【2025年度版】マクロ経済スライド調整の仕組み、令和7年度は-0.4%を適用

南アルプス北岳への道 年金額年度改定

マクロ経済スライド調整とは、現役の被保険者の減少平均余命の伸びに応じて年金額を抑えるしくみです。

令和7年度(2025年度)の調整率は-0.4%が適用され、その結果年金改定率は+1.9%になりました。

マクロ経済スライド調整の仕組みについてまとめました。

スポンサーリンク

令和7年度調整率-0.4%の算出

マクロ経済スライド調整率は以下の2つの数値を乗じて算出します

  • 公的年金被保険者数の変動率
    令和3~5年度の平均:-0.1%(0.999)
  • 平均余命の伸び率による調整
     一定値:-0.3%(0.997)
  • マクロ経済スライド調整率
    0.999×0.997=0.996 ⇒ -0.4%

この数字は、近似的に (-0.1%)+(-0.3%)=-0.4% として求めることができます。

年度ごとの調整率の推移

▼スライド調整率の推移

 年度 被保険者数平均余命 調整率
2016-0.4%-0.3%-0.7%
2017-0.2%-0.3%-0.5%
20180.0%-0.3%-0.3%
2019+0.1%-0.3%-0.2%
2020+0.2%-0.3%-0.1%
2021+0.2%-0.3%-0.1%
2022+0.1%-0.3%-0.2%
20230.0%-0.3%-0.3%
2024-0.1%-0.3%-0.4%
R07
2025
-0.1%-0.3%-0.4%

マクロ経済スライド調整の適用条件

マクロ経済スライド調整は必ず適用されるというわけではありません。

年金改定率は物価変動率や賃金変動率がベースとなりますが、ベースとなる改定率がマイナスの場合には適用されません。

調整が適用される条件

  • ベース改定率がマイナスまたはゼロの場合は適用されない
  • ベース改定率がプラスの場合も改定率がゼロを下回る適用はされない
  • 2018年度以降、適用されなかった調整率は次年度以降に繰り越す

令和7年度はベース改定率がプラスになったので、-0.4%がそのまま適用されます。

繰越分も含めて適用される場合もある

令和7年度については前年度までの繰越はありませんでしたが、繰越分がある場合はそれも含めて適用されます。

令和5年度については、令和3年度と令和4年度の繰越分も含めて適用されました。

  • 令和5(2022)年度適用調整率
    令和3年度繰越分:-0.1%
    令和4年度繰越分:-0.2%
    令和5年度分:-0.3%
    (-0.1%)+(-0.2%)+(-0.3%)=-0.6%

調整前のベースとなる改定率については以下の記事を参照してください。

【2025年度版】令和7年度年金額、マクロ経済スライド適用、新規裁定・既裁定とも+1.9%
令和7年1月24日、厚労省より令和7年度の老齢基礎年金と老齢厚生年金の年金額が発表されました。 65歳から支給される年金を新規裁定年金、68歳になる年度から支給される年金を既裁定年...

ベース改定率と調整適用の推移

▼調整率適用の推移

年度ベース
改定率
単年度
調整率
適用適用
調整率
適用後
改定率
2016 0.0%-0.7%しない0.0%
2017-0.1%-0.5%しない-0.1%
2018 0.0%-0.3%繰越0.0%
2019+0.6%-0.2%する-0.3%
-0.2%
+0.1%
2020+0.3%-0.1%する-0.1%+0.2%
2021-0.1%-0.1%繰越-0.1%
2022-0.4%-0.2%繰越-0.4%
2023新 +2.8%
既 +2.5%
-0.3%する-0.1%
-0.2%
-0.3%
新 +2.2%
既 +1.9%
2024+3.1%-0.4%する-0.4%+2.7%
R07
2025
+2.3%-0.4%する-0.4%+1.9%
新:新規裁定年金 既:既裁定年金

2017年度までは繰越制度がなく、2016年度と2017年度は「ベース改定率がマイナスまたはゼロ」ということで、実施が見送られました。

調整は2007年度から実施する計画でしたが、実際に実施できたのは2015年度だけという状況でした。

2018年度より繰越制度が始まり、2018・2021・2022年度の調整率は次年度以降に繰り越されました。

2019年度と2023年度は繰越分も含めた調整率が適用されました。

マクロ経済スライド調整の意義

保険料収入について、日本では「保険料固定方式」を取っています。

国民年金保険料は月額17,000円に固定され、物価変動率と賃金変動率により調整されています。

厚生年金保険料は標準報酬額の18.3%(本人負担9.15%)に固定されています。

年金額は賃金変動率か物価変動率のどちらかで改定されますが、賃金変動率が物価変動率を下回る場合は賃金変動率が適用されます。

したがって、公的年金被保険者数が一定で、平均余命が不変なら、保険料収入が賃金変動率に連動して上下しても、年金額も賃金変動率に変動して上下するので、収支のバランスは保たれることになります。

しかし、実際は、将来に渡って被保険者数は減少し保険料収入は減り、平均余命が伸びて年金支出は増えることになります。

そこで、被保険者数の変動率と平均余命の伸び率で年金額を自動的に減額調整しようというのが「マクロ経済スライド調整」です。この調整は年金財政の収支が安定するまで実施される予定です。

マクロ経済スライド調整の終了時期について

マクロ経済スライドは、1階部分の基礎年金財政と2階部分の厚生年金財政のそれぞれで年金財政の収支が均衡するまで実施されます。

現行制度で基礎年金と厚生年金のそれぞれで別個にマクロ調整スライドを行った場合、厚生年金については早期に終了するのに対し、基礎年金については終了が大きく遅れ、その結果、基礎年金の支給額が大きく下がってしまうことが試算されています。

経済前提「過去30年投影」では、基礎年金の調整は、厚生年金の調整が終了したあとさらに30年以上続くと試算されています。

▼現行制度 調整終了時期
2024年財政検証試算

経済前提厚生年金
調整終了
基礎年金
調整終了
成長型経済
移行・継続
2024年2037年13年
過去30年投影2026年2057年31年

調整終了を一致させる案

基礎年金の支給額低下を防ぐため、厚生年金と基礎年金の調整終了を一致させる案が検討されています。

この案については、以下の問題点が指摘されています。

  • 厚生年金の報酬比例額の調整終了が繰り下げられ、その期間の年金額が調整率分減額される
  • 厚生年金の資産の一部が国民年金1号被保険者の年金支給に回る
  • 基礎年金の半額は国庫負担であり、基礎年金の給付費が引き上げられる分の国庫負担が増える
<2024財政検証>基礎年金と厚生年金のマクロ経済スライドの調整期間を一致させる案について
厚生年金保険法及び国民年金法の規定により、少なくとも5年ごとに、国民年金及び厚生年金の財政の現況及び見通しを作成する「財政検証」が行われます。「2024年財政検証結果」が、2024...