

国民年金1号の社会保険料(月額)

  • 国民年金保険料 16,540円
  • 国民健康保険料 11,080円(大阪市)
    夫が国保に加入している場合は7,439円

国民年金2号の社会保険料(月額)

  • 厚生年金保険料 10,065円
  • 健康保険料    6,605円(協会けんぽ大阪府)

いずれの場合も大きな負担増になります。

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2016年に被用者保険の適用範囲が拡大されました

平成28年(2016年)10月より、短時間労働者の厚生年金保険・健康保険の適用範囲が拡大されました。

1週間の所定労働時間が通常の労働者の4分の3未満、または1か月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3未満、またはその両方の場合であっても、次の5要件を全て満たす人は、新たに厚生年金保険・健康保険の対象になりました。

  1. 週の所定労働時間が20時間以上あること
  2. 雇用期間が1年以上見込まれること
  3. 賃金の月額が8.8万円以上であること
  4. 学生でないこと
  5. 従業員500人超の企業等
    500人以下の企業等についても労使合意に基づき適用可

上記の5条件をすべて満たす場合、年収130万円未満でも事業所の厚生年金保険・健康保険に加入し、国民年金2号となります。

国民年金1号の人が2号になったら

国民年金1号の人は国民年金保険料・国民健康保険料を支払っていますが、上記の5条件をすべて満たす場合国民年金2号となり、事業所の厚生年金保険・健康保険に加入することになるので、保険料の負担が少なくなります。

月収8.8万円(年収105.6万円)の場合の社会保険料

国民年金1号の社会保険料(月額)

  • 国民年金保険料 16,540円
  • 国民健康保険料  8,329円(大阪市)
    夫が国保に加入している場合は4,688円

国民年金2号の社会保険料(月額)

  • 厚生年金保険料 8,052円
  • 健康保険料   5,284円(協会けんぽ大阪府)

国民年金1号の人が夫の健康保険の扶養に入っている場合

会社員の夫が65歳になると厚生年金に入りながらも国民年金2号の資格を喪失します。

するとその妻は60歳未満であっても国民年金3号の資格を喪失し国民年金1号となりますが、この場合も夫の健康保険の扶養に入り続けることができます。

夫の健康保険の扶養に入っている国民年金1号の人が、上記の5条件をすべて満たし国民年金2号になると、年金保険料の負担は減りますが、自分自身が事業所の健康保険に入ることになるのでその分の負担が発生します。

国民年金任意加入の人が2号になると

国民年金1号の人・国民年金3号の人は60歳になると国民年金の資格を喪失します。夫が厚生年金に加入していてもその妻が60歳になると国民年金3号ではなくなります。

60歳以降は国民年金保険料を納付する義務はありませんが、老齢基礎年金を満額受給するためには保険料納付期間が40年(480ヵ月)が必要で、そのためには国民年金に任意加入して国民年金保険料を納付する必要があります。

この国民年金任意加入の人が上記の5条件をすべて満たし国民年金2号になると国民年金保険料が厚生年金保険料に切り替わり保険料の負担が少なくなります。

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老齢基礎年金ではなく老齢厚生年金経過的加算が増えます

60歳以上の厚生年金加入月数は老齢基礎年金の保険料納付月数には加算されず老齢基礎年金には反映されませんが、ほぼ同等の金額が老齢厚生年金の経過的加算で保障されます。

ただし、経過的加算を算出する際に、年金保険料の納付月数が480ヵ月超になった場合、超過した分は経過的加算には反映されません。

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任意加入の人が夫の健康保険の扶養に入っている場合

夫の健康保険の扶養に入っている国民年金任意加入の人が上記の5条件をすべて満たし国民年金2号になった場合、年金保険料の負担は減りますが、自分自身が事業所の健康保険に入ることになるのでその分の負担が発生します。

国民年金3号の人に新たに年収106万円の壁が生まれました

月収8.8万円は年収に直すと105.6万円、およそ106万円になります。

それまで年収130万円未満の範囲で働いて社会保険の負担がなかった国民年金3号の人にとって、新たに年収106万円の壁が生まれました。

上記の5条件をすべて満たす場合は以下から選択することになりました。

  1. 月収8.8万円未満に抑えて国民年金3号のままで働く
  2. 月収8.8万円以上働いて国民年金2号として自分で厚生年金保険料・健康保険料を支払う

実際の判定は月収で行います

年収106万円はあくまでも目安で、実際の判定は月収8.8万円で行います。

判定は基本給及び諸手当によって行い、残業代・賞与・臨時的な賃金等を含みません。

判定基準に含まれないものの例:

  • 臨時に支払われる賃金 (結婚手当等)
  • 1月を超える期間ごとに支払われる賃金 (賞与等)
  • 時間外労働に対して支払われる賃金 、休日労働及び深夜労働に対して支払われる賃金(割増賃金等)
  • 最低賃金において算入しないことを定める賃金(精皆勤手当、通勤手当及び家族手当)

月収8.8万円(年収105.6万円)のときの被用者保険料

国民年金3号の会社員の妻のパート収入が月収8.8万円以上になると国民年金2号となり被用者保険を自分で負担することになります。以下は令和2年度の自己負担金額です。

月収8.8万円の場合の被用者保険(月額)

  • 厚生年金保険料 8,052円
  • 健康保険料   5,285円(協会けんぽ大阪府)

この金額分だけ手取り金額が減ることになります。

老齢厚生年金額はどれだけ増えるか

月収8.8万円(平均標準報酬月額88,000円)の場合の年金額は以下の式で算出されます。

  • 老齢厚生年金報酬比例部分(年額)
    平均標準報酬月額×5.481/1000×加入月数
    =88,000×5.481/1000×加入月数
    =482.3×加入月数
加入年数年金額(年額)年金額(月額)
1年5,788円482円
10年57,879円4,823円
20年115,759円9,647円
30年173,638円14,470円
40年231,517円19,293円

健康保険にもメリットが

傷病手当

病気や怪我で仕事を4日以上休み、給与が支払われない場合に健康保険から67%の給付が受けられます。

出産手当

女性だけのメリットですが、出産予定日の前42日間と後の56日の計98日間に対して、傷病手当金と同様の計算方法で給付が受けられます。

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2020年の改定でさらに適用範囲が広がりました

今回、2020年5月に成立した年金制度改革法では、以下の2点が変更されました。

  1. 週の所定労働時間が20時間以上あること
  2. 雇用期間が1年以上見込まれること
    実務上の取扱の現状を踏まえて撤廃
  3. 賃金の月額が8.8万円以上であること
  4. 学生でないこと
  5. 従業員500人超の企業等
    50人超の企業まで適用を段階的に拡大
    (2022年10月)100人超規模の企業まで適用
    (2024年10月)50人超規模の企業まで適用

「雇用期間が1年以上見込まれること」を撤廃

厚生年金保険法・健康保険法では「2ヵ月以内の期間を定めて使用される人」を適用除外としています。

今回の改定では実務上の取扱を踏まえ、雇用契約の期間が2か月以内であっても、実態としてその雇用契約の期間を超えて使用される見込みがあると判断できる場合は試用期間を設けた場合なども含め、当初から被用者保険の適用対象とすることになりました。

契約時点で他の条件とともに労働時間週20時間・月収8.8万円の条件を満たせば、当初から厚生年金保険・健康保険に加入することになります。

従業員50人超規模の企業まで適用を拡大

従業員数とは、正規労働者と、週労働時間が正規労働者の3/4以上の短時間労働者の合計人数になります。週労働時間が正規労働者の3/4未満のパート・アルバイトは含みません。

2024年10月以降、従業員50人以上の企業で、他の条件を満たす短時間労働者は国民年金2号となり厚生年金保険料、健康保険料を負担することになります。

現に従業員50人以上の企業でパートとして働いているサラリーマンの妻は、年収106万円の壁に直面することになります。

まとめ

将来の年金財政の安定を考えて、できるだけ多くの人に国民年金1号・3号から2号に移行してもらおうというのが政府の考えです。今回の制度改革もその考えにのっとって行われています。

とくに「国民年金3号は不公平」という意見もあり、しばしば議論になっています。

老齢基礎年金は、令和2年度満額で年額781,700円、月額65,141円です。40年間国民年金1号だけ、国民年金3号だけの人はこの金額だけしか受給できません。

国民年金2号になると厚生年金保険料の負担は増えますが、自助努力で自分自身の公的年金を上乗せすることができます。

私自身、老齢年金を受給できる年齢になって、十分という金額ではありませんが、改めて公的年金のありがたみを感じています。

「年金は将来大丈夫なのか」という話もよく言われていますが、老後一番頼りになるのはなんと言っても公的年金です。

130万円の壁、106万円の壁に直面している方は、将来のお金のことも考えて働き方を検討していただきたいと思います。

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