テレビ朝日の番組「林修の今知りたいでしょ! 年金の疑問 徹底調査!」という番組を見ました。
番組内では、以下の5つの年金の疑問について解説していました。
- 何歳からもらうのが一番得?
- 最高で月いくらもらえる?
- 払った額を上回るのはいつ?
- 年金で足りない人はどうしている?
- 未納期間がある年金の額は?
- 将来年金はもらえる?
これらの項目について、私なりに検証していきたいと思います。
この記事では「2.最高で月いくらもらえる?」について検証してみます。
最高で月いくらもらえる?番組内では…
番組では年金が最高で月いくらもらえるかを解説しています。
TVer 「年金の疑問 徹底調査!」18分36秒~
厚生年金(会社員など)の平均が月約14.5万円に対して、最高額が月約30万円になると説明しています。
年金受給額のMAX30万円をもらう条件は、
- 厚生年金の加入期間中常に月給65万円以上
- 賞与年3回、1回につき150万円以上
- 中学校卒業後70歳まで上記を継続
としています。
絶対無理!という条件になっています。
なお、月給63.5万円以上の場合、それ以上いくらになっても、厚生年金保険料を計算する際の標準報酬月額は65万円で固定され、老齢厚生年金を算出する際も65万円として計算されます。
また、賞与が150万円以上の場合も、厚生年金保険料を計算する際の標準賞与額は150万円で固定され、老齢厚生年金を算出する際も150万円として計算されます。
厚生年金は未成年でも就労時から加入することになり、70歳に到達するまで加入できます。
上記の条件では15歳から69歳まで55年間(660ヵ月)加入することになります。
老齢基礎年金と老齢厚生年金の算出方法を示しながら、検証してみます。
老齢基礎年金の算出
厚生年金加入者の老齢年金は、1階部分の老齢基礎年金と2階部分の老齢厚生年金(報酬比例額)の合計金額になります。
老齢基礎年金の算出式は以下の通りです。
- 老齢基礎年金(年額)
=満額×国民年金加入月数/480月
令和5年度満額:795,000円
国民年金加入月数は、20歳以上60歳未満の40年間(480ヵ月)の中でカウントされます。
自営業の方などは国民年金保険料を納付した月数になりますが、会社員などの厚生年金加入者は加入期間の月数が自動的に国民年金加入月数にカウントされます。
上記の条件では55年間厚生年金に加入していますが、国民年金加入月数は40年間(480ヵ月)になります。
老齢基礎年金は満額795,000円(年額)が支給されることになります。
ちなみに、20歳未満、60歳以上に厚生年金に加入していた場合、老齢基礎年金相当額を厚生年金から給付する「経過的加算」という制度があります。
この経過的加算の対象は厚生年金の加入期間のうちの480ヵ月が限度となるため、20歳以上60歳未満の40年間厚生年金保険に加入している場合、経過的加算はありません。
老齢厚生年金の算出
老齢厚生年金は報酬に比例して支給される年金です。
上記の条件では、15歳以上70歳未満の55年間すなわち660ヵ月、厚生年金に加入することになります。
老齢厚生年金の計算式は、「本来水準」と「従前額保障」の2つの計算式があり、それぞれに賞与を含めない「平成14年度以前」と賞与を含める「平成15年度以降」の式があります。
ここでは、賞与を含めた「本来水準」の計算式で、報酬比例額を算出します。
- 老齢厚生年金(報酬比例額)
=平均標準報酬額×5.481/1000×加入月数
本来、報酬額は報酬年度ごとに再評価率をさだめて年金支給時点の報酬額に再評価します。
たとえば、平成15年度の報酬額は再評価率0.994を乗じて、令和5年度の年金額が計算されています。
ただし、ここでは再評価せず算出することにします。
- 平均標準報酬額
=(65万×12+150万×3)÷12
=1230万÷12
=1,025,000円 - 老齢厚生年金(年額)
=1,025,000×5.481/1000×660
=3,707,896円
老齢年金の合計額は…
まとめると、老齢年金の合計額は以下の通りになります。
- 老齢基礎年金(年額)
795,000円 - 老齢厚生年金(年額)
3,707,896円 - 老齢年金合計(年額)
4,502,896円 - 老齢年金合計(月額)
375,241円
年金額が番組が示している30万円にはなりません。
番組提示の年金額と合いません…
番組では上記の条件で年金月額が30万円になるといってますが、私の計算では約37万円になります。
老齢厚生年金だけで月額約31万円になるので、もしかしたら老齢基礎年金を足し忘れているのではないかと思われます。
そもそも、中学卒業から55年間年収1000万円以上というありえない設定なので、正直このような年金額MAXの計算をすることに意味がないように思います。
実現可能な報酬額とそれに対する年金額を提示するべきではないかと思います。
老齢厚生年金の支給停止もあるはず
上記の条件で65歳以降に月額65万円・賞与150万円をもらって働き続ける場合、65歳から支給開始となる老齢厚生年金は全額支給停止になります。
なお、老齢基礎年金は支給されます。
厚生年金の加入期間を40年にすると…
厚生年金の加入期間を20歳以上60歳未満の40年(480ヵ月)にすると、年金額は月額約29万円になります。
- 老齢厚生年金(年額)
=1,025,000×5.481/1000×480
=2,696,652 - 老齢年金合計(年額)
=795,000+2,696,652
=3,491,652 - 老齢年金合計(月額)
290,971円
この場合も、年収1000万円以上を40年間続けることになりますが…。
厚労省が提示するモデル年金は…
厚労省は、「夫が平均的な報酬額で40年間就労し、妻がその間専業主婦」という想定で、夫婦二人分の老齢年金額いわゆるモデル年金を公表しています。
- モデル年金(令和5年度・月額)
224,482円
この内、夫の年金額は158,232円です。
参考までに、この夫の年金額を算出する過程を示しておきます。
- 老齢基礎年金(令和5年度満額)
795,000円
- 平均報酬月額(賞与を含む月額換算)
438,860円 - 就労期間40年(480ヵ月)
- 再評価率 0.956
モデル年金の計算には再評価率が使われている - 老齢厚生年金(年額)
=438,860×0.956×5.481/1000×480
=1,103,786円
- 老齢年金合計(年額)
=795,000+1,103,786
=1,898,786円 - 老齢年金合計(月額)
158,232円
厚労省は、以上のような方法で年金額を算出しています。
番組の条件で年金額を算出する際は再評価率を用いていませんが、その他は全く同じ算出方法です。
番組の条件で年金月額約30万円というのはやはりおかしいのではないかと思います。
それにしても、賞与を含めた平均月収44万円で40年働いた年金額が16万円ということなので、年金だけで生活するのは厳しいと言わざるを得ません。
年金月額MAX30万円はその通り
老齢厚生年金の年金額に反映される報酬は、月収65万円まで、賞与150万円・年3回までという限度が定められています。
そのMAXの年収1230万円で40年就労して年金額が月額29万円ということなので、年金月額30万円はまず無理ということになります。
参考サイト
▼年金の疑問 徹底調査SP!(期間限定)